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異世界転移の錬金生活319 吐き気との闘い

 皆さん、鳥類からお土産をもらうことがあるだろう。

上空高くから急にポトリ。

まあ、排せつ物を浴びるわけである。

駐車した車なんかだと、結構よくあるはずである。


 車をサビさせるとか傷めるとかで、すこぶる評判が悪い。

しかしおっさんは自分がそうなる日が来るとは思わなかった。

上空高くから自分の戻したものがずーーと。

申し訳ないが、迷惑とか考えている余裕は全くない。


 ひたすら自分の中の不快感と気持ち悪さに耐えるのみ。

戻すものは途中でなくなる。

気持ち悪さはなかなか収まってくれない。

涙とドロドロで、身も心もぐちゃぐちゃ。


 何日か断食しておくべきだった。

胃腸を空にしておけば、気持ち悪いだけで済む。

体力がそれで持つのかはわからないけど。

あと、戻すという行為によってスッキリする部分もある。


 ただ、驚異の半日で、ロートル町にたどり着いた。

ピクシーちゃんはやっぱり、全体性能が向上している。

ま、あと、ロートル町と新拠点ヨシオは直線距離だと大したことない。

泥川が間を隔てているため、そうとう回り道をしている。


 新しい世界が開けた瞬間である。

大げさだが、瞬間移動したかのような満足感がある。

残されたのは、限界まで体力を使い解脱しかかった哀れなおっさん。

なおも意気軒高な人間の子供姿のピクシーちゃん。


 おっさんのほうは、透明になって消えていきそうな風情である。

今なら空間転移みたいなことが、存在感の薄まりでできそうな気がする。

そのまま空中に消えてしまい、キモチワルイ想念だけがその場に残りそうだけど。

亡霊か幽霊になっても、相変わらず変態なおっさんの想念が。


 ピクシーちゃんは頑張ったねヨシヨシ、と頭をなでてくれた。

そのまま、自分の拘束具をそそくさと教わった通りに外し始める。

そうなのだ。

この拘束具、ピクシーちゃんしか外せないのだ。


 安心安全や判断力決断力等を考慮して、グレゴリーズがそうした。

自分を普段どう見ているのか、わかる瞬間である。

まあ、自分で外せるとなると自分でも何をするかわからない。

生命維持に必要なのに点滴の針を外しちゃう認知症の人と正直変わらないと思う。

それぐらい、飛んでいる間はつらい。


 拘束を解かれて二時間後、やっと頭の揺れが収まった。

そのとたんに腹が減ってくる。

そうでなくても、これから料理をして娼館に納入しないといけない。

やっとの思いで立ち上がり、ピクシーちゃんと歩いた。

申し訳ないけど、体を支えてもらって進んだ。


 宿に到着すると、ピクシーちゃんはどこかに行った。

まあ、彼女も腹が減っているのだろうと思う。

料理を必死でやり、腹を満たしながら娼館に納入した。

いつもの展開になって、久しぶりに遊んだ。


 タイムラグが相当減っているので、娼館も満足げである。

済んだ後、例の拘束具を宿できれいに洗った。

酸っぱい臭いと小便臭さが取れない気がする。

帰りもコイツのお世話になるのだ。

念入りにこの臭いと戦った。


 え、浄化の魔法でどうにでもなるのに、と帰っていわれた。

待ってくださいよ。

それ結局人類にはムリな仕様ですよね。

ああ、こういうところに宇宙人特有の甘さがあるのか。


 皆さん、巨大ロボとか高速飛空艇とか、現実はコレだぞ。

絶対まともな乗り心地ではないし、重力がまともに腹に堪えるぞ。

何度も意識が吹っ飛んだし、強烈な気分の悪さがずっと続く。

三半規管が焼き切れる感じを味わってしまったぞ。


 これは帰りも同じだ。

移動距離、移動時間の改善の代償として、おっさんの健康が犠牲に。

そう、こんなもんだ。

何でもただではないんだ。

おっさんの身体は、吐き気に殺されてしまうかもしれない。


 ピクシーちゃんには三半規管的なものがないか、あっても気分には影響しない仕様なんだろう。

そもそも現状で彼女は宇宙空間にそのまま飛び出せるのだ。

ピーキーな弓矢で魔法攻撃も自在に飛ばせる。

トンでも仕様の宙空戦闘機、それが彼女なのである。


 おっさんをそのまま拘束したまま宇宙空間に飛び出せるかどうかは、こわくて聞けない。

聞いたら最後、試してみましょうとなりそうで、心底こわい。

しかしク〇ウン、無駄死にではないぞ、的な、

溶けていくおっさんのアップと、おっさんの断末魔の声。


 ピクシーちゃんにとって好きなアイテム、おっさんにとって嫌いなアイテム。

こうして、飛行用拘束具は爆誕した。

まあ、ピクシーちゃんにとっては、おっさんを独占できて空を散歩デートできるからね。

ほんと飛行用拘束具をちょっと取り出すだけで、すごい笑顔になってスリスリしてくるから間違いない。


 くそー。

実はおっさんはニュー〇イプで、宙空機の操縦だけは適正値Aランク。

こういう展開を期待していたのに。

まあ、ご多分に漏れずオールド〇イプで適正値は圏外。

全くもって意外性のない、やっぱりダメなガキだった。

これから訓練を積んで、この吐き気を何とかしたい。


 ただなあ、往復一日でこなせるのは非常に魅力だ。

今まで二週間はかかっていた道のりなんだ。

こういうショートカットは、身体に負担がなければ非常にすばらしい。

ちなみに、拘束を解かれると浄化の魔法が自動でかかるようになった。

宇宙人にしても、おっさんの体液まみれは穢れでイヤらしい。

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