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シェナの実力

いつに間にか、ギルドの前ではシェナとジョニーの勝負に人集りが増えつつある。


だが、頭に血が上っているのか、ジョニーは人集りには目もくれず、シェナに殴る蹴るの猛攻撃を仕掛ける。


「オラァ!避けるだけか?半端エルフ!!」


煽るジョニーだが、シェナは無言で避ける。

シェナの方からは一切手を出していない。ただ避けるだけだった。

屈強なジョニーの猛攻撃。

だが、小柄なシェナは跳んだり、しゃがんだり、飛び越えたり、回ったり、とちょこまかと逃げ、ジョニーの攻撃は掠りもしない。

シェナが攻撃を躱す度に集まったギャラリーから歓声が上がった。


「逃げてばっかりじゃねぇか!!何とか言ってたどうだ!!」


ちょこまかと逃げるシェナに苛立ち、吠えるジョニー。


「どう見るよ?」

「んー、やっぱり、ジョニーの方が分があるな」


ディーノの近くで勝負を見ていた男達何気無しにつぶやいた。

この男達はジョニーに銀貨2枚かけた男達だ。

ディーノは会話に参加せず黙って男達の話を聞いた。


「やっぱり、て?」

「ん?いや、だって、バスとジョニーと言えば、どっかの国で傭兵やってたんだろ?2カ月程前にギルドに入ったが、既にBランクまでのし上がった2人だぞ。腕っ節にはかなりの自信があるみたいだせ?」

「確かにあの体格差じゃな。それにシェナは前のパーティーでは殆ど雑用係だったらしいから」

「逃げてばっかりで反撃しない。大方、ジョニーの体力を削っているんだろうが、長丁場になれば、体力的にもジョニーの方が有利だな」


男達が勝負を見ながらジョニーの勝利を確信していた。

そんな男達を盗み見ていたディーノ。


「ん?」


ふと、ギルドの窓から誰かが勝負を見ていた。

姿は此処からでは影しか見えないが、視線はシェナとジョニーの勝負に釘付けだ。


「ふふ、」


そんな謎の視線にディーノは静かに微笑む。



勝負が始まって十分。

ちょこまか逃げるシェナに苛立たつジョニー。

だが突然、正面に居たはずのシェナが飛び跳ね、


ドスッ!!


ジョニーの頭に両足で踏み付けそのまま踏み台にして飛び越えるシェナ。


「ンガ?!」


シェナの初の反撃、頭部への打撃でジョニーの屈強な体がぐらりと傾くが、なんとか止まる。

シェナはクルっと一回転して、ジョニーの背後に着地。

一歩離れそのまま、ジョニーの後ろに立ち、屈強なジョニーを見上げる。


「姿勢が悪い」


瞬時に後ろに振り向くと勝負が始まって一言も喋らなかったシェナがジョニーの目を見て唐突な言葉を口にする。


「はぁ?」


突拍子の無いシェナの言葉にジョニーも一瞬呆ける。


「姿勢が悪いから、標的の狙いの軸がブレる。

それに攻撃が大振りだから、外した時の隙が大きすぎる。

アンタが私に蹴りを入れようとしたら、少なくとも私は4回はアンタの顔面に蹴り入れられるわよ。

あと、やたら無闇に土煙や砂埃を起こすの、技をわざと大袈裟に見せているように見えるからやめた方がいいと思う」


一気に淡々と指摘してくるシェナに一瞬呆けるジョニーだが、間を置いてギャラリーの中から微かに笑い声が漏れる。

ジョニーの耳にも届き顔を羞恥と怒りで赤くする。


「ふざけんな!!」


怒りと羞恥で震えた拳が力任せにシェナを殴りにかかる。

だが、シェナはその場から逃げようとしない。

ギャラリーから悲鳴が上がる。

誰もが、ジョニーに殴り倒されるシェナを想像した。

だが、ジョニーの拳が打つかる手前でシェナが素早く構え、右手でジョニーの拳を受け止めた。


「なっ!?!?」


受け止めた事に驚くジョニー。

シェナは受け止めた拳の力をそのまま受け止めるのでは無く、流れる様な動きで後ろに一歩下がり、身体を右斜め後ろに逸らす。

向かって来る力に逆らわず拳を受け流す。


「のあ!?」


突き出した力を止めることがが出来ず、ジョニーの身体が前のめりに傾く。


「だから、姿勢が悪くて、隙が大きいって」


シェナの細長い瞳孔の青い瞳の睨みがジョニーの目を射抜く。

そのまま受け流したジョニーの腕を素早く抱えこむ様に捕らえ、


「言ってんのよ!!このハゲ!!」


力の流れと勢いを利用してジョニーを投げ飛ばした。


「は?」


いきなり視界が逆さまになったジョニー。

次の瞬間、


「ッがは!!」


背中と後頭部に強い衝撃と痛みに息が止まった。

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