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決闘です!

部屋の前でライラを待っている間、私は顔を見られないための用意をする。

どうせだったら私も近くで見たい。

そう思って帽子の深いフード付きの外套を持ってきた。


「なにしてるんだ?」


そうしてライラを待っていると、後ろから声をかけられて飛び上がる。

私があまりにも驚いたから、相手も驚いた顔をしていた。


「ら、ラリマー!驚いたァ…」


「あぁすまん。そんなに驚くと思わなかった。なんで外套?どこ行くんだ?」


お互いにふぅ、と息を吐く。

落ち着いたところでラリマーからの質問だ。

基本外出不可の私が外に出ようとしているから、当然の疑問だろう。

そもそもラリマーは私の護衛としてここに来たんだろうし。


「レイルとライラがね!今から決闘するの!」


「決闘!?」


かくかくしかじか。

というわけなんだ!


「へぇ…あいつら剣の心得もあったのか…」


そういえばラリマーって王国一の剣士じゃなかったっけ?

氷焔の騎士っていうのは、氷の剣と焔の剣を扱うからって聞いた気がする。


「おまたせ。…なんでラリマーがいるの?」


「ラズの護衛だよ。で?訓練場に行くんだって?」


「そうだけど」


この2人が揃うと私はなんだかこの場から離れたくなる。

2人が嫌とかそんなんじゃなくて、私がおじゃま虫な気がして、遠くから見ていたくなるのだ。

何かしら喧嘩をする2人なのだが、結構一緒にいるところを見ると嫌い合ってるわけではないらしい。

それどころか、ライラは結構ラリマーを探していたりする。

最初はレイルを探しているのかと思っていたけれど、目で追っているのはだいたいラリマーだと気づいた時、私は頬が緩んで仕方なかった。


「2人とも行こ?レイルたち待ってるよ」


私と話す時とライラと話す時、ラリマーも結構違うんだよね。

もしかしてもしかしなくても、恋だったりするんだろうか?

本でこういう関係の2人のお話を読んだことがある。

すごーく当てはまっている気がするのだが、多分2人に言ったらそんなことない!て否定されそうだし。

ちなみに気づいてニヤついた時、だらしない顔ってライラに頬を抓られた。

あれも照れ隠しにしか思えない。


「あれ?レイル、誰かと闘ってる?」


「まだやんの?あ、ライラたちが来るまでって話だったから終わりね」


訓練場に着くとレイルの目の前に青年が蹲っている。

一番最初に兄さまに負けてた人だ。

なんだか、先程よりも泥だらけになっている。


「くっそ!覚えとけよ!」


悔しそうにレイルを睨みつけて、水汲み場の方へと消えていった。

なんだったんだろう?


「なんで私までやらなきゃいけないわけ?」


「よわ…んんっ、慣れた相手と思い切りやりたくてな」


何かを言い淀んだレイルが焦ったような笑いで誤魔化した。

ライラが盛大にため息を吐くと、木剣や鉄剣が刺さっている束の中から鉄剣を引き抜く。

刃は潰されている模擬戦用だけど、かなり重かったはず。


「おいおい嬢ちゃん、そっちは重いだろ?木剣にしときな」


騎士の人達がライラを止めようとするが、ライラは鉄剣を軽々と片手で持ち上げた。

そのままレイルの前へと突き進んでいく。


「さっさと終わらせる。1試合でいいでしょう?」


「まぁ、仕方ないか」


レイルがあんなに楽しそうなの初めて見た。

いつもクールな感じなのに、今日はニコニコとしている。

そんなにライラと手合わせするのが楽しみなのかな?

ちょっと羨ましい。


「嬢ちゃんがんばれー」


「兄ちゃんもほどほどになぁ!」


ガヤガヤと騎士団の声援が混じり、兄さまが2人の間に立つ。

レイルとライラが兄さまの振り上げた手に合わせて、腰を低くして柄を握る手に力を込めた。

兄さまが後ろに飛び退いて叫ぶ。


「はじめっ!!」


瞬間、その場に風が沸き起こったような錯覚。

キィィン!と高い金属音が鳴り響いて、5人分くらい空いていたはずの2人の距離が一瞬で無くなった。

2人がいた場所の地面には、蹴った足跡がくっきりと残っていてどれだけ踏み込んだのか計り知れない。


「あの体格でよくもまぁ、あんな動きできるな」


2人の動きは速すぎて目で追えない。

離れた時に止まったり、鍔迫り合いで止まったりしてる時は見えるけれど、それ以外のところでは残像のようなものしかわからない。

私の横に立つラリマーはどうやら見えているらしく、すごいと呟きを漏らしている。


「ちゃんと人間だよね…」


目で追えないスピードで戦ってるってすごすぎない?

このお城、魔法が使えない魔法がかけられているはずだから、2人の純粋な身体能力ってことだよね?

確かに数日間の旅の間、魔物と戦ったけれどこんな動きできるなんて聞いてないよ。

私が唖然としている中、ついに決着が着いた。


「はぁ…やっぱ思い切りできると、スッキリするわ」


「っ、はぁ、ちっ」


ライラが持っていた剣が後方の地面に突き刺さり、地面に倒れ込んでいるライラの顔の横にはレイルの持つ剣が突き刺さっていた。

ライラを踏まないように上に跨るレイル。

少し呼吸を整えて、立ち上がるとライラにも立ち上がるように促す手を差し出した。


「次は負けない」


すごく悔しそうなライラが立ち上がると、顔洗ってくるっと早々に去っていった。

す、すごかった、と言うのが感想だった。

むしろそれしか出てこない。

騎士のみんなも最初は茶化していたのに、今ではなにやらここがよかった、あれを真似したいなどと討論をし合っている。

2人があそこまで強いなんて私、知らなかったな…。

かくかくしかじか、て便利な言葉ですよね!

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