私の国は美しいです。
それから私たちはできるだけ国境から離れるため、寝る間も惜しんで歩き続けた。
丸一日歩いた頃、小高い丘の上に到達して、ようやく一息つく。
「もうすぐ夜明けだ」
レイルの言葉に顔を上げると、白み始めた空と山並みが色づいていく。
藍色から赤紫に変化していく空と、緑になっていく木々はなんとも幻想的だった。
ずっと引きこもりだった私には感動的な景色。
「わぁ、すごい、すっごく綺麗」
キラキラと輝いているような世界に興奮する私を、2人が後ろで優しい目で見ていたことを私は気づいていない。
私の住む国はこんなにも美しいところなんだ!
と改めて認識して私は疲れが吹っ飛ぶようだった。
「アピス、もう満足した?ひとまずあそこに向かおうか」
一通り景色を堪能したあと、レイルが指さしたのは森の真ん中にパックリと開いた穴。
小さな建造物が見える。
森の神様か何かを祀っている祭壇か何かだろうか?
大きな荷物はレイルが背負ってくれている。
ライラはレイルよりは少ないが、なにやら色々持っては居るみたい。
私は非常食と水筒の入った肩下げのバックのみ。
唯一の男なんだからと旅の支度をほとんどレイルに持たせたのは、あの団長さん。
かなり重そうなのに、レイルは軽々と持っている。
「そういえばレイル、昨日の魔法だよね?」
精霊術師が多い大帝国であんなに優れた魔法を扱えるのはとんでもなくすごいことなんじゃないだろうか?
魔法が盛んなエルトリンでもあんな素早く発動した魔法を見たことがない。
そもそも魔法を使う機会すらなかった私だけども。
「まぁ、あんまり連発は出来ないんだけどね」
「そうなの?」
「私とレイルは魔力量が極端に少ないから、連発すると数日寝込むはめになっちゃうの」
魔力量は人それぞれだ。
兄さまたちは多いって言ってたなぁ。
みんなどうしてるだろう。
心配、してるよね…。
「私は全然わかんないな…」
「…魔力量だけならとんでもなく多いと思うぞ」
「え!?本当!?」
「嘘ついてどうすんの」
小さな頃、小さな証明を付ける魔法を使って爆発を起こしてから、魔法の練習はしていない。
人を巻き込んで大事になったのは今でもトラウマである。
なるほど、あれは兄さまたちと同じで多すぎる魔力量をコントロール出来なかったから起きた事件だったのか。
「適性はおそらく陽属性かな」
エルトリン王国で主に言われているのが6属性である。
熱魔法。
魔力で温度を操ることが出来る魔法。
魔力を燃やして炎にしたり、逆に凍らせたりできる。
大体はどちらかが一方だけど、稀に両方をできる器用な人もいる。
流魔法。
水や風といった形の定まっていないものを操る魔法。
水を浮かせたり、風を刃のようにすることもできる。
中には人の血の流れや意識を操る人もいるとか…。
鉱魔法。
土や岩などの鉱物を自由に操ることが出来る魔法。
硬い岩を一瞬で柔らかくしたり、土を鋼のように固くすることもできる。
宝石や化石を使って自身の魔力増強や、他属性の魔法を使う人もいるらしい。
草魔法。
草花を自由自在に操ることが出来る魔法。
植物から生まれる精霊と相性がよく、動物にも好かれやすい人が多いと聞く。
エルトリン王国ではあまり見かけない。
そして陰と陽の魔法。
使い手はあまりおらず、資料もほとんど無いのが現状。
伝えられている中で最も有名なのは、陽魔法は回復系の魔法が使えること。
そして陰魔法は味方のサポートに向いているということ。
ちなみに陰魔法は攻撃特化だという噂だ。
「レイルは全属性を使えて、私は陽と草に適性が高い」
「全属性!?それに、陽ってすごい珍しい魔法だよね?2人ともすごいね!」
ライラがしれっと補足したことに驚いた。
2属性使えるだけでもすごいのに、全属性とは驚いた。
それに、珍しい陽魔法使いがここに2人もいることに驚いた。
とりあえず驚くしかできなかった。
だってたぶん、とっても珍しくて凄いことなんだと思う。
「ま、でも適性があるってだけで、魔道士並に使えるわけじゃないからそんなに言う程じゃないよ」
そっか、魔力量が少ないということは、ほとんど魔法は使えないと言っても過言じゃない。
魔力は体の源でもあるから、本当の本当に底をついてしまったら死んでしまうのだ。
だとしても全属性に適性があるなんて、世界に1人いたら良いほどの奇跡なんじゃないだろうか?
何万年に1人とかそんな確率なんじゃ…。
「実践として見せることはできないけど、使い方を教えてあげようか?道のりはまだまだあるだろうし、森だし」
「ほんと!?ぜ、是非とも教えてください!」
魔法に関してはオリジナルなので、設定が怪しいかもしれません。
気をつけます。