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異世界転移の錬金生活209 雪ウサギ登場

 雪ウサギ。

かわいいよね。癒しだよね。

でも、これが氷魔法の使い手だったらどう思う。

冒険者が凍傷で年間何人も殺されているんだぜ。

こええよな。そう思うだろ。

白の賢者などと呼ばれて、恐れられているわけだ。


 前に話した話が、少し具体化した途端これである。

情報収集してみて、情報収集自体を後悔した。

なんだよ。そうきたかよ。

意地でも自分を楽しませる気はねえんだな。

毛モジャはダメだといったじゃねえかよ。

かわいい系なら許される、そういう甘えを感じる。

かえって質の悪い悪意しか感じない。


 何も知らずにいたあの頃は幸せだった。

勝手な妄想が膨らみ続けるだけだった。

どうして、こうなるのだろう。

しかも、どうもサイズ的には普通のウサギらしいのだ。

冷蔵庫の内部には仕込みやすいサイズ感である。

腹立つなあ。

予定調和な感じが実にムカつく。


 ちなみに雪女的ないい女系はいないそうだ。

お前こじらせてんな、という目で、じっと心配そうに見られてしまった。

そういう目で見られる筋合いはないぞ。

こじらせ具合は似たようなもんだろ。

同じおっさんに心配されると、微妙に傷つくじゃないか。


 まあ、冷蔵庫のデザインを考える必要性は相当上がった。

ひどい展開の中でこれだけは救いである。

ウサギサイズの巣箱をコツコツ作って、白の賢者様に喜んでいただくべきだ。

これさえあれば、錬金術師の自分は無敵だ。

カリカリに凍らされる可能性は相当低くなるはずだ。


 ただ、その辺で唐突に出会うものでもないそうだ。

前にも言ったが、寒冷地の洞窟内で出会う可能性が高い、とのことだ。

この辺は、辺境のやや寒冷地といった風情なのである。

白の賢者様の生息域に微妙にかぶるという感じなのだ。


 いったい食事はどうされているのだろうか。

寒冷地の洞窟ではウサギさんの好きなものは生えていない気がするが。

その辺に生えているコケとかを細々と食っているのか。

それとも謎の魔力パワーでどうにでもなる設定か。

そうなるとまさに仙人というか賢者というか。


 いろいろ考えていると、ますます不安になる。

冗談抜きで妙に賢いキャラ設定だったら、どうしていいかわからんぞ。

戦闘になっても、何手先を読み切る詰将棋プレイだったら。

むしろ強引に行くおっさんの無様さを見せつける展開になりかねん。

小さな体で魔術を駆使する賢者プレイスタイルは、おっさんの苦手分野だろう。


 ああ、もういい。

悪い癖だぞこれは。

出会ってもいないうちから、いろいろ考えても意味がない。

ノープランで特攻せざるを得ない普通の冒険者よりは自分はマシだ。

いざとなれば、わなを仕掛けて放置という方法がとれる。

むしろ積極的に出会いに行く覚悟だったじゃないか。


 あと、このあたりの地理的情報も手に入れたのは大きい。

この洞窟の位置もある程度はっきりしてきた。

今日にでも、出向いていくことは可能だ。

今まで闇雲に探していたからこそ、こういう部分は大きな進歩だ。

ただ、詳しい地図のようなものはやっぱり誰も所持していない。


 困ったなあ。

自分が今までいかにバカだったか明らかになってしまった。

泥川とその周辺のみ、森には深く入らない。

そのおかげで、この町にも気づかなかった。

そもそも川のそばや河原のへんというのは住むには適さない。

村や町がないのは、川の氾濫に巻き込まれないという単に人類の知恵である。

森の中深く分け入れば、こういう町が見つかった可能性があった。


 そういうわけで、おっさんはある程度の準備をした後、元気に出発した。

寒冷地の洞窟を目指してわき目も振らずに、ガシガシ踏破した。

一日おきに簡易宿泊所を設定しながら、ときどき拠点化した。

この拠点が三つほどになったころ、目標の洞窟に到着した。

当初の予定通りである。

とりあえず、この洞窟に向かう拠点三つは、春拠点、夏拠点、秋拠点とした。

当然この洞窟名は冬洞窟である。


 洞窟入り口付近に冬洞窟拠点を建設する。

白の賢者様の巣箱もしくは冷蔵庫を設置していく準備をした。

出会いたくないため、ある程度数設置して気に入ったものに入ってもらおう。

やっぱり戦闘なんてもっての他である。


 こういう試行錯誤は錬金術師の醍醐味である。

これらの巣箱をぶっ壊されても全然腹は立たない。

自分がぶっ壊されるのは困るのだ。

白の賢者様は気難しい方である可能性がある。


 結果は惨憺たるものだった。

全部の巣箱がカリカリに凍っている。

怒っているのかもしれない。

やっぱり結構贅沢な方なのかもしれない。

もしくは、顔を出せ挨拶がない、というような価値観の方なのだろうか。


 ティマー的な話をすると、やっぱり最低存在を感じる必要はあるんだろう。

そうでないと、そういった契約関係っぽい感じにはならないのか。

顔を合わせて無事でいられるのであれば、自分だってそうしたい。


 いずれにせよ、用意した巣箱が全滅したため回収して引き上げた。

地面にしっかり凍り付いてる物もあって、取るのに難儀した。

これを見て、ますますお会いするのは難しいと感じた。

まあ、白の賢者様というからには、三顧の礼をもって迎えるべきである。

苦労してまた、巣箱チャレンジを続けようと思う。

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