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第六番歌:アダタラマユミの白猪征伐(一)

     一

 神無月二十九日、涼しくて、あらゆる物事に実りのある秋が、寒くて、すべてに試練と停滞をもたらす冬にたすきを渡そうとしている。(そら)(みつ)本通りでも、羽織り物や巻き物を装いに取り入れている人がちらほら見受けられた。今日帰ったら、上着を引っぱり出しておこう。長袖Tシャツとパーカーでは、もう乗り切れなくなったからね。

「本一冊、取りに帰るだけで、こんなに遅く着くなんてなあ……」

 大和ふみか、本日ポカをやらかして候。年に一度あるかないかの母による激励を受け、勇ましく登校した……のだが、最初の信号を前にして、返却期限切れの本があったことを思い出し、取りに戻ったのだった。恥ずかしき姿をさらし、母がどのような反応をしたかは言うまでもない。そのせいで、いつもの電車に乗り損ねて、二十分後に来るのろのろ各駅電車に揺られることになったのだ。

 肩掛け鞄の、ささやかな重りとなっていた忘れ物『五色(ごしょく)五人女(ごにんおんな)』。地元の市立図書館で初めて出会い、一気に読んだんだけれど、疾走感のある文章と個性豊かな登場人物に魅了されて、再度読みたくなったので、今度は学内の図書室で借りていた。地元でいったん返して、借り直すこともできたが、地元の物と大学の物とで違った味わいを楽しみたかったといいますか。印刷物なんだから全く同じ物だ、と切り捨てられたら困る。住んでいる場所が変わると、性格も若干変わるでしょ。(そら)(みつ)大学で育った『五色五人女(ごしょくごにんおんな)』も、読んでみたかったんです。ほとんど私物にさせてしまったくらいにね。次は、買いますよ。

 正門(とはいうものの、学内での認知度は低い。だって、門なんて置いてないし、二本柱があって、右に「空満大学」っていう古すぎる木の板が打ち付けられているだけの、わびしい所だからね)をくぐって一日を始めるのが習慣だったのだが、今回は状況が状況なので、経路を変更した。空満本通りを抜け、空満神道本殿の前で一礼(夕陽ちゃんがしていたのでつい私も真似するようになった)し、回れ右して直進。宗教行事の行進にも使われる、長い花壇が続く広い道を早歩きする。

 前には華火ちゃんが通う空満高校、右には、世界の博物館の異名を持つ空満(そらみつ)参考館(さんこうかん)への道が続いている。どちらにも用の無い私は、左の道を進む。A・B号棟と研究棟との間に渡された横断歩道には、せわしなく目的地を目指している学生でごちゃごちゃしていた。

「なんとか遅刻せずに着けたよう」

 A・B号棟側には、運動場、自転車置き場が目に入ってくる。研究棟側には、そのままだが研究棟がはじめに見えるはず……だった。

 車が一台、そばに止まっていた。赤い警光灯に、白くて大きい本体、怪我人や病人を運ぶための車、救急車だ。非日常の象徴のひとつが、よりにもよって、この大学に……?

「誰か倒れたの?」「まじで、救急車来るとかやべー」「○○先生じゃないよね?」「なんの騒ぎよ」「まさか事故!?」普段あるはずのない事が起こると、野次馬がたかるのは世の常。ふみかはそんな失礼な気質ではなかったし、急いでもいた。だが、しかし。この時だけ、胸にざわめきを感じていたのだった。ふみかが「嫌な予感」と呼んでいるもの、いわゆる「虫の知らせ」に近い―

「ふみかちゃんふみかちゃん!」

 不安で凍りついてしまった身体が、解かされる。気がつくと、日文の頼れる先輩であり、仁科(にしな)唯音(いおん)の親友の、額田(ぬかた)きみえがこちらをのぞいていた。

