異世界転移の錬金生活219 頼れる娼館
さて、料理店をどうするか、の続きである。
実はあの後、娼館のボス・タマモ様に改めて呼び出された。
道具屋のおやじは、ダンザという名らしい。
あと、ギョーブとかいう組織がおやじの系列企業の証だそうな。
あんなインチキなインキン組織は潰してやりたい。
うちの店にあんたの料理を卸せないかい、高く買うよ。
初めてタマモ様に商売の話をされた気がする。
考えてみれば、娼館で料理を出すこともあるのかな。
キツネとタヌキの化かし合い。バカ試合。
こんなワードが浮かんだので素直にいったら怒った。
あたしはそんな理由じゃ動かないよ。
バカにおしでないよ。
色恋沙汰には真剣だけどさ。
こんな感じのことを真剣にいった。
結局、ムラムラしてきて娼館のお世話になった。
やっぱりおとなしくできないので、寸止め系のソラスマちゃんにお願いした。
正直に言って、もどかしさはかえってよくない。
おとなしくしたいのに、余計ダメだ。
横でうれしそうにタマモ様が煽ってくるのが、かえってダメだ。
ボクちゃんつらいねえ。そう、我慢するのね。えらいのねえ。
結局いい年をしたおっさんが、すごい勢いでお願いして触ってもらう。
ひどく無様にお願いしてイキたがる。
イカせてもらえず身もだえする。
恥も外聞もない状態が長く続き、二人の瞳が怪しく光る。
実に嬉しそう。
二人を組ませたらダメだ。どうも同じ匂いがする。
結局いつもよりたっぷりサービスされて、店を出た。
まあ、地獄のような時間がいつもより長かっただけなのだが。
しかし、逆にいうとおっさんは結構気に入られている気がする。
あんなに変態呼ばわりする癖に、こういうサービスはしてくれる。
ま、知ってるよ。
こんな感覚は盛大な勘違いである、ということは。
でも、おっさんは料理を頑張るモチベーションを得た。
しばらくして、結構真剣に娼館にまめに料理を納入するおっさんの姿が。
そして、結構な大金を手に入れて結局娼館にしけ込むおっさんの姿が。
正直何をやっているのか、と自分で思う。
まあ、色恋沙汰はこのように真剣にバカをやるのが健全だ。
娼館の方々は、自分の料理が相当レベルが高いと思っている。
自分的には、調味料がまず一味ふた味足りないし、調理法もやや微妙。
典型的な下手な男の料理なんだが、何しろ現時点で贅沢な味だ。
今はめったに高級店でも味わえない系統だとは思う。
道具屋のおやじも、娼館の料理を食べたがっている。
自分になんとか料理を作ってくれと懇願してくる。
断るのも大変だし、何しろこのおやじは押しが強い。
何回か結局料理を作る羽目になり、調理法をねだられた。
タヌキのようにでかいお腹をポンポン叩きながら、嬉しそうに貪り食っていた。
正直タマモ様のおかげで、化けダヌキにしか見えなくなった。
人間いわれてみるとそうとしか見えない、という話はよくある。
いわれないとそんな風には考えないわけだが。
よく考えなくても失礼な話なので、反省した。
そもそも女性から見て、おおむね自分も含めておっさんはタヌキなのだ。
こっちに来て過酷だったため、自分はお腹が引っ込んでしまった。
しかし、どんな動物に似てるかとなったら、タヌキだろうな結局。
だからこそ、インキン野郎だとかタヌキ野郎だとか、いわれるのはつらい。
料理屋をやるというのはあきらめて、娼館の料理の納入業者をやっている。
冒険者をやる傍らの副業としては、上等な部類だろう。
結構な現金収入になるし、結局娼館にぶち込んでいる。
地元経済に与えている影響も、結果として最小限だろう。
料理の高級店や名店を一から作るより、ずっと楽だしね。
それより、より調味料を整備したい欲望が出てきた。
胡椒、丁子、からし、生姜、ニンニク。
この手のおそらく南方系のハーブが必要だ。
この辺が揃えばおそらく調味料系は完成できる。
ただ、より贅沢品感が増すけどね。
せっかく冒険者やっているんだから、南方の遠方の町へ護衛として行ってみる。
そこで人間関係を作って、定期的に南方系のハーブを手に入れるルートを作る。
最近こんな夢を見る。
問題は、おっさんは戦闘能力が皆無で、経験値もたまっていないことだ。
護衛は冒険者の業務としてはポピュラーでも自分には困難だ。
そうでなくても、怪我したらこの手の商売は終わりなのだ。
武術の心得があって、子供のころから冒険者目指して頑張ってきたグレゴリでさえ、そうなのだ。
むしろグレゴリを護衛に南方の遠方の町へ商人として行ってみようか。
このほうが無理もないし、失敗しても命がけということはない。
おっさんであるメリットは、ムリをしないこういう慎重さだったはずだ。
今は商人ではないわけだし、真剣にやり方を考えてみようかな。
ああ、そうか。娼館で聞いてみようかな。
娼館も実際商売の一つなわけで、商慣習の中で税金納めたり経営したりしている。
ここの依頼という形なら、自分を商人にして南方への旅に出られるかもしれない。
道具屋のおやじはこういう手法は嫌がるだろう。
ちょっとやくざな方法でもできそうなのは、裏社会に通じてそうな娼館のほうだ。
話をしてみたら、ちょっと難しい顔をされた。
やっぱり商人として認められるのは、厳しいそうだ。
娼館の依頼といっても不自然な依頼はやっぱりマズイ。
南方系のハーブを手に入れたければ、娼館経由で商取引したほうが自然だ。
結局自分にとっては苦手な、贅沢品を扱う商人との取引しか残らない。
うまく言葉がつかえない自分にうまくやれるかわからない、といった。
娼館での商取引だから、自分たちもフォローできる。
あんたが一方的に損する取引は、自分たちが気をつけて潰す。
そういわれて、ちょっと勇気をもらった。




