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異世界転移の錬金生活303 クマ登場

 ロートル町のダンザおやじはその後頑張っていた。

その内に砂糖が市場に出回り始めた。

道具屋でしばらく売り、その後はギョーブ系列店で多角的に売り始めている。

いろんなところで安い値段で手に入る。


 魚醤のときと同じような状況となった。

はちみつは、ここぞというときのみ使う運用に変えた。

そうはいってもミツバチさんとの付き合いは変わらない。

定期的に新拠点ヨシオに帰る運用は変わらないと思う。


 正直まだまだ開発や研究に必要だからだ。

丁子を使った調味料研究や、キムチを漬け込む実験など。

南方系ハーブの匂いがきつめの話が多く、常宿でやるわけにはいかない。

前回いった通り、ダンザおやじがうるさいのだ。


 それ以外はクリやドングリを煮込んで味付けする方法に悩んでいる。

まあ、はちみつ入りのクリきんとんなんかは意外と作れるんだけどね。

季節的に限られる味覚なので、できるだけ大事にしたい。

なんだか料理人のような発想をしている自分に驚く。


 あと、ピクシーちゃんはやっぱり自然の子なのである。

町中に長くいるときよりも、新拠点ヨシオに帰りミツバチさんと遊んでいるときに、明らかに楽しそうにしている。

そういうときはピヨピヨいつも以上に騒いでいる。

おっさんの知らないところで大冒険をやっている可能性は高い。


 ロートル町娘のウズラさんとの間はそういう意味でも微妙だ。

ピクシーちゃんはなぜかウズラさんとは仲良くしている感じはない。

同じ鳥類だから、なんかライバル意識みたいなものが芽生えているのだろうか。

自分の目から見ると、同じ鳥類というあたりでツッコミどころがあるんだが。


 あと、エライことに気づいた。

クマだ。

ミツバチさんはクマと付き合いがあるのだ。

正確には巣箱のスライド機構を賢く入れ替えて、クマがはちみつをゲットしている所を見てしまった。

巣箱は壊さないように、太い腕を慎重に器用に動かしている。

異常に賢く人間臭い動きをするクマに、自分は茫然と見守るしかなかった。


 さすが哺乳類である。

人が考え付くことはだいたい対応してくる。

どうも入れ替え用のスライド板が減っていくからおかしいとは思っていたのだ。

まさか、クマの仕業だったとはな。


 ただ不思議と腹は立たなかった。

生きるために工夫している姿は美しいし、自分とさほど変わらん。

なめ終わった後のスライド板を返してほしいだけである。

帰るたびに作っているため、地味に面倒だから。


 クマが嬉しそうにはちみつをなめているのをみて、どうでもよくなったけどな。

もちろん、ミツバチさんは黙って何もしない。

威嚇飛行もなし。

ひょっとするとあの威嚇飛行は、自分に対するサービスだったのかもしれない。


 ふと気づくとピクシーちゃんが後ろにいて驚いた。

クマはスライド板を咥え黙って去っていった。

そのまま、ピクシーちゃんは何事もなかったように自分の肩にとまった。

ピクシーちゃんおつきのミツバチさんは巣箱に帰っていった。


 その後ピクシーちゃんはいつにも増して饒舌だった。

微妙に目を合わせずに、ピヨピヨいっている。

どうも言い訳をしている感じが濃厚に漂う。

とうとうマズイことがバレてしまった、という感じなのが実に可笑しい。


 え、ちが、ちがうのよ。そう、そうね。うーーん。


 おっさんが大笑いしたら、どう解釈したのかピクシーちゃんも笑った。

一生懸命話したから許してもらえた、と思ったのだろう。

いつにも増して、スリスリ攻撃をしてくるピクシーちゃんだった。

クマはまあピクシーちゃんに任せてしまおう、とおっさんは思った。


 あのクマの妙に人間臭い巣箱操作は、ピクシーちゃんの仕込みかもしれない。

であれば、ピクシーちゃんとクマは意思の疎通が済んでいる。

むしろ積極的な指導で、今がある感じかもしれない。

巣箱がクマの爪で傷んでいたら、注意力散漫なおっさんも流石に気づく。


 冗談抜きであのクマを味方につけると、普段の移動手段に使えそうである。

イメージとしては、クマに乗った金太郎のビジュアルである。

実際に乗って移動できるのか、背中の感じはどうなのか。

やってみないとわからん感じではあるが。


 あと、おっさんはクマにもちょっとオトナを感じたのだ。

おそらく帰った先には腹をすかせたコグマがいる気がする。

おかあさんが困っていたら、どんなことでもするよね。


 何でもします、ですからこのはちみつだけは子供たちに。


 ああ、いやだいやだ。

折角悟りを開いて解脱しそうだったのに、あの時間は何だったんだろう。

結局イヤらしいことを考えるバカな自分が戻ってきた。


 グヘヘ、クマだったら自分の相手はできそうだ、なんて、へ、変態だー。

いかん、これだけはいかんぞ。

種が違うとかではなく、こういう感じのお話はいかん。


 おっさん、たまってるからって、とんでもないこと考えるな。

うん、こういう悪者はクマに殺されればいいよ。

こういう話ならこのクマのおかあさんも戦うべきだよね。

そもそも彼女のクマ権が蹂躙されているわけで。


 でも、このかわいそうなクマのおかあさんの妄想でおっさんは元気になった。

その日の夢にも登場して、意外と優しく相手してくれた。

年甲斐もなく夢精して、非常に後味の悪い目覚めとなった。


 やっぱりいかん。

いい年のおっさんがたまっているのはいかん。

シモの後処理をしながら、情けなく思うのであった。

ピクシーちゃんは、どうかしたの、と無邪気にそんな自分を見ていた。

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