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エンジョイゲーマーズ!  作者: 狼噛 ウルフ
4/11

第4話 単純作業って面倒ですよね

召喚士、それはフィールド上のモンスターを捕獲テイムし、召喚契約を結ぶことで自らの召喚獣に加え、戦力とすることができる職業である。


「かわいい〜〜〜〜!!!」


 そして俺の視線の先には先程召喚士になったばかりの少女が、とある魔法使いによって毒に苦しめられながら絞め技でジリジリと弱らせるという非人道的戦略によって生まれた瀕死のフォレストハウンドを先程までの非人道的行為は見なかったことにしたのか召喚契約を結び、仲間になった途端解毒と回復を行われ、まるで『仲間になったら殺さずにいてやる』『わかった!わかったから殺さないでくれ!』のようにも見えるやり取りの末に可愛がる姿が見えた。


 フォレストハウンドの尻尾がむしろ必死なくらいブンブン振られているのはきっと気のせいだろう。


 なお、何故毒で苦しめることになったのかというと、テイムの条件の1つに相手から戦闘の意思を無くすというのがあり、要するに瀕死にすればいいのだが初心者用フィールドにいるチュートリアルモンスター的存在でもあるフォレストハウンドに対し、我々の火力が高すぎたせいである。


 試しにデコピンしたら錐揉み回転しながらポリゴンになって消えていった哀れなフォレストハウンドが生まれてしまったからな…


 「さて、それじゃあ今日は最後にアレやって終わろうか」


「神楽さん、アレってなんですか?」


「アレって決まってるでしょ?」


「?」


「レッツパワーレベリング」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ここは最初の街である【ビギンズ】と次の街である【ベルタ】の間にあるとある渓谷である。


 蟻型モンスターの『アーマードアント』が大量に生息するエリアなのだが、蟻という生態上、他エリアに比べても数が多い。

 食料などを探し、最終的に狩りもするようになった『アーマードアント・ワーカー』、そんな働き蟻達の護衛や巣自体の防衛に就く戦闘特化の『アーマードアント・ソルジャー』、そんな兵士たちをまとめ、指揮を出す『アーマードアント・ジェネラル』などなど…様々な蟻型モンスターの有象無象が、等しく殺戮されていた。


 一方では、雷の雨、炎の壁、飛来する氷の槍などによって殲滅され。


 一方では、影から飛び出す鎌、己自身も影となりながら鎌による一振りで5体近くをまとめて切断され。


 一方では、炎を纏う剣を振り回し、時に斬撃を飛ばし、光る剣を携えながら通りすがりに切り捨てられ。


 一方では、背丈程もある斧を一振り地面に叩きつけ、その衝撃が地面を揺らし、亀裂を走らせ、その亀裂から吹き出す溶岩に溶かされ。


 一方では、弾丸による弾幕制圧により体を貫かれ。


 そんな狩られる側である蟻達にとっては阿鼻叫喚な地獄絵図と化した【無尽蟻(むじんあり)巣窟渓谷(そうくつけいこく)】では、遊戯部によるパワーレベリングが実行されていた。


 パワーレベリングとは要するに、レベルの低い者が本来倒すのに苦労するモンスターを変わりに高レベルな者が狩ることによってレベルの低いものに経験値を流し、レベルアップを行う行為である。


 要するに強者による弱者へのいじめが集団によって決行されているわけだが、その効果は確かであった。


「【アイスランチャー】に【シャドウスローター】、【エンチャント・ファイアソード】と【ライトソード・サーヴァント】、あっちは斧技の【インフェルノスマッシャー】…あっちはもしかして【M134】かな……あれ確か航空機に設置して使うものだった気がするんだけど、持ち歩けるんだ…」


