異世界転移の錬金生活304 ウスターソース
丁子を使った調味料研究を今日は本気でやる。
まあ、端的にいうとウスターソースづくりである。
おっさんもご多分に漏れずソース好きである。
その割に製法はさっぱり記憶にない。
リンゴ、トマト、玉ねぎ、ニンジン、セロリ。
まず、この辺は記憶にある。
コンブ、干しシイタケ、生姜、ニンニク。
どうだったかあやしいが、隠し味である。
全部みじん切りにして、真水を加えてひたすら煮込む。
セージ、タイム、シナモン、月桂樹の葉。
この辺は野草の中からいつもチョイスしている。
からし、胡椒、山椒、丁子。
この辺は、隠し味でかつ貴重品。
メイン調味料として適宜投入。
他にも香辛料の類が足りない気はする。
塩、砂糖、魚醤、ワインビネガー。
最後は大抵の日本の調味料で最後に味を調える逸品。
このあたりで、味は決まり戻れない。
分量をこまめにメモりながら、上記を煮込みハーブを加え、最後味を調える。
ドロドロな成分を最後布で濾して完成だ。
あ、こりゃヤバイ。
泣きそうなレベルのおいしさだ。
まあ、ちょっと調味料がそれぞれすごい主張してうるさい味だが。
なにより塩味がきつい。
ちょっと保管して味をなじませようか。
結局一か月ぐらい放置した。
その間何度も新拠点ヨシオとローカル町を往復した。
そのたび味見をしては悶絶していた。
所謂味がなじむまで結構かかった。
自分はウスターソースをなめていた。
こんなに複雑な味わいだったとは。
こんなに手間がかかるとは。
正直現在の文明レベルに、こんなものを投入して大丈夫か不安になった。
まさに金持ちや貴族様にしか口に入れられない価値がある。
結局ダンザおやじのほうにはいかず、頑張って贅沢品の商人の所に行った。
相変わらずいけ好かない兄ちゃんである。
ニヤニヤ悪そうな笑みを浮かべながら、自分の持参したウスターソースをなめた。
それから、当然のようにこういった。
ナツメグが足りないね。
ま、わかっていたことだけどね。
それから奥のほうに行き、何かを持ってくる。
これがナツメグだ、これでソースは完成できる。
こういいながら、結構な金額を分捕っていった。
当然だが、自分は驚愕した。
なぜ知っている。
ソースっていったよなコイツ。
ああ、ソースはすでに贅沢品として流通しているのか。
そうだよな、そうに決まっている。
後日さっそく、このナツメグを投入してウスターソースは完成した。
もやっと感は残ったが、ここは完成できたことでよしとしよう。
ダンザおやじにしゃべるには、贅沢なハーブが多すぎる。
自分のメモってきたものを見て、軽く青ざめた。
ほぼ今まで集めてきたハーブの集大成である。
どう頑張ってもお安く納入はムリだ。
娼館で高級料理として扱わせるしかない。
しかし前世の日本の知識がなまじある分、おっさんの罪悪感は半端ない。
こんな値段でウスターソースの料理、バカじゃねえか。
しかし、娼館に自信たっぷりに高級料理といって紹介した。
おっさんも段々スレてきてしまったものだ。
娼館のボス、タマモ様も鷹揚に結構な大金を払った。
しかしウスターソースの完成度が相当ヤバイ。
しばらく、ソース中毒かってぐらいに何でもこれで味付けした。
娼館の料理も当然その影響を受けたが、文句をいうヤツはいない。
みんな泣かんばかりの勢いで、ウスターソースのかかった料理を食っていた。
例のいけ好かない兄ちゃんも泣いていたらしい。
さて、話は変わる。
一か月ウスターソースだけ作って暮らせるわけがない。
当然薬草を収穫してポーションも作った。
いろんな果実が採れたので、ブドウ酒やリンゴ酒、ウメ酒を作って納入した。
いろんなジャムも内部的には作ったけど、相変わらず外には出せない。
娼館の料理には適宜投入しているけどね。
それ以外にクリで上手に甘い菓子を作った。
目標はモンブランだけど、遠いなこれは。
ドングリは湯がいて塩味であっさりいただくのがいい。
正直、穀物系はこれでいいのではないかと思っている。
それ以外に、大根のキムチである。
意外とこれは大変だった。
ニンニク臭いのだ。
新拠点ヨシオに置いておくのもちょっとためらわれる。
持ち運ぶのも結構地獄で、ダンザおやじにもすぐバレた。
面倒なので即レシピをバラして、ギョーブ系列の八百屋で売られるようにした。
自分で作るのはもうこりごりである。
おやじもいけ好かない兄ちゃんに苦労しニンニクやからしを手に入れたみたいだ。
まあ、飛ぶように売れているようなので、報われたんじゃないか。
そんなわけで、料理熱は一応の一段落を見たわけである。
ひたすら一人で頑張ってきた成果は出たんじゃないか。
娼館の料理納入業者を降りる気はないので、今後も頑張りたい。
今後は、ひょっとしなくてもソースの需要に耐え切れるのか不安だ。




