第7話 縛りではないが限りなくそれに近いプレイ
「つまり、カースドアーマーから契約できる召喚獣には、ガーディアンアーマーとウォリアーアーマーがいるんですね」
「そういうこと」
そういうわけであとウォリアーアーマーも仲間にしておきたいところなのだが。
「ま、もともとの目的優先でいいか」
「ボスの討伐でしたよね」
ここ、堅牢要塞アブソリュートのボスは確かエディとかいう巨大ゴーレムだったな。
巨大鈍足ハイパワーを具現化したみたいに固くて高火力持ちのボスだったはずだ。
道中でもシルヴィアにこのゲームのことを話したりしつつ時々現れるモンスター相手に戦闘させたりして要塞を進んでいく。
そして、程なくして最奥に辿り着いた。
「この先にボスがいる」
「またシアンに突撃させますか…?」
「うーん…シアンにもちょっと荷が重そうだから1人で速攻かけてこようかな」
「へ?」
なお、このボスは近距離攻撃しか所持していない関係上、近距離職だと注意しなければ危険なボスだが、遠距離職だと時間はかかるが簡単に撃破できる。
しかし時間をかけるのは少々面倒なので速攻を仕掛けちゃおうと思います。
シルヴィアに少し離れるように言ったあと、いくつものスキルを発動する。
「【拳技:炎獄無双】【バーサーカービート】【ブラッドサクリファイス】【エンドレススローター】【イグニスチャージ】【ソウルプレデター】【デッドロック】【シールドクラッシュ】【竜人化】【破壊衝動】【背水の陣】【刈り取る魂】」
手に炎が宿り、禍々しいオーラを放ち、急に瀕死になったかと思えば体も燃えだし……もう若干引くレベルでバフを盛りに盛り、さらに相手にデバフもかけたウィルはゆっくりと腰を落とし、右手を引いた。
「【ノーワンザサバイブ】」
そう呟き、ただ渾身の力を込めて殴った。
それだけでエリアボスのエディと言う名のゴーレムはただのガラクタへと姿を変えたのだった。
「すごい…」
シルヴィアは知らなかったためにそれくらいの感想で止まったが、本来このボスは高耐久、高火力を兼ね備えた近接アタッカーだ。
それを一撃というのは殆どのボスすら一撃で倒せるということを表していた。
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「これでクエストは終わりだね」
街に戻り、報告を済ませる。
それによりクエストクリアの表示と共に報酬を受け取る。
「多分、『瞑想』ってスキルが貰えたと思う。
それを使うと魔力を通常より早く回復できるから、使えるようにしたほうがいいよ。
序盤ではかなり使うから」
なお、これ使うときは目を閉じなきゃいけないらしく、パーティープレイ前提スキルだと聞いたことがある。
「あ、そろそろご飯の時間ですね」
「あぁ、もうそんな時間か。どうする? 落ちる?」
気がつけば19時を回っていた。
なんとなくお腹が空いてくる時間だ。
「そうですね、そうします」
「それじゃあ、ギルドホームに戻ってログアウトしようか」
そうして、二人はギルドホームに戻った。
「それじゃあ、お疲れ」
「はい、お疲れさまです」
そう軽く挨拶を交わしてログアウトしていくシルヴィアを見送る。
「さて、どうしようかな」
そう考えながら、取り敢えず別のゲームするかと考え、後を追うようにウィルもログアウトを済ませたのだった。
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次の日。
月曜日特有の気怠げさを抱えながら今日も学校だ。
小学校から換算して10年目の生活だが、面倒なものは面倒だ。
それでもまぁ、放課後にゲームできると思えば少しは楽になる。
そして放課後、部室の扉を開くと先に来ていた沢北先輩と一川先輩と顔を合わせる。
なお修哉は日直のため一緒には来ていない。
「こんにちは」
「やっほー☆」
軽く挨拶を交わしつつ雑談に移行する。
「今日は何やるんですか?」
「どうだろうね? 飯坂先輩が企画持ってくる可能性もあるけど、ひとまずはファングラじゃないかな?