「あ、せ、先輩、おはようございます」

「おはよ、で、大丈夫? 顔色よくないよ」

「す、すいません」

 まともな会話になっていないが、とりあえず至って健康であることを表した。

「落ち着いて聞いてね。今朝、まゆみ先生が個人研究室で倒れていたんだ」

「え………………」

 額に気持ちの悪い汗が、ひと筋流れる。

(とき)(すすみ)先生が見つけて、一一九番通報された。これから近所の病院へ搬送されるよ」

 冴えた眼で、額田先輩は救急車を見て言った。冷静でいるよう心がけているみたいだったが、声に揺らぎが紛れていた。

「前々から意識が途切れることが、しょっちゅう起こるって仰っていたんだけど……。過労かな? 貧血……それは時進先生の専売特許か。ただただ、回復を願うばかりだ」

「そ、そう、です……ね」

 偶然起こったのだと、信じていたい。一過性のものだと、望んでいたい。それなのに、胸騒ぎが収まってくれない。まゆみ先生の昏倒を、戦いの前兆とつなげてしまって―

「まゆみが、どーかしたってんのか?」

 つむじ風のごとく割り込んできたのは、華火ちゃんだった。その後ろには、唯音先輩が、病的なまでに白い顔をして執事よろしく控えていた。

「やあやあ、唯音に華火ちゃんおはよ。そうだね、あんまり広めることじゃあないけど……あれあれ、隊員みな揃いってところ? 君達こっち来なよ」

 唯音先輩とほとんど変わらないほどの身長だが、背伸びをして向こうへ手をおいでおいでさせる。ほどなくして、夕陽ちゃんと萌子ちゃんがやってきた。

「ふう、ふう、ふう…………私鉄がまさかの鹿を轢いてもうて足止めされてたんですよぉ、ぎりぎりセーフやわぁ……」

「萌子ノ愛機にライドをオススメしタんスけド、法律ニ背キたくナイの一点張リなんデス☆ 結果、ヘトヘトっスよ。伴走シテ正解でシタな」

 必要以上に夢のある部品で飾り付けられた自転車に搭乗したまま、道中を語る後輩。真面目な走者にこれまた奇抜な水筒を供していたが、丁重にお断りされていた。えっと……この格好は、超能力少女かな。隣に道場がある、金のバッジがもらえる訓練場の指導者だ。今も人気の冒険育成ゲームの初代、私でも分かったよ。

「きみえさん、まゆみさんは……?」

「うんうん、あのね」

 額田先輩が口を半端に開いたところで、固まった。自ら動きを止めたにしては、不自然だ。まるで、映像に「停止」のボタンを押したような手法。驚くには、まだ早い。先輩が、いや、先輩をはじめとする、学内にいた人たちが消されたのだ。風景に溶けこむように、じわじわと透明になって、いなくなってゆく。



 何の因果というべきか、残されたのは、日本文学課外研究部隊のみ。風が凪ぎ、快晴だった空が白き雲に統べられる。彼女達は見知っていた。()しき事の始まりである、と。

【五人の娘子(むすめご)よ】

 どこからか、言葉の形をとった音がした。男のものとも、女のものとも、また、若きものとも、老いたものともいえる、人によって様々に受け取られそうな声であった。ふみかは、耳慣れた、溌剌として気品のある調べに聞こえた。

【五人の娘子よ、(われ)此処(ここ)に在り】

 道路の真ん中に、太き獣が四本の足をつけていた。儀式に用いられそうな、研ぎ澄まされた牙に、来し方行く末までも見通せそうな、清らかな瞳。隊員が一斉に、驚愕する。

「え、ど、ど、どうして、そんな」

「……………………………………!」

「こいつ、今朝、夢に出てきたぞっ!!」

「うちも……ゆうことは、皆同じ夢見てたんか!?」

「アメイジング。正夢カ予知夢カ、ソレが問題だレベルじゃナイっスね」

 神々しき白い猪が、こちらを見つめ続けていた。

(われ)(たたか)え、闘え、戦え】

 合わせて、猪のまぶたがおもむろに上げ下ろしされる。

【此の日、()一刻(いっこく)、研究棟最上階に於いて、吾と斗え、闘え、戦え】

十二時(じゅうにじ)(しん)か。午前九時から九時半やね」

 夕陽が、即座に現代の時刻に言い換えた。「巳一刻」で思考が混乱していた四人は、参謀に拍手をしたくなった。

左様(さよう)、此の日、巳一刻、研究棟最上階にて待つ、な忘れそ】

 白猪は鼻息ひとつすると、その身を景色に薄めていった。色彩も輪郭も失われて、きれいさっぱりいなくなったのだった。

「九時に屋上にいりゃいーんだなっ。あたしは自習だっ。あきこはどーよ」

「流レに乗っテ本名呼ブなバカチン。萌子ハ一限休講ニなッてマス☆」

(わたくし)は、履修登録無し……」

「うちとふみちゃん、一限入ってるわぁ。それも必修科目やねん。どないしょう……」

 憂うメガネ娘に、超能力系のモンスター使いが胸を張って、そこに手をドンと叩いた。

「ココは、フリー組ガ引キ受ケルっス☆ センパイは講義ヲ優先シテくだサイ」

「必修科目は、重要、出席して……です」

 沈黙を守る大先輩も、後押しする。

「百戦錬磨っ、こんだけ場数踏んでんだ。万事解決っ、合流した頃にゃとっくに終わらせてるかもな!」

 最年少の爆発女子高生は、まゆみ先生みたいに親指を立てて「良し!」のポーズをした。うん、変身して倒してしまえば、また先生は目を覚まされるよ。五人いるんだ、深刻にならなくたっていい。

