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こうして彼女を理解する。

料理対決前編です。

俺は下校のチャイムがなると同時に、すぐに学校を出る。彼女からのメールには先に帰っていますとだけ告げられていた。




ほんとに今朝はなんだったんだ?鷹野原は桜良を自分のパートナーだと言い出すし、桜良は桜良でずっと謝り続けるだけで、何も述べてはくれなかった。初めは二人とも寝惚けていただけだと思っていたが、鷹野原の真剣な顔や桜良の申し訳なさそうな顔を思い出すとそうは思えなかった。




よし、家に着いた。インターフォンを押す。桜良が出てきた。






『来てもらっちゃって、ごめんね。ここで話すのもなんだからとりあえず入って。』






はじめて部屋に入る。白を基調とした部屋はシンプルな机にシンプルなベッド、大きいクマのぬいぐるみという同年代の女子としては非常に物が少なく片付けられているように思えた。まあ他の女子の部屋など知らないんですけどね。




『今お茶を持ってくるから少し寛いどいて。』






『おう、わかった』




俺は短く答えると、彼女は急いで部屋を出ていく。それから何故か数十分ほど待たされて、部屋の扉が開く。




俺は言葉に詰まった。




『あんたね!まだわかってないの?桜良は私の恋人!パートナーなの!あなたに私たちの関わる隙はないの!』




『なんだよそれ!お前だってノコノコ家に入ってきやがって!桜良は俺のパートナーだ!』




扉の後ろから出てきて言う。


『楓!まだ入っちゃダメって言ったのに。はぁ…もういい。とりあえず座って話をしよう。』




=================================================




『だから、何回言えばわかるの?私と桜良は付き合ってるの!』


鷹野原は呆れたように言う






『それは俺もだ!お前こそ何回言えばわかる!話が通じないのか?』




俺は無気になって返す






『話が通じないのはあんたじゃない!この泥棒負け犬!』




なんだよそれ。猫じゃないのかよ。






『二人ともごめんね。私が悪いの二人とも好きになっちゃったからいけないんだ。本当にごめん!』




『謝らなくていいよ。それより俺はいまの状況の整理が全くつかないんだが。桜良と鷹野原はどんな関係なんだ?』






『だから、恋人同士って言ってるじゃん!』






『今は桜良に聞いてるから少し静かにしててくれ。』


俺は言い返すとまた口論が始まりそうだったので、静かに制す。






『うん。実はね、私は亮くんと付き合い始めた後にね、図書館に行ったんだ。』桜良は俺の方を直視して話し始める。




『それで、私は本を返却しようと思っていつも使ってるお気に入りのしおりを本からとろうとした時ね、何となく窓を見たら亮くんが学校から帰るのが見えたんだ。それで、亮くんに声を掛けようと思って窓を開けたら突然風が吹いてきたんだ。風が私のしおりをさらっていったの。そしたらそれが木の上に乗っかってね。最初は亮くんに取ってもらおうと思ったんだけど、私焦って本を落としちゃったから、本を拾って外を見たときはもう亮くんがいなかった。それで、自分で取りに行こうとしたとき、楓が木の下から「取ってあげる!」ってやって来たんだ。私は大丈夫って言ったのに、聞かなくてさ。楓は木を登って取ってくれたの。それが私と楓の出会い。』




彼女は至って冷静に話終えた。なるほど、理解した。それが出会いだったのか……… ん? いや待てよ。あまりに桜良が躊躇いも無く淡々と話すから超大親友の女子同士の素晴らしき出会いみたいな感じでおわってるけど、この二人恋人同士なんだよな。アブねー騙されるところだったわ。


そして俺も冷静な態度で本筋に戻す。




『でも、そっからどうなって、恋人関係になったんだ?そのままだと大親友ルートだと思うのだが?』






『それは、わたっ』 『恋に理由なんて必要ないの!』




鷹野原が話し出す。




『私達は自然とお互いが好きになっていったの!告白とかじゃなくて、そんな浅はかなものじゃなくて、互いに自ずからっていうか、無意識にっていうか、何て言えば良いかわからないけど、もっと確かなものが私たちの世界にはあったの!』






俺は鷹野原の言動に何も言葉を発することができなかった。それは恐らく俺が勝手に抱いてた「鷹野原楓の生態」と全く違っていたから。俺は彼女を凄いリア充で、人と話すのが上手で、そして俺の前だけに見せる強情な態度から裏表のある薄っぺらい薄情な人間だと思っていた。でもさっきの彼女の言動から、これは俺の勝手な推測でしかなくて、しかも甚だしい見当違いだったということを確信した。


きっと彼女は数少ない友達しかいない俺よりも人との関係を深めようとしている。広く深く。そして、それを赤裸々に桜良への恋心を語ってくれた。こんなことは脆弱な人間ができるはずがない。だから、俺も鷹野原へ訴えかけることにした。




『わかった。お前の気持ちはよく分かった。』






『じゃあ、もう桜良は私のものだから。』






『だが、』俺は空気を吸い吐き出す。








『素直に譲る気にはなれない。』






『じゃあどうするっていうの?』






俺は鷹野原の目を直視して言う。


『俺と料理で勝負しろ!!』








『え?』






『だから、俺と料理で勝負しろと言ってるんだ!本当に話が通じないぜ!』






『いや、それぐらい分かってるわよ!私が聞きたいのはあなたに料理なんかできるのってこと?』




『ふっ、なめてもらっちゃ困るぜ。俺は毎朝、自分と妹の弁当を作ってる身なんだよ!家庭的な料理はそこぞの女子には勝てる自信があるぞ!』






『そこぞの女子って私も入るのかしら?』






『ああ、勿論だ』






『随分となめた口を聞いてくれるわね!いいわ!あたしと料理で勝負よ!そして、私の前にひれ伏しなさい!』






こうして俺たちの料理対決は始まった。



通読ありがとうございます。次回の作品も楽しみにしてください。

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