第6話 初心者育成講座。生徒シルヴィア
連日投稿なんて久々にやったな…
Sideウィル
「行くよ! シアン!」
「ウォン!」
ホーンラビットに牙を食い込ませてポリゴンに変えたシアンが捕れた獲物を見せびらかすように持ってくる。
なお獲物はポリゴンになって消え始めているので口元にモザイクがかかっているようにしか見えなかった。
「なんだかシアンにばかり戦わせてると申し訳ないような気がしてきました…」
何度かシアンに戦わせていると、シルヴィアがそんなことを言ってきた。
「そう…? 召喚士ってそういうものだからと思うしかないと思うけど……そう言うなら自分でも戦ってみる?」
「やりたいです! けど、武器がないですね…素手で戦うしかないかな…」
「いや、使ってない武器が確かこの辺に……あったあった。
これあげるよ」
そう言ってインベントリから拳銃の1つを取り出す。
とある狩りの時にいくつも出てきた武器の1つなので同じものがいくつか入っている。
「そんな! 悪いですよ!」
「大丈夫大丈夫、同じのがいくつもあるから余ってるの。
むしろ貰ってくれ」
「そうなんですか…?」
ということで拳銃を押し付けるように手渡す。
なお、メインは籠手なのだが、状況に合わせて色んな武器を使うのが好みだ。
「GMLG3000、汎用型魔力式レーザー銃の1つで、消費魔力の割に威力が高いことが特徴の拳銃だよ。
あとカスタムの種類が多く使い手に馴染むことでその進化を発揮するタイプの銃だ」
「えっと…?」
「要するに使い手に合わせて進化する武器ってこと」
「なにそれすごい!」
後で魔力回復系のスキルを取りに行かないとな…近いのどこだったかなぁ…
「取り敢えず狙い方とか教えるね」
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そうして数分後、シルヴィアも銃の扱いに慣れ始め、シアン無しでも多少戦えるようになってきた頃。
なお今回、魔力式レーザー銃を選んだのは召喚士は魔力を使うとはいえ一度召喚すると再度何かを召喚するまでMPを使うことが殆どなく、丁度いいと思ったのだ。
実弾銃だと弾にインベントリが圧迫され、それを解消しようと思うとSTRもあげなきゃいけなくなる、槍や剣なども同様の理由で除外した。
レーザー銃なら弾丸は魔力で賄え、威力は据え置き、そしてこの銃なら進化して強くなる。
レーザー銃にも種類はあるし、慣れてきたら他の銃を試してみてもいいと思うしね。
「それじゃあ、クエスト受けに行こうか、一回街に戻って」
「クエスト…?」
「うーん…これは説明が難しいから実際にやってみたほうがいいかな」
そうして、ベルタに戻り、冒険者組合へとやってきた。
「ここが冒険者組合、先に冒険者登録しないといけないの忘れてた…」
「えっと…?」
「いくつかある身分の1つ何だけど、僕らプレイヤーは殆どこの身分になるね」
「なぜなんですか?」
「冒険とかそういうのを求めてゲームを始める人が多いだろうし、他の身分と兼業できるのも魅力だからじゃないかな。
取り敢えず入っとけーな感じだし、入って特に損はないしねー」
「殆どってことは入らない人もいるんですよね?」
「まあ、そういう人はこの世界の人になりきるロールプレイヤーとか生産職とかかな。
まあ、戦う生産職も普通にいるけど」
「なるほど…」
「取り敢えずシルヴィアの場合は身分冒険者の職業召喚士って感じになる。
取り敢えずそれで受け付けしてきて」
「は、はい!」
〜数分後〜
そうして、シルヴィアは晴れて脱無職に成功したのだった。
「ところで、ウィルさんの職業ってなんなんですか?」
「俺は身分は冒険者兼傭兵で、職業は『狂戦士』だね…」
「きょ、狂戦士…?」
「最初は拳闘士だったんだけど、気がついたら変わってたんだよね…PK狩りをしてるプレイヤーやPKに多い職業だし、プレイヤーをたくさん殺すと開放されるんだと思う」
たまにPKと間違われるのが少し厄介だが、PK表示になってないので間違いで殺されたことはない。
「ぴーけー?」
「プレイヤーキラー、プレイヤーを倒すことでその人の持ち物を奪うことで稼ぐ人たちのこと」
「え、人殺し!?」
「ま、この世界プレイヤーとしての存在がNPCに認知されてるみたいだから殺人容疑はかけられないけど、高感度とかが露骨に下がるね。
1つのプレイスタイルとして確立してるしルール違反でもないから出会ったら交渉するか返り討ちにするしかないね」
プレイヤーキラーの中には対人が好きで強者相手に喧嘩ふっかけて勝っても持ち物を奪っていかない人とかもいるけど、大体は略奪プレイが目的だよね。
「悪いこと…じゃないんですか…?」
「さっきも言ったけど、ルール違反とかじゃないし多少のリスクを覚悟すれば誰にでもできる行為だよ。
その分プレイヤーキラーが倒されるとその人の持ってた装備なんかを全部貰えるからPK狩りって金策法もあるし」
ちなみに、俺とシュウは有名なPKKコンビである。
「そうなんですね…」
そうしてクエスト一覧をシルヴィアに確認してもらう。
「その中に、『魔法職入門』ってクエストがあると思うんだけど」
「確かにあります」
「それを受注してみて」
そうしてクエストを受けさせる。
「これでクエストを受けられたはず」
そして俺の見立てが正しければ…
「あれ? 何もしてないのにクエスト完了にできますね?」
「よかった、必要な物は足りてたみたいだね」
実はさっき戦闘訓練で狩っていたホーンラビットの角がこのクエストで納品する物品なのだ。
「完了しちゃって報酬を受け取ろうか」
「はい!」
これでいくつかの経験値、お金、そして魔力回復系のポーションなんかを貰えただろう。
「今貰ったポーション、腰のホルスターに入れておいたほうがいいよ。
飲むと魔力が回復できる」
「わかりました!」
そうして次のクエストにあたる『魔法職入門2』を受注させ、素材を確認する。
「えっと…次は『アカイロタケ』と『アオイロタケ』ですね。
持ってないので取りにいかなくちゃですね」
えっと……あったあった。
「はいこれ……ってシルヴィアさーん? どこ行くのー?」
「え?」
外に向けて歩き始めていたシルヴィアに声をかけて戻ってこさせる。
俺の手にはクエストで使うニ色のキノコがあった。
「え、なんで持ってるんですか!?