「ヒロインになって、白猪に勝つよ!」

『ラジャー!』



「……なになに? なんで盛り上がってんの?」

 鬨をあげていた五人に、今度はちゃんとした人間の声がかかる。額田(ぬかた)先輩が怪訝な顔をされていた。空満大学の朝の情景が、帰ってきたらしい。救急車は赤い灯りと警報音を起動させ、研究棟を発つ。人だかりは散り散りになって、それぞれの道を行く。

 少しの間、消失の術をかけられていたとはつゆ知らずの額田先輩は、

「君達、変だよ?」

 と肩をすくめたのだった。






 文学部日本文学国語学科二回生の必修科目「国語学研究F」は、なぜか三十分弱でお開きとなった。九十分みっちり()(ぶち)先生が「『ら』抜き言葉」だの「『れ』足す言葉」だのを講釈する、内容は興味深いが先生に嫌悪感を持ってしまう(夕陽ちゃんは、見蕩(みと)れ聞き惚れているが)講義が、だ。毎度のいやに劇場型な前振りから、「いがいたいからなにかでてきた」と「せつなさみだれうち」に共通することをお探しくださいとか馬鹿丁寧な節回しで問題を投げて、ハイおしまい、だって。あと「ここまでにしておかないと、集中が切れる方がいらっしゃいますからねえ」「夕陽さん、不躾なお願いですが、お隣の方に新鮮な空気を吸わせてさしあげてくださいますか」とは何よ。友達をたぶらかしつつ私を非難してくるなんて。おかげで腰を据えて戦いの場へ赴けるんだけれども。

「もれなくあなたにも三十六(さんじゅうろっ)花閃(かせん)乱れ撃ちしてやる」

「レッド?」

「あ、あ、ご、ごめん。な、なんでもないから」

「そうなん? ならえぇんやけど。行くで!」

 私とゆうひイエローは、研究棟の屋上へ突入した。

「ふみかレッド、登場だよ!」「ゆうひイエロー、遅ればせながら参上やぁ!」

 奮って戦闘に途中参加したことを、悔やんでいた。おごり高ぶっていたのが、悪かったんだ。いかなる相手だろうと、いつも通りに技を駆使してなんとかすれば、倒せちゃうんだから、って……。

 雲に閉ざされた空の下、白猪は、清らかな色を保っていた。空気の弾による毛の乱れ、爆発による煤汚れ、光線・サーベル・忍具・拳法による傷付きが、ひとつも無かったのだ。周りには、うつ伏せに倒れるいおんブルー、胎児のようにうずくまるもえこピンク、そして、

「てめえ……っ、よぐ……もっ、よくも……っ!」

 はなびグリーンが、巨体の獣を前にして、膝をつかされていた。

【恥を()れ】

 落ちている花火玉を取らせる慈悲もくれず、白猪は鼻から息吹を吐きつけた。息吹は、白さを持って、細く鋭く、剣の形と化して、グリーンを串刺しにしようと襲いくる!

「あかん!!」

 イエローが出せる限りの速さで走り、髪に結んだリボンを螺旋状に伸ばす。黄色いリボンが、半球を作り、グリーンを防護する盾となった。

「下がるよ!」

 肩で息するグリーンを、レッドが抱きしめて斜め後ろへ退いた。これで、息の切っ先から免れる……と思いきや、

「ひやああぁぁぁぁぁぁ!」

 守りの半球のあちこちに、裂け目ができて、それらが押し広げられてゆく。一本の白い剣が、分裂して薄い刃に形を変え、盾を切り裂きにかかったのである。

「イエロー!? うっ、うわあああ!」

 白猪の吐息に耐えきれず、三人とも弾き飛ばされる。

 レッドの思考が、この一瞬の中で、独楽のように回る。このままでは、壁にうち当たってしまう。身体を強く殴りつけられる? 骨にひびが入る? 神経にも届いて、後遺症で立てなく歩けなくなる? いずれにしても、痛みは避けがたい。そうだとしても、痛いのは、苦しいのは、やめて! 

「マキシマムザ・アムールリフレクション☆」

 撫子色の照明が、屋上全体を染めた。吐息製の刃の群れが、反発して振り払われてゆく。

「へ……へへ、ギリギリ……セーフ……☆」

 乱れた黒髪のピンクが、振り向きざまに弱々しくピースサインを送る。危機を救ってきた「最終ヒロイン」としての矜恃が、ぼろぼろの彼女を突き動かしたのだろう。衣服にほつれや破れがみられ、花の(かんばせ)に、かすり傷ができている。

