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ー剣術ー

今回もまたレイル視点です。

「体を動かしたい。レイル付き合え」


「え、仕事は?」


「後回しでいい」


そんな会話から、運動するための服装へと着替えて訓練場へとやってきた。

この国の掟で王子や王女は成人するまで基本的に素顔を晒しては行けないとされているらしい。

だからルベルスは目元のみの仮面をつけている。

暗殺とかを防ぐためらしいとラリマーに聞いた。

そのラリマーは北の塔へ向かっているため不在だ。

沢山の騎士たちが木剣や刃先の潰した剣を交えて己の技を磨いている。

ただ俺からすればみんな遅いな、という印象だった。

ゴテゴテと着ている制服のせいだろうか?


「王子殿下!お久しぶりじゃないですか!」


わー!と若い青年たちがわらわらと集まってきて、俺はルベルスから離される。

ま、いいか。

俺は特に参加するつもりもなかったので、脇に逸れて流れを見守る。

ふと上を見上げると、小さな小窓からラピスとライラがこちらを見ていることに気づいた。

直ぐにルベルスと新人らしき青年たちとの練習試合が組まれ、木剣を持って開始される。


「うりゃー!」


新人ということもあってか、ヘロヘロの足取りのまま隙だらけでルベルスに突っ込んで行った。

さすがにルベルスも少し拍子抜けしたのか、構えが僅かにブレて相手の木剣をたたき落としていた。

次から次へ王子と手合わせしたいと願い、俺はそれを眺めている。

眺めていて思ったのはルベルスは、王子にしては剣筋がいいということ。


「ふぅ…なぁレイル、お前ともやってみたい」


「えっ、そんな…醜態を晒すだけですよ?」


「それでいいからさ」


周りの騎士たちからすれば田舎からやってきた王子付きのヒョロっこい文官。

今のやり取りだって俺が弱すぎて王子の相手にもならない、と聞こえただろう。

ルベルスには伝わるだろうと思って、醜態なんて言葉を使ったのに了承されてしまったら、王子を侮辱してるみたいじゃないか。


「ほらやれよ。王子殿下直々のお誘いだぞ?」


一番最初にルベルスにやられた青年だった。

遠目から眺めている俺を、高みの見物をしてお高くとまっているとでも思ったんだろうなぁ。

馬鹿にしたような口元が癇に障る。

コイツあとで覚えてろよ?


「本気でいいからな」


王子の顔を立てるためにもそれなりにやって、負けた方がいいよな。

なんて思っている俺の心情を見透かしたように、ルベルスが言ってくる。

ほんと、なんでそんなやる気なんだ。

いや、やられる気…か?


「王子からかかってきてください」


団長から習った剣術は普通の剣術じゃない。

『子どもでも大人に勝てる技』と団長は常々言っていた。

今考えたら騙し討ちのような、一撃必殺のような、そういうやり方であり、相手が襲ってくることを想定しての動きだ。

一直線に王子が突っ込んできて、俺は後ろに飛んで間合いをとる。

無駄のない動きでそれに対応したルベルスが、軽く地を蹴って開いた間合いをさらに詰めてきた。


「はっ」


横凪にされた剣を跳躍で避けて、着地の時にすぐさま横に転がる。

着地した場所には一突きにしようとした剣が宙で止まっており、綺麗な動きだと思った。

それでもやはり洗練された型にハマった技なので、いくらでも予測ができる。

俺は体勢を立て直し、左足のかかとに重心を乗せた。

そうすればまた、俺が後ろに飛び退くと思うだろう?


「レイっ!?」


俺が間合いを取ると思ったルベルスがもう一度突っ込んできて、しかし俺は飛ばずにかかとを軸にして回転した。

驚いた顔のルベルスを他所に、俺はルベルスの鳩尾あたりを右膝で蹴りあげる、わけにはいかないので剣を握っていない左手でその服を掴んだ。

背中を引っ張りながら右膝で押し上げるようにルベルスの体制を崩し、無防備になったルベルスの剣を、肘と手首を最大限に活かしてたたき落とす。


「っ…」


バランスを崩したルベルスは反対側に尻もちをつき、叩き落とした剣はその剣先を半分まで地面に沈めていた。

うん、やっぱ団長より遅いと考えるだけの余裕があるな。

物足りない。


「な、何したんだ今の?」


「殿下があっさりと負けたぞ…」


「お前、あの二人の動き見えたか?」


ざわざわと周りが囁くのを他所に、俺は変に動いて不完全燃焼なのをどうにかしたいなー、と見上げた。

あ、そっかライラがいるじゃないか。

窓を見ればラピスと目が合う。


(ら・い・ら)


どこかそっぽを向いているライラのことを口パクで伝えると、伝わったらしい。

振り向いたライラは俺を見てすっごく嫌そうな顔をした。

俺は逆に伝わってにこやかに笑う。

さぁ、本気でやらせてくれよ?


団長さんは2人をかなり小さい頃から鍛えていたようです。

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