第9話 プレイヤーキラー
少しお久しぶりです。受験だったり定期テストだったりで忙しかったんです。本当ですよ?
決してOW2が楽しかったから投稿が空いたわけではないです。多分
PK……プレイヤーキラーと呼ばれる彼らは現実で言うところの殺人鬼だ。
しかしここはゲームであり実際に殺したからと言って現実の世界で咎められることはない。多少の恨みは買うかもしれないが……
少なくとも、運営側が想定したプレイスタイルの1つであり、リスクと、そのリスクに見合うリターンを得ることができる。
PKにも大きくわけて3つのスタイルがある。
アイテムを目的とする者と戦闘を目的とする者、そして、悪役であることを目的とする者だ。
PKによって倒されたプレイヤーはそのとき持っていたアイテムを全て失い、所有権がPKに強制的に移動する。
つまり、持っていた武器防具やアイテムといった物を奪い取ることができる。
そういった所謂略奪行為を目的とする者は自分が確実に勝てるであろう相手を選ぶ。
PKのリスクを背負った者はプレイヤーによって討伐されたとき、持っていたアイテムだけでなくそれまでの罪の重さを表す隠しステータスを参照し、その量に応じて経験値の減少、所持アイテムだけでなく倉庫などに預けていたアイテムの差し押さえ、罰金などが課される。
なお、所持していたアイテムはその時倒したプレイヤーのものとなる。
名が知られるようなPKにもなると、罰金の一部も報酬として受け取ることができたりするため、そういったPKを狩るPKKも多い。
ウィルとシュウはそういったPKを積極的に狩るPKKコンビである。
対して、Yuiとジャックの二人はアイテムには興味のない所謂戦闘目的のPKである。
そして、二人に何度も挑戦してくる戦闘狂だ…
ちなみに、PK側がアイテムの所有権を破棄した場合一時的に持ち主に所有権が戻るが、倒された場所に散らばる。
10分以内に回収できなかった場合所有権が放棄され誰でも拾えるアイテムとなる。
しかし、10分以内に倒された場所へ戻ってきたとしてもアイテムが移動していたり不慮の事故で耐久が0に陥るなどでロストすることはある。
「【刀技:妖怪の悪戯】【刀技:鏡面月光】」
「【イグニスチャージ】【大剣技:カルテットストライク】」
「【拳技:炎獄無双】【竜人化】」
「【シャドウステップ】【シャドウスローター】」
四人が同時にスキルを起動する。
瞬間、互いの背後からそれぞれ、刀、鎌が飛来しそれを回避、中間点で衝突し弾けた。
そのエフェクトをかき消すように四つの斬撃が二人に飛来する。
「【バーサーカービート】【エンドレススローター】【イグニスチャージ】【デッドロック】【シールドクラッシュ】」
ウィルは飛来する斬撃を篭手で粉砕しながらスキルの連続起動。
「相変わらずの馬鹿強化だッ!」
ジャックはその光景を見て呆れるが、それもそのはずである。
多少装備の質が落とされたからと言って現状レベルカンストの終盤スキルを通常攻撃で破壊できるはずがないのだから。
スキルの枠の殆どをバフとデバフに偏らせているウィルだからこそである。
「よそ見してると死んじゃうよー!」
シュウが影から飛び出しジャックへ向けて鎌を振るう。
しかし、寸前でYuiが間に入りその鎌を受け切る。
先程までそこにはたしかにいなかったはずだが、突然現れた。
妖怪の悪戯による効果で姿を消したのだ。
「あなたの相手は私!」
「上等!」
そう言いながら二人は共に消えた。
方や虚空に、方や闇にである。忍者みたいだな。
それを横目に見ながらジャックへ向けて拳を打ち込む。
少し振っただけで凄まじい旋風と共に振り抜かれる拳は当たれば死を意味することをこれでもかと主張していた。
「【破壊衝動】【刈り取る魂】」
そして最後にさらにバフを重ねながら振り抜く。
しかしそこにジャックの姿は無く、横へと避けた後だ。
しかしウィルの強みはこの当たれば必殺の拳を連打できることだ。
通常攻撃を限界まで強化したことで強化さえしきってしまえばあとはなんでもいいから攻撃を当てれば相手は死ぬのだ。
なお、どさくさ紛れに放ったデバフもついでに避けられた。
「【破壊衝動】【闘気強化】」
ジャックもバフを起動し突き放したステータスを少しだけ埋める。
「【大剣技:流星剣撃】」
ジャックが剣を地面へと突き立てながらスキルを起動する。
すると地面は脈動し揺れた。
そして、地面だったものがめくれ上がり跳ね上げられる。
「うぉ!?」
「はっはー! 最近見つけた新技だぜ!」
羽を駆使して上手く着地することで落下によるダメージはない、無いが…
「まだこのスキルは終わってないぞ」
その宣言と共に宙に浮いたままだった地面が俺に向かって落ちてきた。
「うっそだろ!?」
ちょっとホーミングしてくるし運動エネルギーとかどうなってんだ!