 光の杖「麗しのカムパネルラ」を羽子板代わりにして、残りの力で私たちを押す。コンクリートの床へ着地させ、少々衝撃はあったが大怪我をせずにすませてくれた。

「青センパイに、カスタマイズしテ、おイテ、もらッテ、よカ…………」

 跳ね返しきれなかった一部の刃に、ピンクはつらき歓迎を受けさせられたのだった。

「……手当て、せな!」

 イエローが上半身をどうにか起こして、髪飾りでピンクに巻きつき、すんでのところで自身の元へ連れ戻すことができた。

「桃色っ、情けねえぞっ、桃色っ、しっかりしろいっ! なあっ!」

 レッドの腕を抜け、ぐったりしているピンクをはたき、揺さぶるグリーン。

「はっ、そーだっ、(あお)(ねえ)っ、青姉は!? どーなったんだよ!? いっ、痛ててて……」

「だめだよグリーン、暴れないで」

(あお)(ねえ)、真っ先にやられちまったんだっ! 青姉っ、青姉っ!」

「無事……です」

 大いにあわてるグリーンに、ブルーが左二の腕を押さえながら歩いてきた。右足をかばっているようにも思われたが……。

「冷静に、なる……です」

「おう、おう……よっ」

 ポン、ポン、とやわらかに頭に手を置かれ、グリーンはへたりこんだ。

「桃さんの、状態は……?」

「病院で診てもらわな、なんともいえませんがぁ……。とりあえず血ぃ止めときます」

 リボンをちぎり、包帯にして応急処置を行う。ピンクの身体中に切り傷がつけられ、糸のように血が流れる箇所もあった。

「パワー桁違イっスよ…………ナメてまシタ……」

 黄色い帯で傷口をふさがれてゆく中、ピンクがまだるっこしく目を開けた。

「しかしbutシカシ……、猪サン倒サなイト、センセが寝たキリ……」

斯様(かよう)な程で、(われ)を伐てるものか、恥を()れ】

 聞く者の心しだいで変化(へんげ)する音が、白猪から発せられた。

斯様(かよう)な程で、アダタラマユミを救えるものか】

『!?』

 この獣、まゆみ先生と関係があるのか。祭礼に捧げられそうなほどに美しき牙が、五人の乙女に畏れを抱かせる。

【アダタラマユミは、人を外れた行ひをした、故に、(こと)なる力を宿した】

 ふたつの報せが、五人に浴びせられる。

「あいつが、なんかしでかしたってのかよ!?」

「センセが罪ヲ犯スなんテ、絶対アリえまセン!」

 そうだ。まゆみ先生は悪事を働くことなど、しない。レッドは、口には出さなかったが、まゆみを篤く信じていた。

(こと)なる力ゆうんは、雲出して、野守さんや蛙さんなどを呼ぶことですか!?」

「…………!」

【左様】

 ずっと戦ってきた相手は、まゆみ先生の「特別な力」によるものだったんだ……。どうして、先生は私たちを困らせるようなことをされたの? いや、そうじゃないよね、きっと白猪が先生を操っているんだ。先生は強引なところあるけれど、誰かを痛めつけるようなこと、しないもの! いや、待って。白猪も先生の力で現れたのだとしたら。

 血の気が引いていくレッドを、水晶玉のような瞳で一瞥して、白猪は音を流した。

【アダタラマユミは、人を外れた行ひをした、殊なる力を宿した、(ゆえ)に、吾はアダタラマユミに(のろ)いをかけた】

(のろ)い!? あなた、先生にいったい」

【其の力、封じたものの、解けて暴れ狂うていた、故に、吾は(のろ)いをかけた、永き眠りにつき、黄泉(よみ)に漕ぎゆく(のろ)いを】

 黄泉がどこなのか、そこへ行くとどうなるのか。五人は知識の浅い深いはあれども、理解していた。皆の顔に、戦慄がはしる。

「力を暴走させたから、今度は息の根を止めて封じようっていうの!? そんなの、まったくもって、ひどすぎるよ!」

 レッドからの糾弾を歯牙にもかけず、白き霊獣は人の言葉で語りかける。

(これ)も、行ひへの報い、吾を伐たねば、アダタラマユミは覚めぬ、黄泉の住み人にならう】

『!!』

 想像することさえ忌む、最悪の結末。あのまぶしき笑みが、見られなくなる。あの元気づけられる言葉が、聞けなくなる。安達太良まゆみに黒い靄がかかる、独り狭き箱に寝かされ、二度と誰の目にもふれられることもなく、別れてしまう―。

