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ー再会と嫉妬ー

再びルベルスでっす!

「リア!」


「ルス!!」


ローズピンクの髪をひと房ひと房丁寧に巻いて、それをさらにハーフアップにした髪型は昔から変わらない。

8歳で出会って、5年前に留学のために別れた1つ歳上の婚約者。

ローゼリア・クガーネト公爵令嬢。


「お久しぶりですわ!見ない間にとても立派になりましたわね!」


「そういうリアこそとても綺麗になった。それに、公爵夫人に似てきたね。一瞬見間違えたよ」


「まぁ!お母様に似ているなんて最高級の褒め言葉ですわ」


馬車から降りて早々、令嬢らしからぬ駆け足で飛びついてきたリアを抱きしめてそのぬくもりにほっとする。

家より先にこちらへ赴いたと言うのだから嬉しさも上がるものだが、恐らく俺に会いたくて1番に来たってわけではないだろうな。


「ところでルス、ラズ姫が攫われていたと聞いたの。大丈夫なの?」


抱きついてきたそのままコソッと耳打ちされた。

あぁ、ほらやっぱり。

リアは俺の婚約者として、ラズのことを本当の妹のように可愛がってくれている。

だからこそ、今回のこの急な再会はラズのためだったのか、と少し落胆する。

可愛い妹だが、こればかしは嫉妬してしまうのも仕方ない。

リアの1番でありたい。

まだまだ小さい男だ…。


「そのことでリアに紹介したい人物が2人いる。ラズは無事だから安心して」


「無事ならそれでいいの。ふふ、貴方にそんな顔をさせるお二人とはどんな方なのか楽しみだわ」


ん?そんなに変な顔をしていただろうか?

そのまま彼女の手を引いて、北の塔へと向かった。

ローゼリアとは俺が8歳、リアが9歳の時に王太子妃候補者の1人として出会った。

候補者の中でローゼリアだけが徹底された淑女の動きをして、正直最初は完璧すぎて気持ち悪いと思っていた。

他の候補者たちは年相応にプレゼントに喜んだり、気を引こうと手作りの何かを作ってきたり、父親に言わされたらしい口説き文句のようなことを言ってきたり。

ある時それぞれの家に候補者たちと2人きりでお茶会をするということがあった。


「このお茶、すごく美味しい」


それは俺が普段城で飲んでいるものと同じ品物。

他の令嬢たちが自分の好みや無難な茶葉を使う中、少し高級で珍しいそのお茶が出てきた時は少し驚いた。

けれど、やはり完璧すぎて気持ち悪い。


「恐縮にございます」


「…1つ質問をするんだが、君は僕の婚約者として何を成したい?」


実はこの質問、他の令嬢たちにもしていた。

回答は様々。


「王太子様に一目惚れを致しました。だから、政略結婚とはいえ愛し合いたいです」

「え、えっと、その…お父様の意向で、候補者になったので、そんな大それたことを考えてはおりません…」

「もちろんお国のためになることですわ」


聞いている限り家門の令嬢としてや、遠回しに王妃の座に着きたいだけ、という回答が多かった。


「…初めはお父様に言われたからですわ。公爵家の娘としての務めだと思って」


ローゼリアは俺の事を見なかった。

ただじっと握った手を見つめていた。


「その次は、年齢としてはまだまだ子どもであらせられるというのに、すでに王太子としてのお仕事をこなされていてすごいと思いましたわ」


「それで?」


「か、簡単なお仕事だとは聞いておりましたが、仕事は仕事。それに殿下はこの婚約者選びにあまり乗り気では無い気がしましたので…」


「続けて」


「で、で、出過ぎた真似かと思いましたが、す、少しでもその、お疲れを癒したくて、いろいろ調べましたの。好みの食べ物やお茶、色など…それで、その、乗り気でないのに無理に私自身を押しても疲れさせるだけだと思い、あまり話しかけないようにしようと…」


ローゼリアはだんだんと泣きそうになっていた。

恐らく俺が身辺を調べられて気分を害したと思ったのだろう。

愛らしいドレスにシワが寄るほど力の込められた手。

罰せられると思ったのだろうか?


「ローゼリア公爵令嬢」


「は、はい…」


「僕は貴女がとても気に入った。正式な文書は後日になるが、貴女を僕の婚約者として歓迎したい」


「は、へ?」


その時今まで淑女として完璧だった彼女の素顔を見た気がして、今までの彼女からはあまりにもかけ離れた表情を見て思い切り吹き出した。

口を開けて驚いて目を張って、きょとんとした顔があまりにも可愛くて、今でも時々思い出して怒られる時がある。

仕方ないじゃないか可愛かったのだから。

家のため、国のため、殿下のためという名の自分自身のため、そう回答する者ばかりだったのに、彼女は『ルベルス王子』のために努力したというのだ。

9歳の令嬢が完璧にこなす理由がそんな可愛らしい気遣いで、気に入らないわけが無い。


「僕のことはルスと呼んで?君のことはなんと呼べばいい?」


「え、えと親しい者はみなローゼと…」


「ではリアと呼んでも構わないかい?婚約者なんだ、少し特別な呼び方がいい」


「す、好きにお呼びください…」


照れているようで耳まで真っ赤の彼女をとても愛おしいと感じた。

それからリアは僕個人にとっても、王子としての僕にとっても、とても重要な存在となっている。

5年前、王太子妃としてより多くを学ぶために、隣の隣の国へと留学に行ってしまった時は本当に悲しかった。

遠い国であり、基本的に外出不可のその学園に5年間滞在したため会うのは5年ぶり。

ラズのことを妹として心配してくれるのはとても嬉しいが、もう少し俺との再会を喜んでくれても良かったんじゃないだろうか…。


僕っ子時代のルベルスは、たぶん、かわいい男の子。

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