異世界転移の錬金生活108 魚とり
ただ、魚が食いたい。
足りていないのはこのあたりである。
釣りでもやってみるか。
釣りをやるには、えさ、釣り針、浮き、重り、糸、竿がいる。
難易度が意外と高いのである。
竿、糸、重り、えさは、工夫でどうにでもなりそうである。
今、できない気がするのはまず、釣り針、次に浮きである。
釣り針については、ただただ金属の細かい加工がいる。
あと釣り針はなくなってもダメージがないもの。
いちいち紛失するたびにきつくなるようでは、釣りをわざわざやる意義もない。
浮きについては、水に浮く程軽くて、かつ硬質の素材がいる。
素材によっては今すぐいけるが。
そして全体に言える。
魚を欺くには、水に入る部分は特に透明である必要がある。
透明は無理でも見えづらいぐらいは必要であろう。
そういう意味では、テグスがない以上は糸も厳しい。
重りは、浮きとの関係でいるものが決まる。
竿とえさは比較的自由で、いらないパターンもある。
そうだ、釣りで魚を捕る以外に、わなを仕掛ける方法もある。
これは構造を作って追い込めれば、あとは放置できる。
こっちのほうが結果楽かもしれないぞ。
ただ、泥川は結構水深があり、流れも速い。
仕組みを固定するのに難渋しそうで、かつ、流されてしまう。
沼地は逆に流れがなさ過ぎる。
仕組みを作っても追い込むのに時間がかかりそうである。
難しそうだが、考えてみる価値はあるかもしれない。
漫然と釣り針を作ったり、浮きを作ったりして時間をつぶす。
あげくうまく釣れない、釣り針をなくし落ち込む。
そういうリスクを冒したくはない。
釣りにロマンを求める人には申し訳ないことだが。
結局、穴だらけにした沼地で決定した。
わなの設置しやすさという点で、泥川より有利である。
ちなみにあけた穴は、何日かすると水で満たされている。
やはりこういう加工の容易さ、原状復帰能力は魅力である。
問題はここに魚影はないことだ。
多分いるんだろうと思うが、お目にかかったことはない。
沼地の間の部分は、どんな風に接続しているのか。
わなを仕掛けるうえで、この辺は大事かもしれない。
わなのいいところは、失敗してもそれほどダメージはないことだ。
とりあえず、つる草でもって網のようなものをこさえる。
その先に追い込むビクのようなものを木切れを組んでつくる。
網とビクのようなものをいい感じに接続する。
わなを魚のいそうな場所に設置。
この感じでとりあえず取り組んでみよう。
つる草の扱いは相当慣れてきているが、網をつくるほどではない。
細かくすればその分結び目が増える。粗ければ網にならない。
結び目が増えると重くなり、柔軟性はなくなる。
この辺の調整に何日もかかった。
バランスが何より大事だと思う。
それ以上に悩んで試作を繰り返したのが、ビクである。
ビクは木切れを組んで、一回中に入ったら出られないようにした。
それで試験的に仕掛けてみたら、問題が出た。
水がビクの外にうまく抜けていかず、まあ破裂した。
ここからは地獄である。
水は抜けて、中に入った生物は抜けない。
これがビクに求められる条件である。
沼地は水の流れがないと思っていたのは、大きな間違いである。
しかし、中に入った生物はどんなサイズなのかわからない。
そもそも見たことがないんだから、想定できていないのだ。
結果どうなったかというと、ビクのおへそは網を張った。
ある程度生物が抜けてもいいという設計である。
大きいのだけ入ってれば、そんな希望を抱いた。
結果は残酷である。まったくかかっていない。
ビクのおへそは、網が外れてしまっていた。
大きいのが入ったが、強引に網を外して出ていったか。
そもそも、大きいのはいないのか。
それさえよくわからない。
ビクのおへそ用の網は特別製で作るのは手間なのだ。
目の細かさをいろいろ試したし、その中でベストの出来だった。
また、何日もかけて網を作成し、前以上にしっかり固定した。
また、沼地の流れを考えて仕掛けた。
今度もまったくダメ。
ビクのおへそは、今度は無事だった。
これは大きいのは少なくともいないか。
網の細かさをさらに工夫するか、沼地以外を試すか。
このあたりから、試作が繰り返された。
泥川にも設置できるような頑丈なものを作る。
泥川に杭を打ち込み、固定できるような網にする。
網が柔軟性を失い始め、使いにくいため悩む。
結局、主戦場を沼地に移した。
数えきれない試作の末、ビクも完成形に達した。
網の細かさや重量もギリギリのバランスに仕上げた。
苦労の末、小魚がやっとかかった。
偏見でなければ、見たことのない小魚だった。
ピラニアのようなフォルムだなとは思ったが。
あと、ひれに妙な光沢があり鋭くとがっている。
何度か網を切り裂かれていたが、原因が分かった。




