誘拐されました。
お久しぶりの方も初めての方も、新連載よろしくお願い致します。
前回同様趣味全開ですので、ご了承くださいませ。
毎日更新をできるだけ心がけます(小声)
誤字脱字指摘、感想お待ちしてります!
ガタガタと床が揺れる。
体勢が悪くて息苦しいがそんなことはお構い無しだ。
ごめんなさい、兄さま。
「クソ!今日は森の調子が悪い!なんでこんなに霧が出てやがる!!」
男の叫び声にびくりと肩を震わせた。
目隠しをされていて私には耳から得られる情報しかない。
もうどれくらいこの馬車に乗せられているのだろう。
時間の感覚が狂うほど乱暴な扱いをされている。
同乗してる男たちはずっと殺気立っていて、口を開けば殴られるんじゃないかと恐くて何も言えない。
「おい、なんだあれ?」
ガタガタと揺れが激しくなったのは、彼らの口から森という言葉が増えてからだ。
恐らく通称『疑心の森』と呼ばれるミスティ大森林に入ったのだろう。
きっともう二度と兄さまたちには会えない。
こんなところまで来てしまっては、もう戻る術がない。
「クソ!クソ!クソ!ここまで来たって言うのによォ!」
「やっぱり遠回りでも森を迂回すればよかったんだ!」
「うるせぇ!さっさと金が欲しいから、この道にしたんだろうが!!」
「おい!喧嘩してる場合じゃねぇぞ!やべえ!!!」
男たちの会話が怒鳴り合いに変わったその時、下腹部がゾッとして、浮遊感に襲われる。
「ひっ」という情けない悲鳴が自分の口から漏れると、次に襲ってくるのは叩きつけられた衝撃。
腕を後ろ手に縛られているため、受け身も取れない。
そもそも目隠しをされているせいで、何が起こっているのかも分からない。
「ぅ、うぅ…」
背中から叩きつけられて呼吸が苦しい。
一緒に乗っていた物があちこちに降ってきて、膝とか頬とかも痛い。
泣きたい。
「あ、ホントだ〜!レイルの言うとおりだぁ!」
突然聞こえたのは先程の男たちとは似ても似つかない愛らしい男の子の声。
「よいっしょっと。お姉さんちょっと待ってね、今それ外してあげるね」
ゴトゴトと何かを退かすような音がしたかと思うと、手首に力が込められる。
小さくて暖かな手が手首を拘束していた布を取ってくれ、目隠しも外してくれた。
目の前に立っていたのは8歳くらいの男の子。
くすんだ金色の髪に紫の目。
愛らしい笑顔にリンゴほっぺの可愛い男の子。
「だんちょーがね、ここ通る馬車に乗ってるものを取ってこいって言ったの!それでね、レイルがねあそこにお姉さんがいるから助けてやれって!」
団長?れいる?
誰かは知らないけれど助けてくれた?
ひとまず自由になった体を起こし、横転していた馬車から滑り降りる。
辺りはやはり森の中だが、霧が深くてほとんど何も見えない。
木、3本分位までが見える。
「お姉さんこっちこっちー!」
男の子は私の手を掴んでグイグイと引っ張る。
こんな霧の中なのに迷いなく進む。
とりあえずどうしようもないのでこの子について行くしかない。
少し進むと人影が見えてきた。
「レイルー!ライラー!連れてきたよー!」
そこに居たのは私と変わらないくらいの男の子と女の子。
ちなみに私は今年で15歳になります。
さて、無表情のこの子たちは一体誰なのでしょう?
「シャンス、お疲れ様」
「混乱してるだろうけど、ひとまず俺たちと来てくれる?」
女の子がシャンスと呼びながら、私を助けてくれた男の子の頭を撫でた。
そして無表情の男の子が背を向けながらそう言う。
選択肢のない私は頷いて3人の後をついて行くことにした。
登場人物それぞれに由来を考えました。
レイルとライラには『夜』という意味があります。
シャンスには『運』という意味があります。