不快指数再び
受付嬢マリリを見て、日を改めようかなと、思ってしまったが、 収入が無いとこっちも困る。
「フリーの採取申請しに来たんだけど」
「ええ?謹慎してる人がぁ、そんな事出来るんですかぁ?」
「ロベルトさんから聞いてないの?」
「ええ、どうだったかなぁ?」
「仕事しろよ」
「してますぅ」
「・・・・・・」
話しにならん。
「他の人と変わって。貴女じゃ話にならない」
「・・・・また、誰かに泣き寝入りするんですかぁ?」
「・・・・チェンジして」
「はぁ?誤魔化すんですかぁ?」
「チェンジで」
「ちょっと、聞いて「チェンジで」
「遮ら「チェンジで」
「だ「チェンジで」
「、「チェンジで」
「チェンジで」
間髪入れずチェンジを要求する。
この受付嬢に口を挟まれたら、面倒くさい。
そう思って、マリリが口を挟まれる前にチェンジを要求するシェナ。
そうこうしていたら、
「マリリ」
別の仕事をしていた他の受付嬢の人が出て来てくれた。
薄緑色のおかっぱの髪に瞳。少しぽっちゃりとした体。
確か名前は、モナリナさん。
2年前くらいギルドで受付嬢になった人だ。
「マリリ、この人は私が対応するから、裏に行ってて」
「ッ、えぇぇ?人の仕事取らないでくださいよぉ。先輩ぃ」
「いいから、行きない!」
「なんで、私がですかぁ。ちゃんと話をしない、この人がぁ、悪いんですよぉ」
明らかに不貞腐れるマリリ。
先輩と言っているが、どう見ても、見下している。
エマさんの時よりも食い下がるな。
「貴女の態度は明らかに職務怠慢よ。任せられないわ」
「なんですかぁ、それぇ。マリリが悪いみたいに!!
マリリ何も悪くないのに!!」
顔を真っ赤にして、モナリナに摑みかかりそうな勢いのマリリ。
「いいから、早く代わってくれる?」
若干キレ気味のシェナに一瞬、マリリの動きが止まる。
もの凄く睨んできている。
「大体、アナタが!!「チェンジ」
「ッ!?」
呆れているのもあるけど埒があかない。
「こっちだって、ちゃんと人の話を聞いてくれる人を希望するわよ」
シェナが呆れ顔で言い放つと、マリリは、
「何よ!!もう知らない!!」
化粧が剥げ落ちそうな勢いで怒鳴り、マリリは裏に引っ込んて行った。
「ごめんなさい。あの子には本当に手を焼いていて」
「お疲れ様です」
「ありがとう」
なんか、最近やったようなやりとりを終え、ようやく、申請手続きを始める。
手続きは滞りなくスムーズに進み、ギルド証明証を提示。許可証を発行。
ちなみに、パーティーに所属していれば、採取の許可証は自動的に発行されていた。
フリーでは、自己発行しに行かなければならない。
採取許可証を持たずに森に入って、薬草やアイテムを取ると、密猟者と見做される。
「はい、これでシェナさんの採取許可証の発行が完了しました」
「ありがとうございます」
これで、森に入れる。
「さっきは、ごめんなさい」
モナリナさんが申し訳なさそうに謝る。
「え、あ、さっきの人ですか?」
「ええ。あの子、何かにつけてはこの受付台につきたがって。若い新入りや顔の良い男性ギルドメンバーに声をかけまくって、エマさんも手を焼いているです」
「男漁り目的で受付嬢になったんですか、あの人」
「・・・・・否定出来ないわね」
苦い顔をするモナリナさん。
「でも、シェナさん、変に目を付けられてるみたいにだけど、大丈夫?」
「あー、まあ、確かに初対面から不快指数半端無かったですけど、気にしたら負けだなって」
「強いですね。シェナさん」
「そんなでは無いですよ。ただ」
「ただ?」
「あの人の事が生理的に嫌いなだけです」
「・・・そこまで、はっきり言うといっそ清々しいですね」
真顔のシェナにモナリナは苦笑で空笑いした。
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