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正体がバレました。

団長さんの言葉に私は時が止まったように感じた。

確かに珍しい髪色だ。

大陸で1番多い髪色は茶色系。

エルトリン王国では赤色も多かったりする。

ローグレンでは黒や紺、濃い緑なども多いと聞く。


「俺はこれでも情報には強くてな。銀髪ってだけで可能性はある。エルトリン王国から来たって自供もしてくれたしな。それに、その『星の瞳』は誤魔化しようがねぇよ」


ビクリと肩を震わせた。

私はこの目のせいで危険な目に合うようになって、かなり小さい頃からお城から出たことがない。

お世話係の人たちも決まった人たちだけ。

一応前髪を伸ばして隠していて全部覆える程ではないけれど、パッと見じゃ分からないはずだ。

基本的に人と接触しないようにしていたから星の瞳を知っている人間は数少ないはずなのに。


「俺以外は気づいてねぇから安心しな。俺の目的はただ1つよ。乗るか?乗らないか?」


私が国に帰って、その後のあの二人の安全と生活を保証する。

可能だとは思う。

他意が無いならば、破格の条件だ。

国境を超えるための賭けに乗るか、乗らないか。


「お、お願いします。私が帰るお手伝いをしてください」


「おう、任せとけ。アイツらは俺の自慢の息子たちだからな!」


ニカッと笑う顔に悪意はなさそうだ。

他意があったとしても、この期を逃したら私はきっと二度と帰れない。

人を簡単に信用しちゃいけないって、兄さまにも散々言われたことだから、お互い目的のための利用だと思おう。


「ただ、聞かせてください。あの2人を私に預ける理由を、今は頼るしかないとはいえ、信用に値すると判断したわけではないんです」


前髪を少しはらって、団長さんの目をまっすぐ見る。

もしかしたらあの2人を王国に入れさえすれば、何かこの人たちにとって都合がいいことがあるのかもしれない。

私は最初からその為に誘拐されて、助けるフリして利用されるのかもしれない。

そこまでされていたら、もう私にはどうしようもないけれど。


「まぁそうだろうな。んぅん、アイツらの母親との約束なんだが、この国に置いときたくねぇんだよ」


少し驚いたのはあの2人が実のキョウダイであること。

年頃は変わらないように見えたから、双子だろうか?

確かに言われてみれば髪の色は同じ黒色で、目の色も日の出前の空のような藍色だった。


「あの2人は、なにか訳ありなんですか?」


「俺はアイツらの母親とは知り合いだが、詳しくは知らねぇんだ。ただ、精霊のそばにあまり居させないでくれ、と、この国から出てくれって頼まれただけだからなぁ…」


確かにここは精霊の国と呼ばれていて、精霊はこの国のとある場所でしか生まれないと聞いた。

この国から離れさえすれば、精霊に会う確率はぐんと減る。

だけどそもそも精霊は精霊自身が気に入った存在としか関わらないはずで、2人が精霊と関わる可能性は精霊次第だと思うのだけれど…。


「条件を出してもいいですか?」


「おうなんだい?」


「もしも2人が怪しい動きをしたと判断したら、処分は両親や兄に任せます。もしも2人が間者とかだった場合は、わかりますよね?」


助けてくれたとしても、その後に敵と判断するようなことをされたら私にも庇えない。

それを了承してくれないと預かるなんて言えない。

約束を違えるのは嫌だ。


「その条件で構いやしねぇがよ、姫さん。貴族どもの争いに巻き込まれて、アイツらが不当に裁かれるなんてことだけは防いでくれよ?」


冤罪をかけられた場合は助けろ、と。

それはもちろんなので私は頷く。

それで交渉成立となったようで、団長さんが手を差し出してくる。

口約束は証拠がない分、反故にされやすい。

団長さんが本当に悪人じゃないなら、それだけ私を信用してくれていることになる。


「よしアピス!難しい話はここまで!あとは好きなだけ飲んで食べて、帰る日に備えろ!な!」


ぐわははは、と豪快な笑い方をして団長さんは去っていった。

本当に信用してくれていると信じよう。

帰るために2人を利用させてもらう。

その代わりその恩は絶対に返さなきゃ!

そう心に決めて私は渡されたお肉にかぶりついたのだった。


フェヒターさんは2人の母親との約束を守りたかったが、この国から出る選択肢を出来ませんでした。

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