ー王子の右腕ー
ルベルス視点です!
あの騒動から半年が経過すると城の中もだいぶ落ち着いた。
俺のそばには右腕のラリマー、ではなくレイルがいる。
仕事にも随分慣れてくれて、色々と助かっている現状だ。
代わりにラリマーは妹とライラに付かせている。
「ルベルス、この領地の金額計算が合わない。月間で見るならよくある誤差かもしれないけど、過去を遡ったら2ヶ月か3ヶ月に1回同じような誤差がある」
「分かった。調べておく」
レイルとライラは森の中で育ったと聞いていたが、教えれば教えるほど吸収していくので見ていて気持ちがいい。
レイルには俺の手伝いとして計算式や領地のことを学ばせた。
ライラは貴族の関係や城内の人間関係などを教えている。
2人とも優秀としか言いようがないスピードで覚えていった。
「兄さま!今よろしいですか?」
コンコンとノックをされてラズの声が響く。
「失礼します」
簡易なドレスにエプロンとバンダナをつけて、愛らしい笑みでラズが顔を覗かせる。
その後ろには同じような格好のライラが。
今まではだいぶ甘やかしていた自覚があるが、姫としての教育も必要ということで言葉遣いや立ち振る舞いを教わっているらしい。
とりあえず言葉遣いは随分と良くなったようだ。
「ちょうど休憩しようと思っていたところだよ。レイル、君もおいで」
いつの間にかこの執務室に馴染んでいるレイルは、少し億劫そうにこちらを伺うと「これだけやる」と書類を片付け始めた。
俺も大概言われるけれど、レイルもなかなか仕事人間だな。
「ライラと一緒にクッキーを焼いたんです!お仕事で疲れてる時は甘いものがいいとお聞きしまして!」
白地のクッキーと、黒地のクッキー、そして合わさった白黒クッキーを並べられる。
1口含めば、甘くてバターやココアの香るサクサクとした食感が美味しい仕上がりだった。
「うん美味しい。いい出来だな、ライラが作ったのか?」
「む!兄さま聞いてなかったの?私とライラで作ったの!」
「うん、まだまだ付け焼き刃のようだね」
このくらいの挑発で崩れるようではまだまだダメだ。
軽いデコピンをお見舞すると、引っ掛けられたことに気づいて頬を膨らませる。
言葉遣いや立ち振る舞い、姫に求められるものはそれだけじゃない。
いずれ社交界に出ていくとなると大勢の人間に完璧を求められる。
恥をかくのは妹だ。
「ラズ、すごくタイミングは悪いけど、言うなら早くした方がいいぞ」
しれっと一緒にクッキーを摘んでいたラリマーが口を開いた。
おや、どうやらこのクッキーは俺への願いの対価らしい。
ライラと一緒にいるようになって、好奇心旺盛だったことを知ったラズは最近色んなことをしているようだ。
書棚を漁ったり、庭園を見て回って花の育てかたに興味を持ったり、そのひとつが料理だったり。
「あ、あのね兄さま、えっと…もうすぐ建国祭でしょう?今まで窓から眺めるだけで、ずっと楽しそうだなぁって、思ってて…」
膝の上でもじもじと手をこねらせ、上手く言えないらしい。
城下町にお忍びで行ってみたい。
そういう事なのは察せたが、とても許可はできる状況ではない。
「ついこの間攫われて恐ろしい目にあったのに、また危険に遭遇しにいくのか?俺はラズに甘いけれど、さすがにそれは許可できないな」
「うぅ…ですよね」
しょんぼりと肩を落とす妹に少し心が痛いけれど、もう二度とあんな思いをするのは嫌だ。
残念だが、今回は諦めてもらうしかないだろう。
「なぁルベルス、ひとつ提案があるんだが」
書類を片付け終わったレイルが1枚の紙を持って、そこに立っていた。
ライラは料理ができるタイプの野生児だったので、
ライラを含めた料理ができる女性は密かに盗賊団で
人気でした笑