表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/179

異世界転移の錬金生活409 トングと掃除道具

 農機具を充実させて、収穫シーズンを無難に乗り切りたい。

おっさんのひそかな野望の時間である。

ひそかな、という部分が超重要である。

なぜなら、カグヤさんやセオリツさんに悟られると何が起こるか。


 独りでシコシコやるのが好き、と定評があるおっさんである。

コソコソしているのが見つかり、あっという間に自分の作品が、二人のフォローで物騒なブツに変貌する。

特に今回は、トングのような、ちょっとしたお役立ち道具である。

二人の作るような物騒な逸品になる必要はないのだ。


 もちろん宇宙空間に料理用のトングやごみバサミなんか必要ない。

特にごみバサミは二人に任せておくと危険である。

宇宙に広がるデブリや放射性物質まで回収できるとか。

え、このあとどうすんの、となって絶望すること請け合いである。


 こういう機能はおっさん専用試作型モ〇ルスーツでも開発してからにしてくれ。

いや、いい過ぎた。

ごめんなさい、許してください。

作ってもらっても、多分まともに操縦できずに壊すのがオチだ。


 作る時間帯や物音に最大限気を遣い、コソコソし続けた。

その成果あって地味ながら前世でよく見たようなトングができた。

大きいものはごみバサミ、小さいものは料理用のトングである。

コソコソとごみを拾って喜んでいると、自分でもキモイなと思う。

まあでも、ちゃんとつかんで拾えるだけで喜べるのである。


 グリップはどうしよう、ごみをつかむ箇所のギザギザの角度とか。

いろいろ悩んで試作を繰り返したため、自分としてはベストといえるデキだ。

思わず自慢をしたくなり、ピクシーちゃんに見せてみた。

ピクシーちゃんはすごく感心してくれた。


 おっさんは知らなかったのだ。

ピクシーちゃんと宇宙人は、意思の疎通ができるなんて。

ズルい、宇宙人ズルい。


 あれ、いってなかったっけなどといわれて、平常心でいられる人を見てみたい。

おっさんは大人げなく、本気で泣いて怒ってしまったぞ。

みんなで慰められて、さらにみじめな思いをしたおっさんである。

おっさんの本気の涙が、たかがトングによって引き起こされた。


 それはともかく、トングは両方ともおっさんの意思が尊重された。

つまりトンデモ機能は一切盛り込まれなかった。

この道具にそんなに思い入れがあるならしょうがない。

ごみバサミは、あなたにとっては大事な道具なんですね。

ごみを拾う行為自体が意義深いし、功徳が積めるからな、といわれた。


 イヤ、そうでもないぞ。

なんか違うぞ、そういうわけじゃない。

気の毒そうな目で自分を見てくるみんなに、そんな言葉を飲み込んだ。

意思の疎通が、結局おっさんにだけ許されていない。

もちろん宇宙人ルールにより、今まで通りおっさんにはピクシーちゃんと会話する道具など与えられない。

つらい、つらすぎる。


 ちなみに料理用のトングは、カグヤさんも使いやすいと褒めてくれた。

これだけは、やってよかった、とヤニ下がった顔でおっさんは思った。

セオリツさんはかまどの火で燃えないように手を入れたい、といっていた。

折角いい出来なのに、もったいないでしょう、といってくれた。

そう、やりすぎなければ彼女はいい人なのだ。


 頑張ったわりには、自分の中にかなりのもやっと感が残った出来事だった。

ピクシーちゃんと会話したいなあ。

実際は何を考えているのか真剣に知りたいと思う。

あのピヨピヨをちゃんと理解している宇宙人が、かなりうらやましい。


 そうそう、最近知ったことがある。

シダという植物がある。

最初期に、ゼンマイを灰汁抜きして食っていたのを覚えておられるだろう。

アレである。


 宇宙人が、そもそも前世の日本人の使っているホウキはアレだ、というのだ。

アレの葉っぱ部分を毟って葉脈だけを残して乾燥し、それを束ねてククったもの。

これが我々のホウキだそうである。

知らなかったのは、おっさんだけだろうか。

宇宙人には、そのせいで相当無能呼ばわりされた。


 さっそくシダの葉っぱを採ってきて、葉脈を残して毟った。

しばらく日陰で乾燥させて、どんな塩梅か見てみた。

細い弾力のある軸のような固さのあるもの。

ホウキの素材っぽいものだった。

確かにこれをたくさん集めてくくったらホウキになりそうだ。


 竹の軸を中心にして、大量に作ったシダの葉脈を巻き付けて固定した。

固定方法に悩んだがカグヤさんやセオリツさんに手を入れられて問題なくなった。

前世の日本でよく見た、いわゆるホウキが完成した。

これは結局、使う人の物理的力が大事な道具だから、無茶な改修は必要なかった。

絶対にホウキ部分が外れないようになっているのは、さすがだが。


 ちなみに、このホウキは室内用と庭先用で便利に使われている。

例のごみバサミと合わせて、畑にも使えるらしい。

ざっとごみを払うだけで、効率がよくなるなんてことはよくある。

地味だが活躍の場は広い大事な道具となった。

おっさんは地味に活躍出来て、大変満足である。


 チリトリはどうしたかって。

正直こんなものは、開発するまでもなくダンザおやじの店に売っている。

買ってきてさっそく、カグヤさんとセオリツさんが激変させていた。

こういう時には二人とも容赦がない。

ひょっとすると宇宙人ルールというのは、おっさんに対するサービスなのか。

ちなみに、サクヤさんは土を操れるためそもそもごみを払うという概念がない。

その場にそのまま埋めればいいと思っているようである。


 今回は、小粒な発明品のみでの地味な発表会になってしまった。

宇宙人もそこまで手を入れる必要性を感じない類のものだ。

ないと困る生活必需品だから、壊れたらまた作る感じである。

こういうものこそ外に売れる気もするが売れたところで大層なことにはならない。

前世でもこの辺りは、薄利多売の典型だったと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