異世界転移の錬金生活220 サバイバルリボーン
実は今、非常に悩ましい問題がある。
はちみつが底をついたのだ。
調子に乗って料理を娼館にまで納入するようになって、あっという間だった。
例の商人との対決を前に、はちみつを取りに行きたい。
どういう話し合いになるかわからない。
そのため、サンプルとして料理を出す可能性はある。
はちみつがないので料理できない、ではまずかろう。
しかし甘味は全面はちみつ頼りなので、必須である。
こういう話を娼館にして、とりあえず新拠点ヨシオへの旅に出た。
グレゴリや道具屋のおやじには、すでに話してある。
今回は、かわいい旅の道連れがいる。
ピヨピヨいって、飛んで自分についてくる。
ピクシーちゃんである。
ドラゴン用巣箱は、台車に乗せている。
時々この巣箱をピクシーちゃんが使っているのを知っている。
それ以外にも、最近ゲットできたいろんな文明の利器を積んでいる。
ガラス製作用の鉄パイプとかね。
そう、いよいよ例のガラス質材を使ってガラス製品を作ってみるのだ。
基本のコップあたりが妥当だろう。
それから、いよいよキノコの養殖に取り組みたい。
これこそどこでもできるし、持ち運びも容易だ。
新拠点ヨシオに帰るきっかけがなかなかなかっただけだ。
ワカ町に卸したっていいし、頑張りたい。
ちなみにウズラさんは、例の巣箱ごと置いてきた。
卵を産んでくれるには安定的な環境が必須だからだ。
扱いとしては、ミツバチさんと同じ感じである。
必要な時のみ、突然現れる宿六亭主である。
ちなみに雪ウサギ様は、どうも仏様の印象が強く、ペットにするには恐れ多い。
都合三匹も例のアイテムにしてしまったしね。
かといってペットとして飼うのは、危険も多いのだ。
自分はいいが、通りすがりの他人が無事とは限らない。
まあ、その問題は実はピクシーちゃんも同じだけどね。
ただピクシーちゃんに関しては、自分の周辺にグレゴリやミカエル君たちがいた。
頭をなでられたり、結構かわいがられていた。
他の人間に対して、即敵対する可能性は薄い。
むしろ親の前では、のほほんとしている。
ソードフィッシュやアサリはティム魔物なんだけど、自分にとって食料である。
魚介類差別だけど、ここはみんなそうなると思う。
虫やカエル、トカゲ、ヘビもやっぱり同じである。
実際は絶対に食わないけどな。
むしろここら辺まで仲間扱いしだすと、自分は生きては来られなかった。
ううむ。
こうやって見ると、結構家族的な存在が自分には増えてきている。
全部人間でない魔物の類なのがあれだけど。
正直ポーション作成だけをやる錬金術師のつもりだったのに。
ティマーとしての才能のほうが上だったのか。
自分は改めて初心を思い出すことにした。
例の薬草をしがんで、何でもどうにかしていた時代。
必死で生きるためだけに、動植物と対峙していた時代。
この二つは、実は今でも自分を支える才能となっている。
しかし、町での暮らしの中で鈍化している可能性がある。
あえて、今まで得てきた便利なものは使用しない。
森の中をさまよっていたころに使っていたものでなんとかする。
それによって初心に帰り慢心した自分を削ぎ落とそう。
こういう緊張感は、今後の交渉ごとの成功に結びつく気がする。
ただ、台車。これだけは勘弁な。
わざわざ積み込んだものを降ろして、背中にそのまま背負うって。
ムリだからね、そんなことは。
だからそう、これはあくまで自分の気持ちの問題だ。
さあ、始まりましたサバイバルリボーン。
きついです。
ちょっと後悔しています。
おっさんの体力のなさを忘れてました。
以下にやることを書きますが、細かくは忘れました。
それぐらい、昔実は大変なことをやってました。
寝る前にわなをこまめに仕掛けてソード君を捕まえる。
昼間にソード君を干物に加工。
あの薬草をこまめに採取。ポーションに加工。
枯れ枝、つる草をこまめに拾う。
かまどに火を入れる。
野草の煮びたしを塩のみで味付け。
野菜も塩で絞めて漬物化。
拠点で真水は手に入るが、いちいち煮沸必要。
お酒はオッケーとしないとつらい。
すでに妥協が見えますか。
気持ちの問題なので、おっさんの意思優先でお願いします。
死んだら何もなりません。
トンボに追い回されて消耗したことがあります。
一回わなの設置を忘れて、次の日たんぱく質がなしになりました。
枯れ枝拾いは、意識の外でやる必要があるほど大量に必要です。
ポーション作成はときどきあきらめました。
あの薬草はそのまま食っても効能が高いです。
結論を申し上げる。
初心に帰りたいなどと、ある意味簡単に自分探しをすべきでない。
進んだものは進んだのだから、豊かさを受け入れるべきだ。
ちょっとした趣向のつもりで始めたら、深い闇と沼が広がっていた。
こういうことは実はよくある。