【神無月晦日(つごもり)未三刻(ひつじさんこく)、研究棟最上階に於いて、再び吾と斗え、闘え、戦え】

 霊獣が、最後の機会を与える。非常にも、まゆみをめぐる戦いへ(いざな)う。

【神無月晦日、未三刻、研究棟最上階に於いて、再び吾と斗え、闘え、戦え、吾を伐たねば、アダタラマユミは覚めぬ、現世(うつしよ)には帰らぬ】

 霊獣が、最期の機会を預かる。非情にも、まゆみをめぐる戦いを約束する。

【其の日に、アダタラマユミの行ひを陳べやう、人の道に背きし、ならぬ行ひを】

 そう伝え終わると、全身をじわりじわり透明にして、五人の前から去ったのだった。

「…………三十一日、土曜日の十四時から十四時半の間やな」

 イエローが容易く訳したが、調子はいたく重々しかった。

「負けると、まゆみさんが」

「ばかやろう、縁起でもねえっ」

 ブルーの言を打ち切らせ、グリーンは一本に結った髪を振り回した。

「どこから手をつけたらいいんだろう……」

 最も負傷したピンクに、肩を貸すレッド。もっと早くに着いていれば、戦況をちょっとでも良い方向にできたんだろうか。私よりも戦闘能力が高いピンク達でも、こてんぱんにされたんだ。ううん、暗くなっちゃだめだ。やれることから、始めよう。

「まずは、病院かな……」

 とは言ったけれど、この辺にあるの? 生まれも育ちも内嶺(ないれい)県ですけど、私は内嶺市で、ここは(そら)(みつ)市。駅と大学を往復しているだけなので、地理はさっぱりだ。

「……ソレなラ、ベストなトコロあるっスよ。隊長」

 あらまほしき先達が、身近にいてほっとした。



 空満神道において「病気」とは、「神様が我が子である人間に、自分自身を見つめなおす機会を渡している」と解釈するらしい。我が子に楽しくこの世を生きてもらうように、身体は貸すが、心は自由に使ってもよいとした。親の立場として、神様は、できれば人間には平穏に生きることを全うしておくれと思いをかけている。だが、子というものは、親の恩を忘れ、道を踏み外しもする危うい一面を持った存在である。なので、神様は御心(みこころ)を痛め、涙をのんで、我が子に生き方を考えなおしてもらおうと、外傷や内部疾患などで訴えかけるのである。では、思い通りにできる心は病まないのか、というと、そうではない。自分で好きにできるがために、他者との諍い、悲しき辛き出来事、自分への不満等々によって疲れ、痛み、傷つき、砕けることもあるのだ。

 我が子の故郷、空満の地に「(そら)(みつ)やほよろづの休み場」を設けたのは、そんな病と病にかかった人に、親身になって寄り添うためだという。体、心のほかに貧しさで困っている人もお助けしているとか。「病院」としたら、恐怖を想起させたり、気兼ねしてしまうだろうということで、「休み場」と名付けているんだって。

 ……沿革のリーフレット、これで六十周はしてるんですけど。受付(もとい、お取り次ぎ場と呼ぶらしい)の長椅子を暖めて、かれこれ二時間は経っているよ。呼び出されるまでに一時間半、そして診察中、と。外科に三人かかるのは、稀なのかな。いや、稀なのは、この格好だよね。訪れてから好奇の視線を浴びせに浴びせられているんだもの。課外活動の制服ですよ、顧問が丹精込めてこしらえたので着ているだけなんですよと弁解する舌をあいにく持っていないものでして。小さな子には魔法少女だとか、なんとかレンジャーだとか指さされるし、「(そら)(だい)って特撮同好会あったのか? すげえ爆発シーンでもしてやらかしたか」と青少年が丸聞こえのひそひそ話するし、ご老人には血気盛んな娘さん達なのねえと勘違いされるし……。恥ずかしくて薄暗い隅で座り込んでいるんだけれども、ひとりで待つのって、心細いものだっけ。

「は、早く戻ってきてくれないかなあ」

 程度が重かったんだろうか。それとも、入院しなくちゃいけないとか……? ああ、どうして悲観的になるんだ。そんなことばかり考えていると、現実に起こってしまうよ。待つ時間が長ければ長いほど、ろくでもない考えが加速していく。

