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異世界転移の錬金生活306 乳製品

 しかし、自分が死んだあとそんなことが前世の世界を襲っていたのか。

余りにもバカな結末といわざるを得ない。

確かに直前に死んでこの世界に飛ばされた自分のリアルラックは宝くじ並みだ。

他の人は文字通りの全滅なのか。

そうなんだろうな。


 グレゴリから重ねて聞かれたことに答えつつ、自分の心を整理した。

よくある異世界モノでは、地球へ戻ることが動機になっているものが多い。

そもそも自殺を選んだおっさんには、そういった動機が全くない。

帰るところもなくなったと聞かされても、実はさほど状況は変わっていないのだ。


 おっさんは日々の生活を今まで通り頑張るだけだ。

グレゴリにもそういって、今後も変わらず協力してくれ、といった。

グレゴリはちょっと笑って、もちろんだ、といった。

コイツは本当にいいヤツだと思う。


 ニギハヤヒという本名だがやはり人前でやたら呼び掛けられるのは困るそうだ。

グレゴリで定着しているんだから当然である。

残りのメンバーについても、人前ではグレゴリと呼べ、と強要された。

グレゴリは男の名前じゃないのかといったら、そんなことはどうでもいいそうだ。


 正直、あんまり色気もへったくれもない。

なんだあ、早くもてこ入れなのか。

この話は改善が必要な感じか。

娼館でもこの手の演出じゃなかったか。


 しかし四天王なら一人足りないぞ。

この後最強の四天王最後の一人が控えている流れなのか。

さっきまで深刻かつどうしようもない話をしていただけに、気が抜ける。


 気づいたことがあったらいつでもいえ、といわれて別れた。

おっさんは、これ以上何も教えられそうにないのだが。

大統領とか政治家とか、もっと偉い人に聞けよ、とは思った。

神様にはこういう細かいことはよくわかっていないんだろうな。


 お、そうそう料理熱は一段落といったな。

実は大変な勘違いをしていた。

乳製品である。

ヨーグルト、チーズ、バター。

ホワイトソースを作りながら、ちょっと考えていた気がする。


 洋風料理といいつつ微妙な味わいになる理由がこの辺りなんだ。

酪とよばれるこの辺りは、多分牧畜をやっている誰かが作っていると思う。

今のところは、おやじのギョーブ系列店でも見かけない。

贅沢品扱いになっている可能性が高い。


 例のいけ好かない兄ちゃんに頼むか、自分で作る。

どうするかな。

最近付き合いができたため、なんとなく頼んだほうがいい気がする。

結構な金額を毟られるんだろうけどね。


 ナツメグの恨みは忘れていない。

正直アレ知っていただろ。

渡すのを忘れたというレベルでなく、わざと知らん顔していただろ。

やっぱり贅沢品を扱うような商人はやさしくない。


 だが日本の味を再現しようとすると、贅沢品だろうが使うしかない。

結局例の兄ちゃんと会うしかなかった。

たっぷりと彼のこだわりを聞かされながら、高いチーズやバターを買った。

おっさんには、チーズの細かな違いなどほとんどわからない。

しかしせっかく高いチーズやバターを買うのだから理解したい。

そう思ったのが運の尽きだった。


 しかし、一から作り上げる苦労に比べたら相当楽だ。

時間を金で買ったと思えば、安いものなのかもしれない。

そんなことより、これでピザとかパスタが作れる。


 ああ、そうか小麦粉か。

まあ、ドングリの蒸し物をペースト状にして代用しよう。

多分、おやじのギョーブ系列店では売っている。

自分には手が出ない値段で。

やっぱり前世の常識に毒されて、払うことができない。

だってコメや小麦粉は安く手に入れたい。


 ピザだったら、同じ感じでいけるんじゃないか。

麺類はさすがに厳しいか、ボソボソになって切れちゃうだろう。

結局何度か試作を繰り返して、まあいけるものになった。

元がドングリとは全く思えないものになった。


 例の娼館にも持ち込んで試食してもらった。

これはみんなで食うものだから、客には出しづらい。

でも、まかないとしては優秀だよ、といっていた。

娼館のスタッフがおいしくいただきました。


 グレゴリが四人いるけど知っているか、と訊いた。

別にあの人たちはそういう組織の一員なんだろ、詮索はしない。

あんたもそんな話は人にいって回らないほうが身のためだよ。

なんだかくぎを刺されてしまった。


 娼館の人たちはそういう秘密は人には話さないようだ。

というより秘密になっているんだ、驚いた。

神様に抵抗しているようなことをいっていたから、秘密結社なんだろうな。

結構気をつけなければならないことを知ってしまった感じかな。


 でも、グレゴリに関してはこの異世界に来て最初の出会いだぞ。

いきなりややこしいものに巻き込まれたという感じなのか。

何度考えても、あんな洋風な顔をしてニギハヤヒというのはない。

グレゴリで定着している自分の石頭バカがすごい抵抗する。


 そうそうヨーグルトは残念ながらなかった。

欲しけりゃ作るしかない、と例の兄ちゃんがいっていた。

タヌキおやじと違い、製法を教えろとはいわない。

ガッついていない感じが金持ち商人らしい余裕だった。

そもそも、聞いたことがないというリアクションではなかった。

知っているけど今はない、という感じなのだ。

うまくいえないが、彼と話した後はいつもこんなもやっと感が残る。

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