表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/179

異世界転移の錬金生活106 初の火おこし

 よくよく考えてみよう。

ゲームのゴブリンでさえ石の武器を持っている。

つまり、あの魔物はコツコツと、石を削ったり打ち合わせたりしている。

これを木の持ち手につる草を結び付けて使っている。

下手すると、自分なんかよりもよっぽど巧みに、武器を作っている。


 完全に下等だと思っていた生物に、今自分が勝てないことに気づく。

やばいな、この気づきは。

今の自分はあのゲームのゴブリン以下なのだ。

あのゴブリンの巣にあった掘立小屋は、俺が作った屋根とそんなに変わらん。

むしろ、あのゴブリンどもは、ない知恵絞って懸命に生きていやがったのだ。


 ひどい気分になった。

借金苦で自殺した自分と、ゲームの中であえなく自分にやられたゴブリン。

客観的に見て、どちらが重要な存在だろう。

自分は何をやってきたのだろうか。


 いい加減なことをやっていると、まずい。

心が落ちそうになった。

鬱っぽくなっていられるほど、今は余裕がない。


 石を本気で加工することに取り組んでみようか。

土を掘り返す能力のある石オノ的なものを作ってみよう。

まじめにやっていれば、せめてゴブリンには勝てるんじゃないか。


 なんとなく、火打石に関しては素人考えでも素材が重要な気がする。

これを探すのも結構な手間がかかるに違いない。

これをやみくもに探すより、腰を据えて石の加工にこだわろう。

方向性を決めれば、大丈夫だ。うまくやれる。


 その三日後。

しっかり時間をとったせいか、オノの石バージョンが完成した。

つる草でしっかり固定しているため、力がちゃんと伝わる。

これに相当気をよくした自分は、ヤリも石バージョンに変えてみた。

おお、これはもはやゴブリンなど怖くない。

我ながら単純だが、この三日は必死だったので許してほしい。


 石を削るのはコツがいる。

一回割ろうとしてみたが、そう簡単には割れない。

簡単に割れてしまう素材は、逆に道具としては使えない。


 素材探しをしているうちに、結果としていいものを拾った。

黒い石でそうとう固い。しかしもろく割れやすい。

これを大まかに割った後、他の石で表面を削った。

これでオノ、ヤリの穂先部分を作りこんだ。


 さて、火打石探しを再開しよう。

同時に沼地を掘り返して、粘土質の土壌を発見しよう。

道具に助けられ、どんどん開発が加速してきた。

なんとかなるもんだ。非常にうれしい。

自分にも自信が持てそうである。


 さて、実はとんでもないことに気づいてしまった。

金属などここにはないと思っていた。

金属を石にすり合わせれば、すぐに火花が散るとも。

よく考えてみてくれ、ズボンのベルトのことを。


 自分はおっさんなので、腹が出ている。

ズボンは大き目のを買ってベルトで止めている。

ベルトは金属部品がついている。

試しに例の黒い石をすり合わせてみた。

すると火花が出るではないか。

バカだ。自分は本当にバカだ。


 慌てすぎて、ベルトを外したズボンがずり落ちてしまった。

あとは、燃えやすそうな布切れか糸くずがあればいけそうだ。

その辺の乾燥したつる草でもいける。

結局、結構な苦労をしながら、炭に点火成功した。

その周りに周辺で拾った枝を組んで焚火にした。


 やべえ。文明の光だ。

これで、土器も作れそうか。

粘土が見つかればいけるではないか。

その日は、一日焚火を眺めて過ごした。

おっさんは、非常に火を見て癒されてしまった。


 さて、翌日になり、意気揚々とオノとヤリを装備している。

今度こそ沼地を掘り返して、粘土質の土壌を発見しよう。


 オノが威力を発揮してくれる。

沼地のいたるところが穴だらけになった。

粘土質の土壌は粒子が細かいため、結構かためのはずである。

ある程度掘れば有望かわかるはずなのである。

非常に思わしくない状況である。


 それと冷静に考えると。

火をおこすのに一時間、そのあとは意外と何もできずに眺めるだけ。

これでは火事をただ眺めていた、あのころと変わらん。

そしていうまでもないが、体感で結構な物資を一気に失う。

まあ、燃えさしが、そのまま炭として使えるけどね。


 水を煮沸する、野草をゆでる煮る、試作ポーションの作成。

何をするにも直火では何もできないのだ。

土器の類は必須だ。あと、箸や混ぜるヘラの類も。

あと、その土器を火中に固定しておく道具も。

つまり、かまど、炉の類である。


 あと、雨水をためておくこともできていない。

よって真水もすでにない。

ちなみに、ゼンマイのほうだが、灰汁の中から救出した。

この汁を飲む勇気はさすがにない。


 ゼンマイはかじってみたが、問題はない。

おいしいかと聞かれると、微妙としか言えない。

野草の類も、できればこの灰汁の中につけたほうが無難だろう。

あの野草は、今でも大活躍というわけである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