異世界転移の錬金生活208 ミカエル登場
前回はこんなことをいっていたよな。
自分が元気にこの話をしている時点で、死んでいないってことだ。
すまん。本当にごめんなさい。
あの時はどうかしていたんです。
出来心なんです。許してください。
実はあの数日後、大変なことになったのだ。
あの人里離れた新拠点ヨシオのそばで、生死の境をさまよった。
助かったのは、運がよかったとしか思えない。
おっさんのリアルラックを信じてみるかと思った。
まあ、にっくき敵の名は、トンボである。
英名はドラゴンフライ。
こっちのトンボは、ドラゴンフライの名に恥じないヤツなのだ。
まあ、火を噴くかのごとき、激烈なアツさがおっさんの肌を襲った。
つまり、こっちのトンボは毒虫で、ヒアリのようなヤツなのだ。
ちなみにヒアリのようなカラーリングをしている。
実は聞いてた。
グレゴリから、危険性をちらっといわれてた。
森を抜けたということは、トンボはどうしたのだ。
うまく躱せたのであれば、お前は大した冒険者だ。
こういわれて、あいまいに笑っていた。
笑い事ではない。
笑ってられないアツさが、身を焦がす。
これはヤバイ。死ぬかもしれない。
そう思いながら、その辺に倒れた。
「おい、かぼんと。かのたれらやにぼんと。」
そんな時に救いの手が差し伸べられた。
誰と思う間もなく、どこかの拠点に連れていかれた。
その段階で、おっさんは意識を失った。
そこから、どこかの町に担ぎ込まれたようだった。
そこで自分の持っていたポーションも使って治療されたようだ。
このポーションがなければ危なかった、といわれた。
この町は、新拠点ヨシオから二日のところにある。
なんで、自分は今まで気づかなかったのだろう。
ちょっと森に入り込んでいるため、新拠点からは見えにくい。
治療してくれたおっさんと、助けてくれた若者にお礼をした。
ここにもどるぎがあるようなので、登録作業をした。
というより、助けてくれた若者は冒険者だった。
ここにも冒険者としての依頼達成のために繰り出したそうだ。
ここへは、キノコや薬草の類が採れると聞いてきたそうだ。
そこにおっさんが倒れていたため相当驚いたといっていた。
「はにんぶじ、すでんるいがじやおのいらぐたんあ。」
若者ははにかみながらそう言った。
自分はヨシオだ、といったら、自分はミカエルといった。
またよろしく、といって別れた。
おお、また親しい冒険者ができたな。
それから、何日か過ぎた。
周囲の人から、しばらくは安静にしろ、といわれたためだ。
病院のような施設で、寝て過ごした。
例の治療をしてくれたおっさんは、面倒を見てくれた。
ポーションは自分が作ったといったら、喜んでいた。
さっそくポーション作成を依頼をしてきた。
「ま、体調が戻ったらすぐ取りかかるよ。」
自分はどうもとんでもないポーションを作っているようだ。
日常的にわが身で試してきたため、あまりそういう実感はない。
なかなか毒消しまでいけるポーションは少ないそうだ。
とくにトンボは年間何人も冒険者が死んでいる猛毒持ちだそうである。
考えてみれば今までも、毒ったときにはあの薬草でどうにかしてきた。
それを自分の技量でポーション化しているわけだ。
自分に才能があったとは思わないけど、褒められればうれしいものだ。
後日結構張り切って作り、おっさんに渡してやった。
まとまった現金を手にすることができた。
そんなことよりも、また自分の生活圏が拡大した。
そのうえこの町は、新拠点ヨシオから近い距離である。
今まで商材としてはあきらめていたようなものも持ち込めるかもしれない。
まずは溶け込めるように努力しようじゃないか。
ただ、前の町にはあった娼館がここにはない。
結構大きな町しか、ああいうものは経営できないものだ。
非日常を楽しみたくて行く場所だから、新拠点ヨシオから遠いほうがいい。
近所にこんなものがあると、おっさんは身を持ち崩してしまう。
バカなガキはあいかわらず自分の中にいるからだ。
そういうわけで、冒険者数名と仲良くなった。
まあ、例のミカエル君の友達数名という感じだけどね。
おっさんには彼らの輝きが実にまぶしい。
バカな子たちだ、と思いながら、なんだか愛おしい。
自分も昔はこうだったな、と思う。
なんだか大丈夫だと思って生きてる。
自分は死んだりしないと思ってる。
毎日なんだか楽しいのだろう。
理由なんかないのだ。
友達さえいてくれたらそれでいいのだ。
金で悩んで死んじまった自分には、もう取り戻せない感じである。
ポーションは定期的に例のおっさんに卸し続けた。
そこでこまめに情報収集をしていく。
このあたりの地理情報やら、いそうな魔物の情報など。
まあ、厄介な話も仕入れたけどね。
その話は次回にするつもりである。