 ちなみにウィルはそんな地獄絵図な戦場を渓谷の壁を歩きながら見ていた。


 近づいてきた『アーマードアント・ソルジャー』を右ストレートで粉砕しつつ蟻達が湧き出る穴の方へと進んでいく。


 なお、ウィルの戦闘スタイルは籠手を使った格闘タイプである。


「お、出てきたね」


 そう呟いたウィルの視線の先には壁に空いた巨大な穴から窮屈そうに這い出てきた見上げるほどに巨大な蟻と、それを守るように整列していくアーマードアント達。


「『アーマードアント・マザー』と『アーマードアント・ジェネラルロード』、そしてその他アーマードアントの群れ。」


 補足すると、この無尽蟻の巣窟渓谷で虐殺行為、つまりは蟻達を片っ端からジェノサイドした場合、高確率でこの群れと殺り合うことになるだろう。


「みなさーん! お母さんが出てきたぞー!!!」


 アーマードアント達を生み出し、従えるお母さんとその親衛隊達と…


「オッケー! いつもどおり行くよー!【ハザードクラスター】!」


 まず神楽が周囲にいた大量の蟻達を竜巻や雷の嵐にて殲滅した。


ドドドドドドドドドドドドッ!


 紫苑がその撃ち漏らしへ向けてM134と呼ばれる機関銃の咆哮を轟かせる。

この弾幕によりジェネラルロードとマザー以外の蟻達は全滅した。


「【ライトソード・サーヴァント】【剣技:突剣猛進(とっけんもうしん)】!」


 次にアルトが飛び出し、ジェネラルロードに向けて従えた光剣と共に突撃しながら直線状にいた3体を一突きに亡骸へと変えた。


「まだまだ行くよー!【斧技:アースクエイククラッシャー】!」


 それとほぼ同時、イリーナが空高く跳躍し、着地と同時に地面に向けてその斧を振り下ろした。

 それによってその周囲の地面が跳ね上がる。

 その地面の上にいたジェネラルロード2体は空高く突き上げられ、背中から着地し、瓦礫に押しつぶされて死亡した。


「あ、コルベットー! そっちにも行ったよー!」


「よっしゃ! 任せろ!」


 シルヴィアを護衛していたコルベットに向けてジェネラルロードが1体突進していく。


「【パワーリフレクション】!」


 コルベットの構える大盾にジェネラルロードの巨体が衝突した瞬間、激しい火花とともにジェネラルロードの体に衝撃が走った。

 その衝撃はアーマードアント特有の装甲を割り、その中身である身体までズタズタになるほどだった。


 コルベットはしっかりとその護衛としての役目を果たしたようだ。


残ったのはマザーのみとなった。


「さて、【龍人化】、【拳技:炎獄無双(えんごくむそう)】【拳技:雷撃神槍(らいげきしんそう)】!」


 そう宣言すると、ウィルの拳には炎と雷を纏って飛び出す。

 翼をはためかせ、弾丸にも劣らない速度で生まれた運動エネルギーをその拳に乗せてマザーの装甲を打ち砕いた。

 その刹那、生まれた傷口から爆炎と雷撃が迸り、その傷を致命的な物へと変えていく。


 たまらず悲鳴をあげながら飛び退る所へ飛び込む影が1つ。


「【シャドウストリーム】」


 大鎌を構え、マザーの全身に20個もの傷を刻み込んでいく。


