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異世界転移の錬金生活218 料理屋について

 グレゴリやミカエル君たちに最近妙に勧められる。

料理屋をやったらどうか。

調味料や魔物素材や肉、野草、野菜、果物、酒など。

自分がため込んできた今となっては、非常に豊かである。


 宿屋や料理屋でも、ここまで充実していない。

かといって、ため込んだものはおおむね貴重品か贅沢品なのだ。

貴重品や贅沢品の組み合わせで、調味料もとても売れない代物だ。

これを組み合わせて、安く飯を食わせる名店を作る。


 ロマンである。

思いついても、前世であれば二の足を踏むような夢である。

しかしここなら、場所さえ選ばなければ可能性はある。

例えば、新拠点ヨシオでの開店だとかは、すぐにも可能だ。

ワカ町から二日の距離だから、よっぽどの名店に育てばギリギリいけそうだ。

ロートル町へは結構な距離感だけどな。


 あとはどうやって安くあげるか。

自分の納得感ももちろんあるが、それ以上に例の贅沢品を商う商人が納得しない。

料理店に対する妨害や広告合戦で消耗したくはない。

おっさんは無駄な争いには興味はない。


 そうすると、高級店に仕立てたほうが、もめないかもしれない。

しかしそうなると、こんな辺境にそんなものを設定するのは愚かしい。

それこそ高級店なら、ロートル町に設定すべきなのだ。

例の贅沢品を商う商人にも、積極的に経営に絡んでもらうべきだ。

ただ、おっさんの苦手意識を何とかしないといけない。


 あとは、スタッフの問題もある。

おっさんが自ら料理人をやるのは、いくら何でも厳しい。

オーナー、各種素材の提供者、調味料、料理法の伝授者。

できそうなのはここまでで、実際は専門スタッフを雇うべきだ。

そうでないと、各種素材を集めて仕入れるのは誰がやるのか。

今のところおっさんしかいない。


 どういう方法がスマートだろうな。

商業ギルドのような組織の話を聞かない。

税金関係や国家組織のレクチャーも受けた覚えがない。

自分の認識として、勝手に店を開くとこの手の組織が大騒ぎする。

下手すると脱税容疑をかけられ、高額な税金を課される可能性がある。

始めたばかりの店にそんな話が来れば即潰れる。


 結局この手の店経営のノウハウが自分の周辺ではわからない。

ああ、そうか。道具屋のおやじか。

税金関係や商業ギルドのルールなどの情報集めをしよう。

例の魚醤を卸しに切り替えたときの話を確認しておこう。

あれも何かトラブルでそうなったのかもしれない。


 道具屋のおやじは、普通その手の話は他人には教えない、といった。

丁稚奉公してくれる身内には親切に教えるし、勝手に覚える。

そのうちに独立したいと言い出して、のれん分けする流れだ。

何もノウハウがない人がいきなり店をやるのはムリだ。

そうじゃないかと思っていたが、この辺は封建社会だった。


 商業ギルド的な外部組織も、十分に育っているとはいえない。

国家組織の下部組織が商業的なノウハウを持っている感じだ。

税金をこういう所が取り立てるらしい。

だから、こういう人たちとの付き合いも重要だ、といった。

賄賂のような金品授受も、当たり前らしい。


 魚醤に関しては、自分も関係者だから特別だ、といって教えてくれた。

八百屋と魚屋は、道具屋ともともと仲がいい。

そのうえ魚醤を作らせた業者も、三者と付き合いが深い。

飲んでいる席でこう決めて、あとで正式に卸し契約を結んだ。

お互いに損しないいい取引だった。

結局のところ系列企業で裏ではつながっている、みたいな話だった。


 結論はこうだ。

料理屋がやりたいなら、道具屋のおやじにいえ。

経営にはがっつりからむし、人集めもやってやる。

勝手に土地や建物を確保せず、道具屋のおやじ経由で手に入れろ。

というより、いろんな調味料があるなら道具屋のおやじに教えろ。

調理法も人には教えず道具屋のおやじに教えろ。

水臭いぞ、おやじと思って頼ってくれ。


 一見非常に人情あふれる物言いだが、ノウハウを吸収する気満々である。

この辺がおやじの商売人魂なのだろう。

悪い人ではないのだが、話していて非常に疲れる。

おやじの庇護下に入って料理屋をやるというのは、きつそうだ。

以外にこの辺の店はおやじの系列企業とわかってきただけに。


 おやじの追及をかわしたい。

店をやるのが難しそうなら、そこまでする気持ちはない。

冒険者としての暮らしもある。

ポーションは相変わらずどるぎへ卸し続けている。

フリーランスの今の状態が、結局居心地がいい。

こういって、おやじには納得してもらった。


 この話をグレゴリにした。

冒険者をやめるのはとんでもない。

ポーションはかなり皆の支えになっている。

道具屋のおやじは業つく張りだから気をつけろ。

店を経営するノウハウは確かにすぐ身につくものでもない。

グレゴリは、こういって慰めてくれた。


 なんだかすっきりしない展開なので、例の娼館へ二人で行った。

前回のこともあり、おとなしくしようと決めていた。

だから、娼館のボス・タマモ様に慰めてもらうことにした。


 実は道具屋のおやじの所とこの娼館は商売敵の関係らしい。

そういうわけで、妙に意気投合したような感じで盛り上がった。

あの化けダヌキ、といって、タマモ様はニヤニヤしていた。


 いつもはひどく罵られるだけなのに、今日は妙にやさしい。

おかげで、おとなしくできなくなった。

それでも今回は黙って受け入れてくれる懐が深いボスだった。

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