異世界転移の錬金生活216 鳥の卵
正直困っている。
ピクシードラゴンに何を食わせればいいのかわからない。
つぶらな瞳でじっと見てくるかわいいヤツである。
やっぱり蝶のような羽根が気になるけど鳥である。
小さな前足が気になるけど鳥なのだ。
あと、どんな特技があるのか、さっぱりわからない。
ひょっとして初めてのかわいい系役立たずかもしれない。
ピヨピヨいっているのが実にあざとい。
飛行能力があるから完全な役立たずではないけど。
ドラゴンだから能力とかそんな細かいことはいいんだよという可能性が高い。
ああ、あと赤ちゃんのようないい匂いがする。
おっさんとしては、分類不能な感じの生き物である。
鳥類でもなく爬虫類でもなく昆虫類ではもちろんない。
前世の常識をやっぱり否定してくる感じである。
確認できないため否定していたが、幼体の時に自分の目を見ていたようだ。
つまり自分を親鳥だと思って完全に懐いている。
ミカエル君が間違いないといっていた。
そうでなくても巣箱によるティム能力で完全に身内になっているわけだが。
そういうわけで、前世でよくあるあの小鳥用タイプの巣箱は危険である。
次から次へと、こういうタイプのドラゴンがかかる可能性が高い。
いっぱい集めて人に売る商売でも考えない限り、扱いに困る可能性大である。
特に目を合わせると親鳥認定が非常に厄介である。
あと、ミカエル君が言うにはドラゴンは寿命が非常に長いそうである。
そしてこの長い寿命を支えているのが、あの白い繭による変態行動だそうだ。
あれで完全に半分生まれ変わって、若い個体になってしまうそうである。
そういう意味では昆虫系っぽい生き物である。
まあ、前世の記憶でぴったりくるものを一つ思いついているけどね。
オーラ〇トラー・ダン〇インである。バイ〇トン〇ェルである。
内臓を取り出して切り貼りしたら、あのマシンに近い物が作れるかもしれない。
当然、うちのピクシーちゃんで試す気には断じてならないが。
ああ、そうそう。
役立たず呼ばわりしているが、例のふ化後の白い繭は高級布地の原料である。
ミカエル君たちはこれを拾ったといってどるぎに持っていき、実績に変えていた。
結構お金になったのでもうしばらくピクシーちゃんを見ていたい、といっていた。
まあ、魅力的な生き物である。
さすがはドラゴンである。
自分が親鳥になってしまったため、面倒を見ている。
何を食わせればいいのかわからない。
最初の疑問に戻ってしまった。
あの幼体の時点で、勝手にどこかへ飛んでいっていた。
今も食事に困っている様子は実はない。
親鳥のように世話しているという満足感のために、食事を準備したい感じだ。
しかしこちらのそうした思惑など、もちろんピクシーちゃんにはわからない。
ある日、ミカエル君たちの一人が、偶然ピクシーちゃんを見かけた。
なんかの獲物を追いつめて、鮮やかな手口で捕獲し食事をとっていたようだ。
実は結構強いのではないか。
役立たずなふりをしているのは親の前だけかもしれない。
あと、鳥類の卵の件は覚えているだろうか。
まだあきらめてはいない。
例の巣箱は封印し、改めてちょっと素材を変えた巣箱を作成した。
確認してくれるミカエル君がいるうちに、普通の鳥類の卵をゲットしたい。
しばらく待つと、新たに小鳥がかかった。
ミカエル君に即確認してもらったが、今回は問題なさそうだ。
しばらく待てば、卵を産むんじゃないですか。
巣箱に次々生き物がかかるのが不思議です、とミカエル君は言っていた。
その後、すぐに卵を産んだため、その卵を引き上げた。
そうしたら、またすぐに卵を産んだではないか。
この動きを何度も繰り返すうちに、まとまった数の卵が手に入った。
小鳥に関しては、何とか捕まえようとしたら逃げられた。
おお、手っ取り早く目玉焼きでも作って食べよう。
魚醤をかけてカリッと焼いた目玉焼きをおいしくいただいた。
残りは、例の雪ウサギ袋(冷蔵機能付き)に保管した。
売れるほどには手に入らないが、こりゃ効率はいい。
さっそく、マヨネーズを作成した。
全卵でやったため、某社のヤツよりぼってりしている。
まあ、ひたすら混ぜる非常に大変な調味料である。
ただ、この苦労は報われるので頑張りたい。
それ以外には、肉の卵とじを作って食べた。
卵料理はこれ以外にもいろいろあるため、しばらく困らない。
あと、卵としては小さいので、何個も必要だ。
胡椒やニンニク、生姜が欲しい。
どうも、整いつつあるとますます、ないものが気になってくる。
非常に贅沢な食生活になってしまうな。
そのうちに、ミカエル君たちは資金が尽きた。
そのため、商隊の護衛をやりながらワカ町に帰っていった。
作ったばかりのマヨネーズをお礼と土産のつもりで渡した。
自分の食生活に慣れつつあったミカエル君たちは、非常に喜んでいた。
ぜひ、ワカ町に遊びに来るように言われた。
ちなみにグレゴリに関してだが、結構早くピクシーちゃんのことがばれた。
目の色を変えて怒るかと思ったが、ミカエル君たちを見てなにも言わなかった。
おっさんであるグレゴリにとって、やはりミカエル君たちは眩しいのだろう。
自分に若者の面倒を見てやるように諭した後、寂しそうに帰っていった。
ミカエル君たちは、グレゴリさんにあこがれている、といっていた。
おじさんである自分はグレゴリをあとで呼び、酒を飲ませてなんだか慰めた。
ピクシードラゴンのような未知の脅威に対して若者の力が必要だった、と訴えた。
思い切りの良さとか、固定概念のなさとか、若い力がないと不安だった。
そういったら、そうか、とだけグレゴリはいった。