 しかし、マザーもやられっ放しではなく、前足の代わりに生えた鎌を振り回し、その牙で襲撃者を切り裂かんと果敢に挑む。


「トドメはもらったー!!!【トマホーク】!」


 イリーナがそう叫びながら持っていた斧をマザーに向けて思いっきり投げつけた。

 あの細腕からは想像もできない速度で射出された斧は回転しながらマザーの眉間をしっかりと捉え、その装甲を粉砕し、体を引き裂きながら相手をポリゴンへと変えたのだった。


「す、すごい………」


 シルヴィアはそんな蟻の虐殺ショーを特等席で見ることになった。


「お疲れー! それじゃあ、もういい時間だしベルタまで走ってログアウトしよっか。

シルヴィアちゃんはレベルいくつになった?」


「あ、えーっと……今は32ですね」


「え、今のでそんなに上がるんだ…」


 スタートが1だったことを考えるとかなり上がっている。

 あれだけの虐殺行為を行ったとはいえここは初心者用フィールドの1つであり、マザーの強さだって少し進んだ中級者パーティーくらいなら苦戦しながらでも倒せるくらいだ。


 まあ、そもそも初心者に蟻達の虐殺は難しいと思うが…


「でも……この装備…見た目だけはどうにかならないですか…?」


 そもそもこんなにレベルが上がったのは紫苑と神楽が得られる経験値を増やす装備を大量に渡していたからだった。


 それにより、今のシルヴィアの格好は頭には何処かの少数民族かそれとも森に紛れるスナイパーかのように草を鉢巻きでくっつけたような髪飾りを被り、胴にはカウボーイ……いや、今回の場合カウガールのような牛柄服に革ジャケット、その背中にはアゲハ蝶のように鮮やかな彩りの羽を二組生やし、腰には何故スカートしか無いのか、何処かの貴族がパーティーに着ていくような立派なドレスのスカート部分のみを付け、足にはビーチサンダル、腕から指にかけてジャラジャラと腕輪、指輪を付けていた。


「ご、ごめん…」


「ごめんね…?」


 神楽と紫苑が用意した初心者用、経験値増量系装備詰め合わせセットなのだが…二人が個別で集め、作成したこと、デザインを合わせるための素材集めを放棄したこと、お互いがどんな装備を作るか相談していなかったことなどが災いし、見た目が大事故を引き起こしたのだった…


「その装備、30Lvを超えると殆ど無力になるから初期装備に着替えていいよ…」


「ベルタに着いたら装備を買うくらいの時間はあるはずだよ。」


「そうだね、シルヴィアは仲間にしておいたフォレストハウンドに…」


「シアン!」


「え?」


「この子の名前はシアンです!」


 シアン……フォレストハウンドって普通に黒い毛並みだよな…?

 あ、もしかしてフランス語!?

 てかそれ『犬』って意味だった気が……


「あ、うん。

じゃあシルヴィアはシアンの背に乗って付いてきて」


 そのことを知ってか知らずか、アルトは少し困惑気味に返したのだった。


 そうして、一行は2つ目の街【ベルタ】へとやってきた。

 始まりの街【ビギンズ】の次にプレイヤー達が訪れることになるであろう街であるここ【ベルタ】はビギンズに比べ2回り程大きくなった街であり、プレイヤーホームやギルドハウスと呼ばれる建物も多い。

