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異世界転移の錬金生活407 カグヤさんがんばる

 カカオ、茶葉、ナッツ類の検索、調査パート二である。

サクヤさんにはもう行かないといわれた。

フィールドワークはめんどくさいといっていたカグヤさんがチラチラ見てくる。

どうもサクヤさんの話を聞いて、おもしろいと思ったそうだ。


 そりゃそうだよ。

農業と和食が本筋の彼女にとっては、この探索、調査は自分の趣味そのものだ。

足や腰が痛くなるのは、我慢することにしたそうだ。

ピクニックだと思って、気楽に行くことにしたらしい。

どうせその辺の植物を回収していると、あっという間に台車が満パンになる。


 困ったもんだが、おっさんはなんだかワクワクしている。

ピクシーちゃんはやっぱりついてこないみたいだ。

野菜や果物を探しに行くというのが、彼女の辞書にはないようだ。

やっぱりカグヤさんとは、全くわかりあえない感じである。


 あとね、話しかけはするけど喜んではいない感じなのだ。

カグヤさんをライバル視しているのは、間違いない気がする。

欲望でヤニ下がったおっさんの顔を見たくない、というのもあるだろう。

実際おっさんだって、こんなヤツがいたら見たくないと思うからね。


 今のこの自分の顔を見たいか、というのは永遠の命題だと思う。

もちろん世の中には自分が大好きな人も多いので、見たい人もいるだろう。

のべつ鏡を見て自分チェックに余念がないヤツも多い。

不思議とそういう人種のほうが、人生うまくいってる気もする。

まるでダメでだらしがないおっさんがいい例である。


 今の自分の顔はどんななんだろうな。

背中が煤けているんだろうし、人生に疲れた顔をしているのだろうな。

なによりキレイなオトナに欲情したキモチワルイ顔をしているだろう。

きっとバカなガキのオーラを辺りに撒き散らしているに違いない。


 見たくない。

見たら穢れそうだ。

何よりそれがわかっていて、たいして対応もしていない自分がイヤだ。

昨日は風呂に入ったんだったかな。よく洗ったっけな。

こんなことすら自分は最近思い出せなくなっている。


 そうだ、こんなことを考える自分は疲れているんだ。

今日は風呂に入って念入りに洗い早く寝よう。

そうしよう。

疲れている心当たりが多すぎる。


 いい歳したおっさんがやる仕事の分量ではなくなりつつある。

しかしこの新拠点ヨシオは、そもそもおっさんのものなのだ。

当たり前だが、維持運営していく根本的な責任がある。

泣き言や愚痴を言っている場合ではない。


 そうと決まれば、早急に出発だ。

数日でいっぱいになってしまうだろうから、そこまで構える必要もない。

例の本ワサビの群生地のように、たどり着くのも困難というわけではない。

自分は何回かに分けて回収したり、ピクシーちゃんとそこへ行って世話している。

命を削って、解毒ポーション(本ワサビ味)をゲットしている感覚がある。


 かといって、冒険者の皆さんやどるぎに積極的に広めたくはない。

ピクシーちゃんの能力による部分が大きい以上不都合が生じたら責任が取れない。

こういうものは失うときは一瞬だと思う。

環境破壊はこわいのだ。


 環境を清澄な気を保つ大変さはおっさんの日常でイヤというほど体験中である。

自分のカレー臭ですら許されないのだ。

自分の先走り汁や夢精汁など、もってのほかだ。

たまってても、自慰もできやしないのだ。


 唯一許されるのは糞尿の類の臭いだけである。

まあ、肥料として便利に活用するわけだから、穢れでは断じてない。

勝手な線引きだと思うだろうが、宇宙人がいうんだからしょうがない。

おっさんにはそもそも判断の材料がない。


 わかるのはグレゴリがここに居つかない理由だ。

ヤツがここを離れて、例の娼館に行かざるを得ない理由である。

おっさんは最近、すべてを受け入れる姿勢を保つ訓練をしている。

これは多分、ギョウというヤツなんだと思う。


 すごくテンションが高いカグヤさんを連れて、台車を森に進める。

もちろん台車には例のイスとテーブルが積んである。

それ以外はカグヤさんが欲しがる食料と飲料、おしゃれ食器やカゴ。

簡単な調理用のナイフや調味料など、ブルーシートのような敷布。

本当にピクニック気分で用意したらしい。


 ああ、そうそう、教えていないことがあった。

この台車、例によってすでにデフォのものとは別物だぞ。

おっさん強制帰還事件のあと、台車はグレゴリーズによる徹底的な改修がされた。

軽量化と堅牢性の両立と発展、サスペンションの徹底的な見直し。

素晴らしいブツがまたしても誕生し、ダンザおやじには見せられない。


 まあどうせだったら、エンジン的なものを積んで自走するようにして欲しい。

運転できる軽トラのようなものは、農業をやるうえでも必須だと思う。

しかし例によってそこは、宇宙人ルールに触れるようである。

おっさんがあくまで現地のモノのみで作って動くなら、手伝えるらしい。

厳しい、結構このルール厳しいよ。


 カグヤさんはそんな自分に今世の竹取の翁はできる、とムダに元気づけるのだ。

ちくしょう。

からくり人形さえ作れない自分には、自走する機械なんてムリだよ。

考えてみれば、クジラのひげをゼンマイにして自動で動くなんてすごすぎるだろ。


 仕組みもすごいが、動かしたいという執念がなによりすごい。

結局くだらないことを本気で実現しようとするエネルギーが大事なんだよ。

悩み抜いているうちに、どこかでクジラのひげに出会ったんだろうな。

コレだ、コレで動力が確保できる、みたいな感じで。

ダメなおっさんには、とても真似できそうにない。


 ちなみにサクヤさん同様、カグヤさんもすごかった。

見つける能力はもちろん、生育状況から遺伝子的な良し悪しまで。

木属性の最強キャラはダテではない。

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