澪ちゃんはどう思う?」
「今沢北に殆ど言われたんだけど」
「あ、そういえば桜沢さんがヘッドギアとゲーム買ってましたよ。
日曜にインしたら丁度いて」
「そうなんだ!? なら休みにも一緒にできるね」
すると、そのタイミングで丁度桜沢さんが部室にやってくる。
「こんにちは!」
三者三様に返事しつつ、雑談を続行する。
そうして数分後には部員が揃った。
「ってあれ? 顧問がいませんが…」
「高木先生なら今日は出張があるらしいよ」
部室を見回して先生がいないことを指摘すると、飯坂先輩が答えてくれる。
「それじゃあ、今日は何をやろうか?」
「ファングラじゃないんですか?」
「それでもいいけど、今日やろうと思ってたことは休みのうちに星宮君がやってくれたみたいだからねぇ…」
そうして軽くこの部室にあるソフトを見て回る。
「7人でもできるゲームってことを考慮すると……これかな?」
「サバイバル系ですか」
『マイライフクラフターズ』、ちょくちょくのアップデートで根強い人気を継続してる超有名なやつだ。
「あ、これなら私も知ってますよ!」
結構昔からあるゲームだからかシルヴィアの知識の中にもこれはあったらしい。
「じゃあ、これやろうか!」
ということで今日やるゲームが決定され、各々ヘッドギアを付けゲームを起動する。
アカウントでログインして飯坂先輩がワールドを開いてくれるらしいのでそれに入る。
そして、そのすぐ後に来たボイスチャットの招待を受ける。
ゲーム内でも会話することはできるが、距離が離れると聞こえないためこうして別でボイスチャットを使用するのがこのゲームの主流だ。
四角いブロックでできた世界にスポーンして周囲を確認する。
えーっと、場所は森林か。
近くには川が流れていて川の向こうには戦車が常駐してる拠点が……
「あれ? 戦車?」
補足しておくと、このゲームに戦車などという現代兵器は本来存在しない。
そうしてる間にも他の部員たちもスポーンが完了し、違和感に気づく。
「あ! 忘れてたー!!!」
「飯坂君…MOD抜き忘れてるね?」
MOD。
要するに改造データのことを指す言葉なのだが、これが入っていると無しのときとはまた別の雰囲気を楽しむことができるようになるというものだ。
つまり、戦車がある拠点があるのはそういうMODの影響ということである。
「ど、どうする? このままやる?」
「私は大丈夫ですよー」
「同じく」
「俺も」
新入生組が全員継続の意思を表示したため今回はこのまま行くことになった。
MODリストを確認すると知ってる中でもちょっとヤバげなのが多いので装備をさっさと整えたいところ。
というかこのまま夜になるとまずいな。
「インファーナルにミュータント、ゲリラって…強い敵を追加する系が目白押しじゃん」
「急いで拠点作るよー!
地下に!」
ちなみにMOD構成ヤバげなのが多いと思ったら最後にやったのが鬼畜プレイだったらしい。
木を素手で殴り倒すというよく考えたらなかなかぶっ飛んだ行為をしながら木を集め、作業台を作成。
その後にツルハシを作って地面を殴り掘って石を回収する。
ドーンッ!!!
「キャーーー!!!」
「桜沢が死んだ!」
このひとでなし! じゃなくて、どうやら透明化した爆弾魔に吹き飛ばされたらしい。
本来透明化などしないのだが、インファーナルと呼ばれるMODのせいで特殊能力を得た個体が出現するためそのせいだろう。
「てかどっから湧いた!?」
「洞窟だ! こっちに洞窟が……ってヤバいいっぱい来てる!?」
「なんか湧く数多くないですかー!?」
「コンフィグいじってるから普通の50倍くらい湧くよー!」
嘘でしょ…?
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なんとか逃走しきった……
ひとまず全員で拠点作りから始めることにする。
あ、ゲリラさんいい武器持ってるね?
それちょっとくれないかな☆
話し合いの結果快く武器を渡してくれたので銃を獲得した。
なお、傍から見ればアサルトライフル持ちに石の剣で斬りかかり、銃弾を回避しながら斬り殺したという構図である。
ちなみに瀕死。
「え、もう銃確保してきたの?」
「まあ弾丸が無いんで鈍器運用になりますけどね」
木を斧で切り倒していた瀬谷先輩に原木をもらいさっきの石でかまどを作って木炭に加工する。
できた木炭で松明を制作したら採石中の一川先輩と飯坂先輩にいくつか渡しておく。
「あ、鉄あったからこれ焼いといてー」
鉄を受け取って精錬しておく。
ついでに作業台なんかをさっきの拠点兼採石場に移動させてチェストを作っておくか。
「さて、銃も入れたしちょっくら探索行ってこようかな」
道行く動物達を袈裟斬りにしつつ進む。
「あ、星宮君も食料集め?」
「いや、あっちにあった洞窟に凸ろうかなって」
「お、それなら私も行こうかな!」
そう言いながら斧を担ぐ沢北先輩と共にさっきひどい目にあった洞窟へと突撃する。
主な目的は大量の鉄とレア鉱石!
いざ、かまくら!
ファングラでのウィル君は自己完結型バフアタッカー構築です。
様々なバフを盛ることで序盤のちょっと硬いくらいのエリアボスなら一撃死させることができる拳を放ちます。
あと、ファングラとは関係ないんですけど、略称はマイクラです。