「ふみちゃん、えらい待たせてもうて、ごめんやでぇ」

 診察室区画から、夕陽ちゃんが控えめに手を振ってきた。萌子ちゃんに付き添っていたのだ。その後ろに、萌子ちゃん、唯音先輩、華火ちゃんが続く。

「どうだったの?」

「ノープロブレムでシタ☆ テーピング要、あざトカ跡ハ、当分残ルっすケド、軽傷っス」

 ウインクと敬礼で、答えてみせる萌子ちゃん。傷を覆っていた物が、リボンから大判のサビオ、ガーゼに貼り替えられていたが、至って元気そうだ。

「唯音先輩と、華火ちゃんは」

「左腕、右膝、打撲、消毒のみ……です」

「……なんともねえよ、ちょいすりむいただけ」

「そ、そっか」

 仏頂面で、あまり話したくなさそうな華火ちゃん。休み場へ移動していた時も、機嫌が悪かった。先輩は、もともと口数が少ないから気にしないんだけれど。どうしたんだろう。

「ま、まあ、大した怪我じゃなくて良かったよ。診察行ってから全然帰ってこないから、不安になっちゃって」

「それがなぁ、診てもらったんはすぐやってんけど」

 萌子ちゃんを診察した先生は、なんと萌子ちゃんの実家(空満神道大教会)で、祈祷してもらい一命を取り留めた末、信者になったそうで、当時のことをしみじみと話してくださったらしい。ちなみに「与謝野・コスフィオレ・萌子」と問診票に記入しても、特に指摘されなかったみたいだ。それ、後々まずい事態にならないのかな。ものすごくお礼をされて、萌子ちゃんと夕陽ちゃんが診察室を出ると、左隣の部屋では、どでかい笑い声が聞こえるではないか。あそこには唯音先輩がいらっしゃるはず……。実は、先輩の担当医は、原子(げんし)博士(はかせ)の愛読者だったのだ。原子先生の孫娘だと分かると、迅速に治療を施して、残りは全作品についてそれらの魅せられた点を挙げるのに費やしたという。

「はなっちハ、プクーっテしテ壁ニもたレテまシタな。ハムスターが頬袋膨ラまシテる感ジっス、はな太郎っス」

「……けっ」

 いじられた本人は、腕組みするばかりだった。

「ほへー、てっキリ本名イジリで返スと思っタんスけドね」

 明日ハもッとイイ日ニなるヨね、はな太郎と出直してみるも、へっ、も、けっ、もくれず。荒んだ華火ちゃんに、萌子ちゃんは八の字眉をしていた。

「華火さん、失礼……です」

「……んだよっ」

 先輩にまで、にらみつける始末。

「せや、もうお昼時やし、ご飯にせぇへん?」

 夕陽ちゃんが、自然な風に提案した。ぎすぎすしかかった雰囲気を和らげるため、気を利かせてくれたようだ。

「ここの食堂、おいしいねんて。ねぇ、萌ちゃん」

 困り顔だった萌子ちゃんが、喜びのものに変わり「ハイ☆」と、返事する。

「破滅的にデリシャスなんデス。レッツゴーっス!」

「私も同行して可かな?」

 謎のおじさんが、女子五人に飛び入りした。背丈は男の人にしては低めだが、横幅が広くてとにかく、がたいが大きい。筋肉が詰まって肥えている感じだ。

「私は、真弓春彦(まゆみはるひこ)貴君(きみ)達が『スーパーヒロインズ!』だね」

 毛を短く残した丸刈りの、ラガーシャツを着たおじさんはこう挨拶した。なぜ、私たちを知っているんだろう。しかも、正式なサークル名ではなく、顧問が付けた愛称を。

 怪しまれているのを察したのか、真弓と名乗るおじさんはもうひと言、つけ足した。

「家内のまゆみが、世話になっています」

 左の手の甲を、私たちに見えるようすっと出した。どこまでも骨太で肉厚な指のうち、薬指にナットみたいな装飾品がはめられていた。先生も同じ箇所にされていた物だ、と思い出してから瞬時に、その意味が炸裂した。

「まゆみ先生の」「まゆみさんの……」「安達(あだ)太良(たら)まゆみの」「安達太良先生の」「まゆみセンセの」

 旦那さん、配偶者、婿、ご主人さん、夫サン。様々な呼び方があるが、真実はひとつ。

「先生、結婚されていたんだ」






内嶺(ないれい)大学で漢文を教えてはるんですかぁ。父もそこに勤めているんですよぉ」

嗚呼(ああ)、法律学科の本居先生か。奇遇だね、同僚のご令嬢が家内の生徒だったとは」

「あはは、令嬢やなんて、とんでもないですぅ」

「安達太良ハ、旧姓ナんスか。結婚シテも使エルんスねー」

「就職した時分より名乗っているからね。変更したら不都合だ、と。珍奇な名字で覚えてもらい易いし、『真弓』だと誤解が多々生じるようだ」

「真弓まゆみ、まゆみ・まゆみデスな。妻マジラブなんスね、おアツいっスよ☆」

 私は、あげをかじりながら、社交性高しの文学部二人と、おじさんを観察していた。隣には、唯音先輩と華火ちゃんが、うどんを黙々と噛んでいる。

 春彦さんがごちそうしてくださったのだが、つい、お値段が最も安いきつねうどんを頼んでしまった。好きな物をどうぞ、とされるとかえって戸惑うよね。そういう時に限って、好きな物が一番高かったりするんだよ。サバ味噌はうどんと大差なかったかも、あーあ。唯音先輩は、無難な物を選ばれたのだろう。華火ちゃんは、お家で「知らない人に食べ物をもらってはならない」ってしつけられているため、先輩がおごってあげた。結果、きつねうどん三人前なのだ。夕陽ちゃんは「えぇんですか」二回訊いた後、オムライスを。萌子ちゃんは、七〇〇円もする(最高額な献立ですよ)ガパオライスなる異国の料理を喜びいさんで頼んでいた。

