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第一話

別サイトで投稿していた作品です。整理の為倉庫行き。

 軽トラが田んぼばかりの舗装された道路を走っていた。唸るアクセル、後ろには一台のスーパーカブが積まれている。

 バージンベージュと呼ばれる色で塗装されたスーパーカブは丸目ヘッドライトと小さな丸いミラー、メッキでカバーされたマフラー。後ろには大きな銀の荷台がついている。所々土埃の汚れや石などで擦れた傷ができていた。

 ロープでがっちり固定され、多少の揺れでも動じない。

 午後五時前でも辺りは暗く、ライトを点灯させないと運転に支障をきたす。

 軽トラは途中から舗装されていないあぜ道に入り、窪んだ穴に車体が傾きながらも、我が家の敷地内に到着。

 敷地内には小さめの畑と、平屋が建つ。瓦屋根にはソーラーパネルが敷かれている。

 丸メガネをかけた五十代後半の男がエンジンを切って、軽トラから降りてきた。

 蛍光色の黄ジャケットを羽織り、前に鍔がついた帽子をかぶっている。手は冬用のグローブ。

 白い湯気が鼻や口から出てきた。

 男は軽トラの荷台のゲートハンドルを握り、解除。テールゲートを下ろす。

 フックから固定していたロープを外し、スーパーカブと一緒に乗せていた木の厚板を二枚、荷台から地面へ斜めに立て掛けた。

 男性は荷台に乗って、サイドスタンドを外すと、ハンドルを握りしめてそのまま勢いよく一緒に降りる。

 平屋の横にある倉庫へスーパーカブを駐車した後、男はふう、と息をつく。

 荷物を降ろしてから軽トラも片付けて、男は家の隣に建つリフォーム中の空き家を眺めた。少し首を傾げる。

 玄関をガラガラと開け、グローブを外した。ジャケットも脱いだ。帽子も。靴を脱いでリビングに向かう。

 スライド式の扉を開けると、リビングで宿題に取り組んでいる少年の背中が視界に入り込んだ。

 気付いた少年は、静かに振り返る。

いつき、オイル交換してもらった。他も問題ないとよっちゃんが言っていた。あと、ハンドルカバー買ってきた」

 消えてしまいそうな声で、男は呟く。

「ありがとう、おじいちゃん」

 樹と呼ばれた少年の声もまた静か。二人とも独り言のよう。

「ああ」

 樹の祖父はソファに座って、テレビの前を陣取る。

 リモコンで電源をつけた後、公共放送をただただ流し観る。

 樹は再び宿題に取り組んだ。

「隣の人……十二月から来る、挨拶しないとな」

 手を止めて、樹は顔を上げた。

「うん。どんな人?」

 祖父は孫の質問に、腕を組んで新たな住人について思い出す。

「女の人、若いって言ってたな。一人暮らし」

「若い女の人……」

「あぁ、わざわざ土地買い取って。ここら辺は安いけど、それでもな」

 祖父はそれから、再び口を閉ざして夕食の時間が来るまでテレビを流し観た。

 樹は、夕食の時間が来るまでに宿題を終わらせる為、顔を下に向けてシャーペンを走らせた。


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