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異世界転移の錬金生活320 大豆のこと

 竹細工でちょっとした料理の器を作った。

まあ、ざるそばなんかを出すようなよくあるヤツである。

小麦粉はあるので冷製パスタのようなものを作って、この器に乗せる。

雪ウサギ袋(冷蔵機能付き)に、しばらく収めて寝かせる。

めんつゆのような汁を入れた器とともにね。


 冷えた食べ物自体が珍しいので、結構受けた。

夏場に小腹がすいたぐらいのときには、これで充分である。

ただ、こういうものは娼館の料理としては微妙である。

あっちはせっかくなので高いものをというニーズがある。


 ただ、この竹細工の器は意外と喜ばれた。

へえ、竹がこんな風になるんだね、不思議だ。

やっぱりあんたは、こういう才能だけはある。

例の陶器も、みんなどうやって作ったか不思議みたい。

竹細工や漆工芸は、あの方の大事な思い出だから。


 そうそう、漆工芸に関してだが、やっぱりカブレる。

これを乗り越えると、今度は精密機械のような手仕事がいる。

何年もかけてやっと一作出来る。

非常に悠長な工芸品であり、余裕がないとムリな作業ばかりである。

やっている間、収入はどうなっていたのだろう。

食えない時期はなかったのかな。


 逆にいうと縄文時代に漆をやっていた人々は、生活に余裕があった人なんかな。

そうなると縄文時代は、想像以上に贅沢な時代だったということになるが。

少なくとも現代のようにせちがらく、毎日毎日せこせこしないと金が稼げない時代ではなかったのだろう。

いったい豊かというのは、どういう尺度でいうべきなんだろうか。


 自分はありがたいことに、マスター級の達人に直接教われるから楽だが。

カグヤさんは全くカブレたり、手がぶれたりしない。

その通りやれ、とかいわれてもムリだが、真似はできる。


 ただコツコツやっていると、わなを無心に作っていたころを思い出す。

あれも簡単ではなかった。

そのせいでつる草細工は自分の中で得意になった。

あの感覚が自分に戻ってくれば、モノになるのではないか。


 カグヤさんの褒め方がうまいので、その気になりやすい。

何年かかるかわからんが、真剣に取り組んでみようか。

日本人だから、こういうものは得意なはずだ。

コツコツこだわってきて、自分たちの文化がある。


 そうなのだ。

サクヤさんは大豆を植え始めた。

やはりコメ栽培にいきなり取り組むのではなく、段階を踏むそうだ。

意外とバリエーションが豊富なものとして大豆だそうだ。

豆腐、味噌、醤油、枝豆等、各地に様々な食べ方がある。


 なにより、おっさんの料理で気になり始めた部分がココだそうだ。

魚醤は和の文化としては違うでしょう。

真顔で言われると、そうだよねとなる。

穀物系をクリやドングリで代用している部分は、そこまで気にならない。

これは和の古層文化としてあるからよいそうだ。


 おっさんなんかより和食にこだわりが強いサクヤさんであった。

変な宇宙人だなとは思うけど、いい宇宙人だよね。

そもそも、この人が和食を創造してきたのかもしれんわけだが。

我々日本人は気づかずに宇宙由来食を伝統的に食ってきたのかもしれない。


 まあ、なにしろ適切な栽培がなされ、非常に土壌の良さを生かしたわけで。

立派すぎる枝豆がみっしりと生え、大量に収穫できた。

後でまた時期を見て、大豆を収穫した。


 この後はまた、適切すぎるアドバイスを受けながら味噌や醤油を醸造する。

買ったタルが味噌に生かされ、以前に魚醤を作ったタルも醤油ダルになった。

おっさんも今までの夢がようやくかない、感無量である。

しばらく寝かして置いたら、非常に味わい深い香りがしてくる。

数か月後、完成した試作品をみんなで試して承認をもらった。


 贅沢なシロモノである。

味噌も醤油も調味料として優秀すぎるスタッフである。

魚醤がかすむうまさである。

何より、味噌汁が飲める、醤油出汁の各種調味料がいける。

当然、娼館の料理のすべてに影響が出る。

びっくりするぐらい、日本人はこの味に由来するものばかり食べている。

よく考えると、これはこわい。


 おお、そうそう豆腐だったな。

意外とこれは簡単だった。

にがりが手に入りさえすれば、どうにかなる。

ちなみににがりは、海水から塩をとるとき自然に取れる。

素晴らしいものを作ろうとすると、茨の道だが。


 豆腐があると、作れる料理の幅も増す。

あと理由はよくわからないが、ヘルシーである。

コイツも大豆由来なのだ。

なあ、何度も言うがこわくね。


 おっさんはこわくなりながら、塩ゆでした枝豆をノンストップで食っている。

うますぎて止まらない。

アルコールの吸収を抑える作用が、枝豆にはあるそうだぞ。

実はこれがいわゆる仙豆だったといわれても、同意できるレベルだ。


 テンションがおかしいままだが、許してほしい。

和食という場合、この辺りはどうしたって攻略必須だから。

今まで見つからなかった理由は、おぼろげに理解できた。

外から持ち込む必要がある、ということだ。

こんなに使えて、そのうえ毒性もない。

十分に不思議な植物の一角だし、最強の植物の一角なんだ。


 おっさんの大豆に対する愛はともかく料理の完成度はこれでほぼ上限に達した。

料理人としての素養はそんなでもないおっさんは、これ以上は向上しないだろう。

これ以外にも、コメとかいろいろ気になる食材はあるが。

今はとりあえず、一通りの完成と見ている。

娼館への料理も、そろそろ飽きられてくるのではとひそかに心配している。

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