「まゆみまゆみ……ですか」

「兄弟の漫才師に、似たようなやついたな」

 華火ちゃん、ひもじさを満たしたからか、喋る余裕ができたみたい。

貴君(きみ)達は、五色(ごしょく)五人女(ごにんおんな)だよ」

 柔道着が似合いそうなおじさんの口から、聞き覚えのある題名が転がった。

陸奥(みちのく)ゆめさんの小説にも、ありましたねぇ。うち、中学一年生の時に読みました」

「ソレ、萌子がスキなストーリーっスよ!」

「お祖父さんの、形見……」

「姉ちゃんに読み聞かせてもらってたぞ」

「か、借りっぱなしになるくらい夢中になってます」

 五人女が、疑問符を浮かばせた表情で見つめあった。そんな様子を、春彦さんは悲しげに微笑んでいた。

(けだ)し、赤美(あかみ)青奈(あおな)緑子(みどりこ)黄代(きよ)桃佳(ももか)だ。家内の筆が、『スーパーヒロインズ!』を繋いだんだね」

「まゆみ先生が『五色五人女(ごしょくごにんおんな)』の……? え、ええ」

(おう)()れは十二年前、まゆみが執筆した処女作だよ」

 昨日までは、空満大学文学部日本文学国語学科の上代文学専門の教員、日本文学課外研究部隊の顧問の二つの顔しか、知らなかった。それが、人の道に背くような過ちを犯した、特別な力を持っている、真弓さんの家に嫁いでいた、作家の陸奥ゆめだった、と立て続けに正体が明らかになっていったんだ。正直、消化不良を起こしている。新刊の本を複数、並行して読まされているみたいな心地がするよ。

 上に視線を移し、瞬時に戻すと、春彦さんはお冷やを飲み干した。

「……面会時間だ。行こう」

 基本、面会を許されるのは家族なのだが、生徒も加わっていいのだろうか。ここは、ご厚意をありがたく頂戴するべきなのだろう。併せてふみかの直感も、はたらく。今、春彦さんをひとりにさせては、だめだ。頑丈な背中が、そっとふれただけで、ゆるやかに崩れてしまいそうな気がして。



 たまたまなのか、まゆみ先生は「休み場」に運ばれていた。個室と呼ぶのは冗談なくらい、だだっ広い部屋で、六人がお見舞いに来ても邪魔にならず、寝台をあと三台追加しても充分利用できそうだった。

 ぽつんと置かれた寝台に、ひとり眠りにつかされている。瞳は固く閉ざされて、こじ開けるには骨が折れるだろう。頬紅がさされ華やかにされていた(おもて)は、生気のほとばしりとつやが消えていた。

「原因が不明の、昏睡状態。病気とは疎遠でいたんだけどね……」

 変わり果てた伴侶を前に、うなだれる春彦さん。(のろ)われているんです、なんて真実は、この場では無作法で無神経で無責任な穢れた句になるだけだ。

 先生につけられた長さも太さもばらばらな管が、先生の魂の紐そのものに思われて寒気がした。傍らに設置された機械の箱は、計られた数値をそのままに、冷徹に、投影している。



 あらー、また気絶しちゃっていたのかしら。って、仰ってよ。


 ふふっ、あなた達が白い猪にぼろ負けしていた夢を見たわ。安心なさい。萬葉集に代行して、私が成敗してあげたわよ。って、仰ってよ。


 奇跡は起こらず、脈拍の軌跡が延々と装置に刻まれる。まゆみ先生は、深く眠り続けている。

「時折、沈思するんだ。家内には、私も家内も未だ知らぬ家内が存在しているのではないか。其の家内は、私の手には届かぬ、遙かなる者ではないか。夫でありながら……。羞恥だよ」

 淡い紅梅色の壁紙が、病室特有のおぞましさを緩和してくれているのにもかかわらず、春彦さんは総身をわななかせていた。

「私は、両親を事故で、養育していただいた伯父伯母を災害で亡くしているんだ……。まゆみだけは、不幸にさせまい、冥府には先に逝かせまいと誓った。最愛の家族を喪失するのは、もう、たくさんなんだ…………!!」

 両の手を組み、ひざまずき、声を絞る。

(あか)()君、青奈(あおな)君、緑子(みどりこ)君、黄代(きよ)君、桃佳(ももか)君。何卒(なにとぞ)……何卒、願わくは、まゆみを……まゆみを………救ってほしい。まゆみを救済し得るは、神に()かず、医師に如かず、貴君達五色(ごしょく)五人女(ごにんおんな)なんだ。まゆみを苦しめているものは、病魔に非ずなんだよ…………何卒(なにとぞ)……何卒………………!!」

