表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/144

号泣しました。

ローグレン大帝国の国境を超えてから3日後。

私たちはようやく森を抜けて辺境伯の領地へとたどり着いた。

辺境伯の屋敷まで行けたらあとはきっとなんとかなるはず!

ただ少し恐ろしいのは辺境伯は多忙のため、ほとんど王都に来ることがない。

そして私は引きこもり姫。


「偽物と思われて逆に投獄されたりして…」


「まぁ、ないとは言えないよね」


少しだけ落ち込んだ私にライラが寄り添ってくれる。

この旅の間ずっと、私の横にライラがいてくれて、数歩先をレイルが先導するという感じだった。

ちなみに団長に仕込まれた2人は、魔法がなくても結構強いらしい。

道中は私の魔法の練習で散っていった魔物たちだが、2人はあれを素手で倒すとのこと。

実は天才じゃなくて化け物なんじゃないだろうか?


「なぁ、アレが辺境伯の屋敷?」


人通りのそこそこ多い街をぬけて、一際大きなお屋敷をレイルが指さす。

王都とは全然違う街並みの外れにあるのが目的のお屋敷だ。

大きな建物に沢山の塔がくっついているような王城に比べて、辺境伯のお屋敷は横広い。

縦に大きなお城も迫力があるけれど、横に広いこのお屋敷は威圧感がある。


「ずっと天幕で生活してた私たちからしたら、すごい立派だね。掃除とか大変そう」


掃除を含めて、メイドさんたちを雇って屋敷を管理するんだよ。

ライラの感想にそう答えようとした私は目を見開いた。

辺境伯の屋敷の前に何やら行列が。

大きな黒地の馬車が中に入っていく様が見える。

うそ、どうしてここにいるの?

もうそこからはただ1人しか見えなくなって、レイルのこともライラのことも忘れて私は駆け出した。

銀色の目立つ髪を隠すために羽織っていた外套も、その帽子がズレて人の注目を集めることを気にせずに私は一直線に走る。


「なんだ貴様!止まれ!」


手前にいた兵士が私に気づいて剣を抜く。

ギリギリで私は立ち止まり大きく息を吸った。


「ラリマー!!」


大きな青毛の馬に跨る赤髪の青年。

氷のような水色と、夕日のような赤色の双眸が信じられないとばかりに見開かれた。

すぐさま彼は馬から飛び降りて駆け寄ってくる。

抜剣していた兵士も突然のことに青年の方に注目して、もう私を気にしていない。

その兵士の横をすり抜けて私は彼の広げられた胸に飛び込んだ。


「無事だったのか!!」


「ゔ、ん!でも、怖かった!うわぁぁあん」


越境までしたものの助けられて、ここに来るまでレイルとライラがいてくれて心強かった。

だからラリマーの顔を見るまでは平気だったのに、自分自身でも気づいてないくらい本当は怖かったらしい。

抱きしめられた途端、視界がぼやけて頬が濡れている。


「ラズ!?」


さらに懐かしい声がした。

黒地の馬車には金色の獅子の紋様があった。

それはこの国の王子を示す紋様である。

抱きしめてくれているラリマーと別に暖かくて大きな手が頭に伸びてきて、後ろから抱きしめられた。


「にぃさまぁ…」


涙で歪んだ視界の中に眩しい金髪が映る。

銀色の髪に、瑠璃色の瞳の私とは対象的な兄。

金色の髪に、燃える炎のような紅い瞳。

大好きな兄さまと幼なじみのラリマー。

本来なら王都にいるはずの2人がどうして辺境伯邸にいるのかは分からない。

けど、今はそんなことどうでもいい。

もう大丈夫なんだ、とほっとしてしまって、私はしばらく泣き続けていた。

ラリマーは宝石が由来です。

ラピスラズリももちろん宝石です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