というか受け取れないですって!」
「いや、クエストの内容知ってたからさっき集めといた。
多分足りるでしょ?」
同じく戦闘訓練中にしれっと収集しておきました。
こうして2も完了したので3段階目の『魔法職入門3』を受注させる。
「流石にこれはすぐには終わらないですよね…?」
「3はエリアボスの狩猟が条件だから倒しに行こうか」
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そうしてやってきました『堅牢要塞アブソリュート』。
場所的にはベルタから少し進んだ側にあるエリアで、ここを通り抜けるとまた次の街に行くことができる。
過去の栄光の残骸であるこの要塞は、かつてはその機能を十分に発揮し敵を退けたのだろうが、今では壁は崩壊し、至るところが崩れた状態でいくつかのアンデットとゴーレムが出現するステージとなっている。
「ここの建物ってファンタジーはファンタジーでもSFの方だよねー」
とはシュウの言葉だ。
「なんだか、雰囲気が違いますね…?」
「ま、時代背景が中世くらいかと思ってたら、いきなり科学文明の残影を見ることになるからねぇ」
そう言いながら右ストレートでゴーレムを粉砕しつつ要塞を進んでいく。
なおこの要塞、外ではアンデット、中ではゴーレムがよく湧くという構造になっているのは恐らく時代背景やらの設定が関係しているのだが詳しくは忘れてしまった。
「まあ深く考えなくてもゴーレムがやってくる方向に走ればオッケー!」
「ま、待って……」
なおシルヴィアが付いてこれなさそうなので少しペースは落とした。
「そういえば、こういう敵も仲間にできるんですか?」
「いや、ゴーレムは特殊で仲間にはできなかったはず。
ただ、ここにはアンデットとゴーレム以外にも……ほら、丁度いた」
目線の先には動く鎧がいた。
「あれはなんですか…?」
「カースドアーマー。
恐らく過去に使われた鎧に呪詛が溜まって悪霊化した敵だよ」
そして、召喚士のメインウェポンになり得るエネミーだ。
「シアンと俺で引きつけるからさっき渡した銃で倒してくれ」
「は、はい!」
まずは適当に炎獄無双で強化した拳でジャブ。
体力を調整しつつヘイトを買う。
そうして上手く瀕死にしたところをシルヴィアによってトドメが刺されたのだった。
「それじゃ、これに召喚契約をしようか」
「え、でも倒しちゃいましたよ?」
「いいからやってみて」
言われるがままに鎧と召喚契約を結ぶシルヴィア。
どうやら成功したみたいだ。
「あれ?」
「カースドアーマーの契約条件は少なくともトドメを刺すことなんだ。
そして、こいつも成長率がかなり高いから今のうちに育てておくことをオススメするよ」
「あれ…?
名称が違うような?」
「ちなみになんて書いてある?」
「ガーディアンアーマーですね」
「オッケー、カースドアーマーの召喚先はもう一個あるから狙ってみようか」
なお、よくわかってなさそうな顔だったので詳しく教えてあげた。
【GMLG3000】
General purpose Magic Lazer Gunの略で、過去の残滓の1つ。
使用者の魔力を消費してレーザーを放つ拳銃型の汎用銃の1つ。
初心者でも扱いやすく、消費魔力に対して威力が高いのが特徴で、使用者に合わせて進化する。
【狂戦士】
職業の1つ。
条件をゲロっておくとプレイヤーをキルすることではなく命乞いなどを聞き入れることなく無慈悲にNPC、プレイヤーをキルしたという経験を重ねることである。
あまり取っている人はおらず、未知の部分も多い。
バフや攻撃、範囲殲滅など色んな技があるが、ウィルはあまり使っていない。
その理由は制御が難しく味方に当ててしまう事が多いかららしい。
【アカイロタケ】
森系フィールドによく生えている赤色のキノコ。
食べると体力を微回復。
【アオイロタケ】
赤色の青バージョン。
魔力が微回復。
【魔法職入門】
魔法職初心者にやらせるクエストといえば?
と聞けばほぼ全員がこれを答える。
最終段階まで行くと魔力回復のスキルがもらえる。
【堅牢要塞アブソリュート】
過去、宇宙からの侵略者に対抗するために建設された絶対要塞。
しかし、健闘虚しく戦争終盤で崩壊した…
原因は―――――
【カースドアーマー】
過去使われたであろう武具に悪性の魔力がたまり悪霊化した鎧風のエネミー。
召喚獣になると『ガーディアンアーマー』か『ウォリアーアーマー』になる。
どちらになるかはフレーバーテキストによると過去の残滓がどうのこうのとか書いてあるけどメタ発言をすると確率である。