汝と流れ星
「あら。あなたは誰かしら?」
冬寒い夜に、ランプを持ったその人物の姿はフード越しだからこそ、みえやないが、年老いたとされる声を聞くとルイスは目を細めた。
「ルイスですよ。エリザベス様」
「ーーなんで、お前がここへ? わたくしをあの日のように嘲笑いにきたの?」
ルイスはある小国の森の奥地で、約束を果たしにきた。風が強く、吹くとフードに隠されたその年老いた声の持ち主の、素顔が現れた。醜く老いた老婆だ。
「ーーまさか、その逆ですよ。リズ」
一歩、一歩エリザベスとの距離を縮めると、レオは彼女を抱きしめた。強く、強く抱きしめた。
「ルイス、ルイス、どうしてわたくしを抱きしめるの?」
「わからないんですか。僕たちは今も両想いでしょう?」
「ーー離してっ」
びくびくと怯えた様子の彼女ーーエリザベスは、ルイスを突き離した。後ろを向いた彼女は俯く。
「あの、大国出身で傲慢な魔法使いが勝手に取りつけた約束、覚えてますか?」
「覚えて、るわ。」
「今日が約束の日です。ーー枯れない愛があるのならば、流れ星が降る夜に汝の姿はもとに戻るーーという約束です。」
「そう、ねーーその約束は一度、愛が枯れたら終わりである約束よ。だから私の姿は老婆から、変わらないわ。」
「それが違います。私の愛は、今も昔もあなたに向いてます。」
「嘘よ! じゃあなんで、会いに来なかったのよ!」
「あの、憎たらしい魔法使いが、あの日、私を操ってこの国に入れなくしたのです。」
ーーー
ーー
ー
「美しいエリザベス、私の妻になってください。」
「あら。あなた、魅了の魔法を使ってるわね。失せなさい。」
大国出身で重要な客である魔法使いの言葉に、エリザベスは冷たくした。その瞬間、魔法使いもかたまり、周りもかたまった。
「エリザベス! 口を慎みなさい!」
「嫌よ。わたくしにはルイスがいるもの。しかもこの人、容姿も偽ってるわ。さらに嫌よ。」
なんということだ、と周りが騒つく。そんな中で魔法使いが口を開いた。
「では、エリザベス。あなたに魔法をかけましょう。枯れない愛があるのならば、流れ星が降る夜に汝の姿はもとに戻る、という魔法を。」
その言葉とともに、雷が鳴り響くーー次に、エリザベスは黒いものに包まれて、姿が変わってしまった。
「なによーー⁈」
「ーーなんと、醜い…」
彼女は自分の口から出た、年老いた声に困惑して手を見つめた。その様子を見て、誰かが残酷な言葉を呟く。
「愛は枯れるものですがね。ねえルイスくん?」
「ーー不細工なあなたは価値がありませんよ。」
魔法使いの馬鹿にした発言に、目の前にきておそらくは抱きしめて守ろうとした愛する婚約者の言葉。その時、彼女の意識は遠のきーー。
ーーー
ーー
ー
「ーーあの時、私は、あの魔法使いの言いなりになりました。気がつくと、この国を出て自国へと帰国しておりました。私は慌ててあなたのもとへと行きたかった。でもこの国へと入れなかった。どうやら約束の日まで私を此処へと入れないように細工をしたのでしょう。」
そのルイスの言葉に、エリザベスは涙を流した。その途端、流れ星が夜空に輝いて降る。
「それで、あなたは本当にーー」
「愛してますよ。リズ」
「わ、私だって、ずっと、ずっと、愛してるにきまってる!」
抱きしめ合う二人に、流れ星は降り続けて、老婆は美しい女へと変わった。
ーー枯れない愛があるのならば、流れ星が降る夜に汝の姿はもとに戻るーー
それは、本当だった。