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異世界転移の錬金生活405 解毒ポーション(本ワサビ味)

 さて、おっさんはとうとうアレに手をつけるぞ。

解毒ポーション(本ワサビ味)である。

今までの回復ポーション(苦青味)も大概だったが。

効能が高いため、味がダメな人も鼻をつまんで飲んでいるらしい。


 しかし解毒ポーション(本ワサビ味)、コイツはダメだ。

一回作ったのだが、鼻をつまめばイケるレベルじゃない。

解毒効果が発揮される前に、味で死んでしまいそうだ。

むしろコイツのほうが毒だ。

それぐらいの迫力である。


 以前前世のテレビはひどい企画が多かった。

そのひどい企画の中に結構、このワサビがらみのものがあった。

大量のそれが入った食材を食わせるものだ。

その後のリアクションを楽しもうというものだった。


 明らかに食べきれずに吐き出して、その後も苦しんでいる感じだった。

毒を食っているのと変わらないリアクションだった。

解毒ポーション(本ワサビ味)が引き起こすものは、これに近い。

味を変えなきゃ、絶対流通させたらマズイものだ。


 しかし、あのツーンと来る感じを緩和させるのは相当難しい。

今思いつくのはワインビネガーぐらいだろうか。

酢は少しは緩和してくれそうだ。

あとは砂糖やはちみつで甘味を足すとかね。


 しかし苦手な人が許容できそうなレベルにはならない。

あんまり成分を変えてしまうと解毒する力が落ちるしね。

同じように解毒作用があるモノなら大丈夫かもしれない。


 でも解毒作用のあるモノは、どれもクセが強めである。

からしがそうだし、ニンニク、クレソン、未発見の茶葉もそう。

あとはセロリ、タマネギ、トマト、リンゴ。

この辺りを混ぜたら、何とか飲めるものにならんかな。


 だんだん調味料作りのごとき発想法になった。

調味料は、少しで味わいを出せるような調整になっている。

そのままゴクゴク飲む前提では作られない。

しかしポーションはゴクゴク飲めなきゃ効能が得られない。


 このエセ野菜スムージーを解毒ポーションとして売る。

今はこの辺りが限界かもしれない。

味を工夫するしかないが、すればするほど解毒作用が失われる。

身体にいいのは明らかに、このエセ野菜スムージーの方だが。


 本ワサビが解毒ポーションとして優秀でも、活用は困難だ。

こういうこともある。

人類の味覚に干渉して強制的に旨さを感じさせれば可能かもしれないが。

考えておいてなんだが、すごいこわい考え方になってしまった。

自然に旨いと感じる感覚は、やっぱり大事にしたい。


 そういうわけで、結局和食の発想は正しかったというわけだ。

本ワサビは解毒したい局面で工夫して使う、醤油とともにいただく。

酢や砂糖でちょっと調整すれば、何とか苦手な人もイケる。

ムリにポーション化するのも考えものだ、という結論である。


 このエセ野菜スムージーはどるぎ公認解毒ポーション(本ワサビ味)になった。

回復ポーション(苦青味)の納入実績のおかげでもある。

おっさんは、回復ポーションの飲みやすいヤツを作ろうという思いを新たにした。

今までのように苦青味といわせていてはダメだ。


 エセ野菜スムージーのおかげで、自分の中でノウハウができた。

工夫しながら薬草向けの野菜スムージーを新たに作成して、どるぎに納入した。

効果は若干落ちるが、味は所謂野菜スムージーである。

相当驚かれたし、もっとよこせ、大量に納入しろと騒がれた。


 大量生産は難しいと断りつつ、できるだけ早く納入すると約束した。

ロートル町と新拠点ヨシオ間は、いつものピクシーちゃん飛行ルートである。

これで何往復したことやら。

このままでは身体が持たないかもしれない。


 この自分で自分の首を絞めていくスタイル、嫌いじゃない。

こうなる未来はなんとなく予測はできた。

しかし、鉄は熱いうちに打て、である。

若いうちの苦労は買ってでもしろ、なのである。


 おっさんはこの異世界では新参者の新人錬金術師だから。

血反吐を吐きながらでも、若手のように頑張る一手である。

実際は血反吐ではなく、朝飯や昼飯の未消化分だけどね。

カッコよくない感じなのが、おっさんクオリティである。


 結局ある程度の分量を作成してまた飛んだ。

ピクシーちゃんもさすがにかわいそうだと思ったのか、心配そうだった。

非常に気づかいの感じられる飛行を初めて味わった。

おかげでいつもよりは身体にダメージがなかった。


 しかしどるぎに納入したあと、ロートル町の常宿でしばらく寝込んだ。

ピクシーちゃんが心配して、ずっとついていてくれた。

おっさんには彼女の温かさが非常に救いだった。

しばらくして、やっとまともに飯が食えるようになった。


 その間彼女は飲まず食わずだと思う。

おっさんは考えてみれば、こういう彼女にしてあげられることがない。

だって彼女が何を普段食べているのかすら知らないからだ。

ひどい親鳥もいたもんである。


 しかしピクシーちゃんは体調を崩すことなく、さっと外へ行った。

久しぶりの食事に行ったと思われる。

できれば腹いっぱい食って、元気になってもらいたい。

まあ現在、彼女を倒せる豪の者はいないだろうし。


 やっと戻ってきたピクシーちゃんを見て、おっさんは悟った。

心配させてまで、ムリをしてはダメだ。

若くないのに何をムキになっていたんだ、バカだな。

おっさんには、癒しが必要なのは間違いない。

結局そのあと娼館に行って命の洗濯をした。

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