異世界転移の錬金生活213 雪ウサギ袋(冷蔵機能付き)
グレゴリはそのあと止まらなかった。
喜びを爆発させ、自分の持ち込んだワインを呷るように飲みまくった。
そして自分の作った雪ウサギの肉を使った洋風料理を食いまくった。
うまいうまい、と泣きながら貪り食っていた。
自分は雪ウサギ袋(冷蔵機能付き)をさっそく便利に使っていた。
グレゴリは所有権を全く主張するそぶりもなかった。
なぜか聞くと、当然だという顔をした。
ヤツを討伐できたのはお前のおかげだ、討伐実績もお前が得るべきだ。
今更だが、グレゴリは本当にいいヤツだと思う。
もちろん、自分には討伐実績はいらない、とグレゴリに譲った。
もちろん、自分の作った巣箱は回収した。
例の氷の魔力パワーは嘘のように消えていて、なんだか恐ろしくなった。
今まで感じたことはない、ちょっとした罪悪感が湧き上がってきた。
ある程度知性のありそうな魔法を使うような哺乳類を殺したのだ。
ティムして無抵抗だった相手をである。
自分には食欲がなかった。今夜は眠れなくなりそうだった。
グレゴリは自分の顔色を見て、こういった。
気にするな。気にしすぎるとそれに殺されるぞ。
飲んで忘れろ、抱いて忘れろ。バカみたいに騒いで忘れろ。
お前の悩みはその程度のものだ。
なんだかグレゴリも若いころそんなことを考えたことがある口ぶりだった。
そのまま、一晩中二人で飲んで騒いだ。
おっさん二人には、少し堪える行動だったが、まあ、いいだろう。
お墨付きも得たし、あとで例の娼館にも行こう、そうしよう。
グレゴリは単純に雪ウサギ袋(冷蔵機能付き)の性能に驚いていた。
なんとか自分も手に入れたいと改めて思っているようだった。
落ち着いたら、またその巣箱を仕掛けて雪ウサギ狩りをやろう、といった。
自分は、そうだな、落ち着いたらな、といった。
翌日、グレゴリと二人でどるぎへいって、雪ウサギ討伐報告をした。
まあ、雪ウサギ袋(冷蔵機能付き)という歴とした証拠品もある。
すぐに報告は終わったが、このアイテムに注目が集まった。
なんとか卸してもらえるように、どるぎに懇願された。
そりゃそうである。
素人同然の冒険者が、金持ちや貴族様が垂涎の安定した氷の魔石付きのアイテムを持っている。
そのアイテムは明らかに、今までの概念を覆す画期的商品である。
そこで冷蔵されている肉は、誰もが食した経験がほぼない雪ウサギの肉である。
全部でどんな値段が付くのか、空恐ろしい代物である。
だからこそである。
自分は売り買いを完全に拒否した。
こんなものを手に入れられると、金持ちや貴族様に知られたら。
絶対人生がハードボイルド方向に振り切れてしまう。
なろう小説みたいなノリになったら、無能なおっさんは死んでしまう。
自分はあの手の主人公みたいに、ケレン味たっぷりの演技なんかできそうにない。
情けなくヘコヘコして命乞いをしたり、許しを請うばかりだろう。
そして確実に許してはもらえないわけだ。
踏みつぶされたヒキガエルみたいな無様な死に方をしそうである。
切々とこのようなことをどるぎに訴えて許してもらった。
むしろ、雪ウサギを討伐できたこと自体を隠してくれると約束してくれた。
ただ、やっぱり内緒でどるぎに貢献せよ、といわれた。
これには、わかりました、というしかなかった。
ああ、憂さを晴らしたい。
よくよく考えると、どるぎに対して結構目に見える貢献をしたのに。
雪ウサギ討伐などという、なろう小説の主人公のような活躍をしたのに。
なんだか情けない印象しか残らない感じに収まってしまった。
そのうえ結局、どるぎに雪ウサギ袋(冷蔵機能付き)を卸さないといけない。
内緒で、という部分を強調していたので、まあ安心しているけど。
結局グレゴリと連れ立って、また雪ウサギ狩りをやる約束をして別れた。
しょうがないので例の娼館に行った。
癖になった感のあるミズキちゃんと楽しみ、カグラちゃんに癒してもらった。
娼館のボス・タマモ様に、夫婦複数プレイとかほんと変態ねえキモイ、といわれながら、店を後にした。
なんで自分の性癖が店内ではオープンになってるの。
他のお客様にはいわないから安心して、といわれても。
しばらくはいろんな意味でおとなしくしとこう。
雪ウサギ討伐はやっぱり大事件なんだと思う。
雪ウサギを上手にティムできるなんていう話は、とてもオープンにできない。
白の賢者様は、もはや白の仏様となったのだ。
だってこうなると、自分にとってはもはや哀れなウサちゃんなのだ。
冗談抜きで、日々の癒しとしてこのウサちゃんを飼ってもいい。
見た目だけならかわいいのだ。
怒らせるとカリカリ凍傷だけどね。
ミツバチさんに嫉妬されそうだけどね。
こういう妄想ばかりするからキモイといわれるのだ。
夫婦複数プレイといっていたが、カグラちゃんがアツアツ夫婦プレイだというから、ノッているだけだ。
ミズキちゃんにお尻を責められながら、カグラちゃんにお尻がつらいと訴える。
カグラちゃんに慰められながら、ミズキちゃんに前立腺を刺激されまくる。
書いていて、やっぱり変態だなと思った。
あ、まあ自分のことはここまで。
バカなことに巻き込まれる前に、とっとと雪ウサギを確保しよう。
どるぎも義務を果たせばこれ以上は何も言えないだろう。
グレゴリも欲しいようなことを言っていたから、義理を果たそう。
そういうわけで、グレゴリとともに、二匹の雪ウサギを確保した。
二匹ともしっかり加工して、雪ウサギ袋(冷蔵機能付き)になった。
一匹はグレゴリが、もう一匹はどるぎが引き取った。
上から袋をかぶせれば、ただの袋に見える。
ちなみに自分の袋もそうやって隠して使っている。
雪ウサギの肉は、自分使いですっかり食べてしまった。
グレゴリは自分の作る洋風料理にはまって、ときどき食いに来る。




