表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/179

異世界転移の錬金生活107 土器づくり

 ただ、肉が食いたい。

足りていないのはこのあたりである。

最近、気持ちに余裕が出てきたのか。

最初のころとは反対の不満ができつつある。

動物のたぐいが、魔物も含めとんと見当たらない。

正直、小動物の類がいないと、食肉の類が貧しくなる。


 当初からそういうたぐいの問題を抱えていたら、命の危険があったと思う。

そういう意味では贅沢な悩みの類なのだが、ヤリの出番がなさすぎる。

わけのわからん生物と戦って殺したいとは思わない。

動物死体の解体がしたいとも思わない。

しかし、これを乗り越えた先にある成果物には興味がある。


 現代人というのは、思っていた以上に勝手なものだ。

知らないところで、誰かがそうしたニーズに答え続けているのである。

いや、報酬があるから頑張れているのだろうが。

しかし、嫌なことであるには違いないだろう。


 さあ、粘土探しの続きに、出かけよう。

考えるほどに今足りないものである。

土器を作るために必要な道具もいるが、まずは粘土である。

食肉問題は、考えても解決しない問題である。


 粘土は沼地にはないのだろうか。

森の土を掘り返したほうが、まだしも発見できるのか。

このあたりの地質はそもそもどうなっているのだろう。

闇雲に掘っても、出ないのかもしれない。


 いろいろ考えながら、掘ることよりも地質を見ていくようにした。

森の中にも入った。

燃えて土がやや変色している部分などをよく見ていった。

ガラス質の素材が発見できた。

注意深くそのあたりを掘り返し、しっかり回収した。


 意外と、森の一部に火が入ったのは、僥倖だった。

燃える前は、下草の土部分は見られなかった。

それが燃えてむき出しになっている。

何なら土にも火が入って、化学反応を起こしているのがわかる。


 粘土がすでに土器様になっている場所もこれなら探せそうだ。

そういう意味では、踏んだ時に固い感じだったら要注意である。

そうやって歩き回ったが、残念ながら見つからなかった。


 いや、正確にはそうではない。

ガラス質の素材が気になって探索どころではなくなった。

このガラス質の素材は今の自分には貴重である。

何を作るかで結構運命が変わるだろう。


 コップでも作るか。

水をためておけるぞ。煮沸もできるかも。

ポーション作成用の器にしてもよい。


 なんにしろ、まず溶かして成形しなければならない。

高温のかまど、炉が必須である。

成形するには、空気を送る鉄のパイプもいるだろう。

土で型どりして、流し込み成形もありではあるが。


 しかし、課題がまた出てきてしまった。

特に高温のかまど、炉なんてどう作ろうか。

鉄のパイプなんて、どうにもならん。

溶かしたはいいが、成形できない。素材を無駄にした。

こういう展開にはしたくない。


 結局、このガラス質の素材は、厳重保管とあいなった。

せめて、不純物を分けるぐらいはしたいが。

道具類に非常な手薄さを感じる今日この頃である。


 腹が立った。

だから、箸やヘラなど、調理に必要そうな道具類を作った。

ヤリの穂先で削りこめば、木材など余裕である。

自分も言うようになったものである。


 かまど、炉は、ピザ窯のようなものを作ってみよう。

沼地を掘り返した土で、結構しっかり固めながら。

何で土で作っているかって。

石を岩山から切り出してくる、なんてことはできないからだ。


 結局そうとう大ぶりなつき山ができた。

それをしっかり乾燥させてあとで上部と横から穴を掘ろう。

この土の中で火を焚き、うまく化学反応して硬質化してくれれば。

いい感じのかまどができるだろう。


 ああ、このかまどは乾燥したいわけだから、屋根をつけるよ。

雨でも降られて泥に戻られたら、拠点がそうとう厄介なことになる。

そうとう大き目な屋根を作り、上部に立てかけて設置した。

これで、隣の灰汁抜き穴もふさぐように設置している。

これは一時的な措置なので、活性炭は設置しない。


 結果としてこの屋根は台所の屋根になった。

のちに、当初の予定通り、上部と横に穴を掘ってつなげる。

中で火を焚き、かまどの土を硬質化させた。

結果として、ちゃんとかまどになった。

日々の煮炊きに便利に使っている。


 ちなみに、あんなに悩みぬいた粘土である。

沼地を突っ切って泥川に出てみたら、すぐに見つかった。

掘り返すのがちょっと危ないのだが、この時はあわてて掘り返した。

こうして喜び勇んで、粘土様を必死にお連れいたしました。


 土器づくりもそんなに苦労はなかった。

コップ、茶わん、平皿、深皿、小皿。

これを大量に作って、かまどの火の中に放り込んだ。

火を絶やさないように、三日ぐらい寝ずに見張った。

日本人にはそういう才能があるのかもしれない。

そう思うぐらい、ちゃんとした土器ができた。

真水をためておく器なんかも、設置済みである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