時に飛び退り、時に拳を打ち込むことでダメージを軽減するが、そちらに対処していれば当然これを放った張本人はフリーになるわけで。
「【大剣技:カルテットストライク】!」
四連撃の斬撃がウィルを襲う。
タイミングも絶妙で放ち方もまた避けにくいよう工夫されている。
少し攻撃を受けるくらいの体力はあるが、攻撃を受けたときの硬直からコンボが飛んできたら軽戦士の俺では死んでしまう。
「【アナイアレーション】」
俺がスキルを起動すると俺を中心に凄まじい衝撃波が放たれる。
それだけで俺へと殺到していた瓦礫は逆方向へと吹き飛び、飛来する斬撃は消滅し、ジャックもその衝撃波に吹き飛ばされる。
「自爆技をここで切るか!」
「まだまだ行くぞ!」
スキル【アナイアレーション】、自らの命を犠牲に周囲のスキル、プレイヤー、エネミーに大ダメージを与える自爆技だ。
しかしまだウィルは立っていた。
それは何故か?
それはスキル【食いしばり】による一度だけ死を無効化する効果によるものだ。
クールタイムという概念自体が存在せず、一度発動すると死ぬまで2度目が発動しないというもの。
そして、それに伴い体力が1になったことで【背水の陣】が起動する。
体力が減ることで減っている体力に応じてSTRやAGI、VITにバフを付与するパッシブスキルだ。
今足りないのは速度だ。つまりはAGIが足りてない。
STRなら過剰なくらいあるがAGIを上げるなら別のバフを起動しなければならなかった。
「まだまだ行くぞッ!」
体力1がなんだとウィルはジャックに突っ込む。
超至近距離まで一気に近づき拳を突き出す。
この距離なら拳の方が有利だろ!!
「――シッ!」
「――ハッ!」
ジャックは瞬時に大剣を手放し腰に装備していた短刀を持ってウィルの拳を捌いていく。
拳を次々と時に繰り出し、時に足も交えながら息をする間もないラッシュをかける。
互いに一撃でも入った時点で勝敗が決する状態だ。
そんな極限状態の中で生み出された異常な集中力により二人は時間がゆっくり流れるような錯覚を覚えている。
そして、繰り出される拳と拳のほんのコンマ単位の隙間にジャックはスキルを起動する。
「【アナイアレーション】!!」
「おらぁ!!!!」
しかし瞬時に反応してみせたウィルはジャックへと向かうはずだった拳を地面に叩きつけ、周囲の地面を跳ね上げることで遮蔽とし、遮蔽を蹴り、羽を駆使して致死圏の衝撃波を回避しきってみせた。
「これを避けるかよ…」
「ここで差し込むのか…」
互いに相手の行動に驚きながら次を考える。
「【サイコキネシス】」
ジャックは不可視の手を起動し捨てた大剣を回収する。
これで仕切り直しだ。
互いに体力は1、一発も受けられない状態で二人は嗤った。