 近くに中盤から終盤近くまで使える経験値効率の良い狩り場が存在するため、多くのプレイヤーがここを最初の拠点と定める街だ。


「それじゃ、防具屋へしゅっぱーつ!」


 イリーナが先陣を切ってベルタへと足を踏み入れていくのだった…

作者がいろいろ忘れないための設定まとめコーナー


星宮 水城:ウィル(竜人族)籠手使い:黒髪の青年


佐野 修哉:シュウ(???)大鎌使い:黒髪ツインテールの美少女


桜沢 結:シルヴィア(人間)召喚士:黒髪赤眼の美少女


飯坂 花蓮:神楽 (エルフ)魔法使い:緑髪ロングの女性


瀬谷 当麻:アルト(???)魔法剣士:青髪の青年


沢北 綺羅:イリーナ(???)斧使い:赤髪ロングの女性


一川 澪:紫苑(猫獣人)銃使い:黄髪ショートの美少女


高木 一之輔:コルベット(人間:機械化)大盾使い:四肢を機械化した大柄の男性。茶髪


【アイスランチャー】

魔法使いが使える初級の魔術。

初級とはいえその練度や同時発動しているいくつかのバフによって威力は高い。

取り回しがよく魔力消費も控えめ、終盤でも牽制などによく使われている。


【シャドウスローター】

職業『死神』のスキル。

影のある場所なら何処からでも影の鎌を射出するスキル。

威力は十分で不意打ちに最適。


【エンチャント・ファイアソード】

魔法剣士のスキル。

己の獲物に炎属性を付与し相手を焼却する。


【ライトソード・サーヴァント】

同じく魔法剣士のスキル。

二本の光剣を生み出し、プレイヤーの周囲を浮遊し続ける。

この剣は近づいた敵を自動的に迎撃する。

自分から近づいて攻撃させたり、マニュアル操作したりといろいろなことができる。


【インフェルノスマッシャー】

斧技のスキルであり、地面を割って割った地面から溶岩が溢れ出すというスキル。

広範囲を溶岩が埋め尽くすため、ザコ敵は一気に溶ける。


【M134】

スキルとかではなく武器。

本来の用途は航空機等に搭載して撃ち下ろす銃なのだが、STRが要求値を超えていると持ち運びながら撃てる。

要するにランパートのウルト。


【ハザードクラスター】

魔法使いのスキル。

広範囲を竜巻と雷が蹂躙する広域殲滅技。


【剣技:突剣猛進】

剣技の1つで、20m程まっすぐ剣で貫きながら突進するというスキル。


【斧技:アースクエイククラッシャー】

斧技の1つで、周囲の地面を上にいる生物ごと空高く打ち上げ、落下ダメプラス降り注ぐ瓦礫によるダメージが入る。

 実はそこまで範囲は広くない。


【パワーリフレクション】

盾技の1つで、相手が盾に与えた運動エネルギーをそのまま跳ね返すというスキル。

自らの運動エネルギーと跳ね返ってきた運動エネルギーで体がズタボロになる。

コルベットはこれを機械化で増幅してるので通常より倍くらい威力がある。


【拳技:炎獄無双】

拳技の1つで、己の攻撃に炎属性を付与するバフ技。


【拳技:雷撃神槍】

拳技の1つで、雷属性を纏いながら強烈な右ストレートを御見舞する。

装甲持ちに有効。

ウィルはこれを運動エネルギーを使ってダメージを増やしていた。

調子乗った結果いつもより速度を出して実はちょっと自傷ダメージを喰らっている。


【シャドウストリーム】

『死神』のスキル。

大鎌による20連撃を放つ技なのだが、どちらかというと群体へと向けて放つ技。

回転エネルギーに乗せて大鎌をブンブン振り回すため制御するのはとても難しいし三半規管が強くないと酔うという欠点がある。

今回はシュウが頑張って方向を制御して全部マザーに当てた。


【トマホーク】

斧技の1つで、斧をぶん投げて進行上にいた敵を一刀両断する。

フリースローのように縦に投げる派とハンマー投げのように横に投げる派で度々戦争が起こる。

イリーナはその時投げやすいと感じた方向派。


【無尽蟻の巣窟渓谷】

別にアーマードアントしかいないわけではないがアーマードアントが覇権を握っている渓谷。

8割くらいは蟻と戦うことになるエリア。

本編のように『ワーカー』『ソルジャー』『ジェネラル』など様々な蟻と戯れることができる。

殲滅していると『マザー』と親衛隊の『ジェネラルロード』が現れて怒られる。


【アーマードアント】

どの種類も頭から背中にかけて硬い装甲を持っている蟻。

進化と変異の過程で肉食になったらしく他の生物を牙や鎌で狩猟をするようになった。

最初は酸を吐くようにしてもいいかと思ったが、EDF辺りに怒られそうなので辞めた。


【アーマードアント・ワーカー】

アーマードアント達の食料を集める蟻達。

最も数が多い。


【アーマードアント・ソルジャー】

ワーカー達の護衛。

ワーカーの次に数が多い。

後述するジェネラルが近くにいるとAIレベルが上がり、連携を取る。


【アーマードアント・ジェネラル】

ソルジャー達の司令官。

近くにいるソルジャー達を指揮し連携する。


【アーマードアント・ジェネラルロード】

マザーの親衛隊であり指揮官達。

雑魚の殲滅が遅れるとジェネラル、ソルジャー、ワーカー全員が巧みな連携で敵を殲滅する。

マザーの最終防衛ラインである。


【アーマードアント・マザー】

アーマードアント達のお母さん。

ほぼこいつからアーマードアント達は産まれている。

背丈が他蟻達の数倍あり、群れの中では最も大きい。

なお、ロード→ジェネラル→ソルジャー→ワーカーの順に小さくなっていく。

初心者エリアにしては耐久力が異常に高いことで有名。

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