「………………助けます、よ」

 望みに答えたのは、大和ふみかだった。

「…………私たちが、助けるから」

「本当に……?」

「…………………………はい」

 噛みしめるように、ふみかは返事をする。

 真弓春彦の考えは、おおむね当たっていた。まゆみは、病で伏しているのではない。白猪による(のろ)いに縛られているのだ。(のろ)いを解くことができるのは、ふみか、唯音、華火、夕陽、萌子。条件は、白猪を討つこと。白猪に勝つこと。やらなければ、まゆみは帰らぬ人になる。まゆみを永遠に失いたくない人がいる。

 なんとかしなくちゃならないんだ。春彦さんが困っているんだ。私が、やらないといけないんだ。

 ふみかは、単純な使命感に動かされていたのだった。




「ふっざっけんなっ、こんのやろうっ!!」

 華火が、ロッカーにぶちこまんばかりに、ふみかを押しつけた。更衣のために戻ってきた二〇三教室が、騒々しくなる。

「テキトーなこたぬかすんじゃねえぞ、実力差見てただろーがっ、間抜けの上に、目玉抜けてんのかってんだ!」

 赤パーカーの胸ぐらつかんで、思いっきりにらみつける華火。(こうむ)った側は、あまりの迫力に気圧され、言い返せなかった。

 機嫌は、昼食で直せるものではなかった。彼女は、はぎ取るようにヒロイン衣装を脱ぎ捨て、空満高校の制服を素早く着用したら、ずかずかとふみかへ詰め寄り、このような状況に至ったのだ。

「独断専行っ! 無為無策っ! 軽佻浮薄っ! 傲慢不遜っ……!」

 ふみかをぶつけたロッカーが、四字熟語に合わせて殴りこまれる。始めは、勢いが激しかったが、戦いでの疲労が遅れてやってきたせいか、だんだん打撃が弱まっていった。

「正真正銘の、ばかやろうっ!」

「ごめん……華火ちゃん…………」

 つぶやくような言葉に、華火はますます表情を険しくした。

「謝って済む問題じゃねえんだよっ!」

 我慢がならなくなり、ついにふみかに殴りつけようと腕を振ったところを、親戚に止められた。

「離せよっ!」

「ふみかさんは、間違っていない……です」

「なんだ、姉ちゃんはふみかの味方をするってのかよ」

「いいえ、(わたくし)が、言いたい事は」

「黙れっ! もういいっ!!」

 唯音の手を振りほどき、全速力で教室から出ていった。

「……………………」

「先輩も、すみません……」

「…………………………………………」

 波立たぬ湖のような双眸が、ふみか、扉、ふみかを見やる。数秒か一分くらい、ふみかに固定したのち、

「……です」

 自身の黒い業務用鞄と、華火のスポーツバッグを持って、粛々と退場した。

「ふみちゃん」

 地べたに座りこんでいた友人に、夕陽がパイプ椅子をすすめる。だが、しばらく立ち上がる気がおきなかったので、遠慮された。なので、夕陽はかがんで話しはじめる。

「今回、戦うんはやめといた方がえぇと思う」

「や、やめるだなんて……どうして」

「あの白い猪は、『古事記』と『日本書紀』の山の神様や。(ヤマト)(タケルノ)(ミコト)が侮って、ひどい目に遭うたん、安達太良先生の講義でも聞いたやろ」

 黒縁のメガネのつるを押し上げて、夕陽は続ける。

「『萬葉集』の野守さん、小倉百人一首のお坊さん、『徒然草』の猫又さん、『蛙合(かはづあはせ)』の蛙さん、『檸檬』の画集の塔いろいろ戦うてきたけど、山の神様はスケールが違う。下手したら命を落としてまうんやで。そやったら、他に先生の(のろ)いを解く方法、探したらえぇんやないやろか」

「そ……、そっか」

 うつむいてそれきり、ふみかはだんまりした。夕陽には、彼女の態度が拒絶なのではなく、思うところがあるがすぐには表現できずもどかしいのだと、理解していた。

「うち、萌ちゃん送っていくわ」

 腰を上げて、夕陽は椅子に置いたリュックサックを、さっと背負った。

「ほな、いこか」

 萌子を立たせてやり、彼女の荷物らしきぬいぐるみ(彼女が扮しているキャラクターとゆかりのあるモンスターを模していた。信玄袋の進化版といったところか)も携える。

「ふみセンパイ。萌子ハ戦ウっスよ」

 負傷の少女は、振り向きざまにはっきり意志を示した。

「真実ガどうデあろウト戦いマス。センセを地獄ニモ天国ニモ行カセまセン」

 とうとう、ひとりになってしまった。開けてもいない窓から、寒風が吹きわたる。パーカーのフードをかぶり、ふみかは膝を抱えた。







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