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異世界転移の錬金生活109 初料理

 自分の中で、この小魚は、ソードフィッシュとなった。

ひれに妙な光沢があり、鋭くとがっているからだ。

丹精込めて作った網をコイツで何度も破られている。

正直業腹である。


 ただ、この小魚が嫌いかというと、逆である。

むしろここまで対戦を盛り上げてくれた同志である。

痛い目に遭わされたのだが、同時に切磋琢磨できた。

自分の中でそうとうレベルが上がっている。


 おかげでこのわなは、そうとう汎用性が高い。

いろんなところで活躍できる。

今も設置させていただいているため成果が楽しみだ。

なによりコイツは、自分のタンパク質今世第一号なのだ。


 長かった。

ここまで来るのに大変時間を使った。

しかし、無駄にはならなかった。

よかったよかった。


 しかし、わなには最も相性が悪いのが、このソードフィッシュだ。

網は、どう考えてもこういう魚には一番楽なわなだろう。

これなら、釣りのロマンを追求したほうが早かった可能性がある。

釣り針を飲み込んでしまえば、この手の小魚はすぐ釣れるだろう。


 かといって今更、釣り針を作る気にはならない。

人里に行ったら、改めて購入してみようかな。

そもそも、人里を探す努力を随分前からできていない。

そろそろ探し時ではある。


 さて、それよりもコイツの新鮮さを愛したい。

単純にさばいて内臓を取り出し、塩でも振っていただきたい。

塩かあ。文明人っぽい単語だなあ。

ないよなあ。ない。


 そもそも塩というのはソルト。

サラリー。給料。リーマンの魂。

いろんな意味でないのよ。ない。

そんなもんが潤沢だったら、こんなことになってない。


 泥川をどんどん下って海でも行くか、その辺で岩塩でも見つけるか。

しかし、自分は手っ取り早くこのタンパク質を摂取したい。

この記念すべき第一号。

できるだけ不純物は含ませず、純粋にいただきたいのだ。

今まで待ちに待った自分に対する、これはご褒美なんだから。


 結局、土器に真水をぶち込んで煮沸した。

それを、ざざっとコイツにかけて身を引き締める。

内臓は怖いのでより分けた後洗って、そのまま食った。


 まずい。

やっぱり川魚は泥臭い。

妙な光沢があり、鋭くとがっているひれに、やられそうだった。

内部から出てくる骨という新たなとげにも、やられそうだった。

いてえよ、ちくしょう。


 しかし、何というのか、うまかった。

足りない栄養が入った感じのうまさがそこにはあった。

いただきます、これでよし、そんな気がした。

もっとコイツが、わなにかかってくれると自分はうれしい。

なんだか自分は泣いていた。むせび泣いていた。


 食い終わった自分は、しばらく感情を整えた。

そのあと、コイツの骨を大事に倉庫にしまった。

陰干しして、あとで出汁にでもしよう。

出し殻は、やっぱり取っておくんだろうと思う。


 ああ、そうそう。

上でさらっと真水と書いているが、こういうことだ。

沼地で一か月近く対戦にいそしんでいた間に、雨の日もあった。

そのときはさすがに対戦を休んで、屋根の雨水を回収した。

活性炭が威力を発揮して、真水に近いものは大量に採れた。

それを煮沸して完璧を期すことにしたのである。


 知らん顔して、ちょっと文明が進んでいてゴメン。

これは自慢なので素直に受け取ってもらいたいものだ。

ちなみに、結構灰汁抜き作業も進んでいることも黙っていてゴメン。

わかってもらいたいのだが、これは自慢なので・・・。


 冗談はこれぐらいにして、冗談抜きで海を目指そうかと思う。

ここのところ、冒険をしていない。

人里探しは、これと兼任でいいような気がしている。

移動するのも難儀だが、ここに拠点はあるので安心感はある。

いつでも戻ってこれる場所があるのはいいことだ。


 出かけると決まれば、準備をしなければならない。

まず、料理ともいえないような野草の煮びたし、さっきの魚の骨。

いつもの野草を大量にもち、当然真水も水瓶で大量に。

ああ、魚のわなは回収して持ち運ぶよ、もちろん。

あとは、火打石とほつれ糸、活性炭はもちろん持っていく。

ヤリとオノは言うまでもなく、大事な武器だ。

つまりほとんどの自分の成果物を持っていくわけだ。


 結構な大荷物になっていてさすがに驚いた。

やばい、一人で抱えられる量ではすでにない。

特にやばいのが、真水がいっぱい入った水瓶だ。

持ち上がらない、無理。

運ぶ間に土器も壊してしまいそうだ。

この辺りは早々にあきらめることになった。


 魚のわなは、くるくるとヤリに巻いた。

たまたまかかっていたアイツをそのままビク内で陰干しする。

ビク、ヤリ、オノは手で持つことにした。

あとはポケットというポケットに入れこんだ。

結局あんなに作った真水、土器が生かせない。

こんなことが多い気がする。

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