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異世界転移の錬金生活204 魚醤

 今回は魚醤について語りたい。

正直言って、調味料を充実させたい。

塩とはちみつでおおむね味付けは可能になったが、味が足りない。

それには、醤油もしくは魚醤が欲しい。


 大豆は枝豆が見つかっていないため、醤油、味噌はまだムリだ。

しかし、魚醤はいけるのではないか。

ソードフィッシュを数捕まえて、塩漬けにする。

並べてしばらく放置すれば、なにがしかの魚醤ができる。

うまいかどうかは、保証できないが。


 それには、まず、タルの類を手に入れたい。

土器の壺でもいいが、相当大きなものがいる。

おっさんの技術ではギリギリきつい。

例の道具屋で聞いてみようと決め、そこへ向かった。


「おい、おやじ。台車を安くしてくれてありがとな。」

「いや、だんいい。なしだえまおはあでいあ。」

「今日は、発酵するような食品を詰めるタルが欲しい。」

「かるた。かのいたりくつかんな。れくてえしお。」

「いや、小魚を塩漬けにして調味料を作るんだよ。」

「はあ。かのるあがんもなんそ。ぞたいきてめじは。」

「できたら味見をさせてやるから。」


 道具屋のおやじはなんだか鼻息が荒かった。

商機を逃したくない感じだな。

どうも何もなく解放してはくれそうにないため、味見を約束した。


 おやじは慌ててタルを持ってきて、俺の常宿についてくる。

運んでくれたので、いろいろ便宜を図る約束をした。

よほど例の台車は売れているのだろうな。

時々町で使っている人を見かけるのだ。


「あ。タルの代金を払っていない。」


 気が付くとおやじは帰った後で、無料でタルを手に入れていた。

しょうがない。

あとで魚醤の製法をしっかりレクチャーしよう。

そもそも、うまいこといくか、今の段階では誰にもわからない。

ある程度試して、これだという味が完成してから教えよう。


 タルの底に、内臓を取り塩で絞めたソードフィッシュを並べる。

二週間たったころ、ちょっと匂い始めた。

底に溜まっている液体が真っ黒である。

ただ、醤油のようないい香りが漂っている。


 普通はこの段階で失敗したと思うだろうな。

先人はこれをなめてみようと、どうして思ったのだろう。

まあ、いい匂いがするので直感を信じたんだろうな。


 当然なめてみる。

しょっぱくてうまいかどうかわからん。

それでもおっさんの涙腺は崩壊した。

からっ、と叫びながら自分は号泣した。


 それから、野草の煮びたしを作って味付けに投入した。

途端に懐かしい味わいが口内に広がった。

うまいとかまずいとか、そういう次元ではなかった。

涙があふれて止まらなくなった。


 のちに冷静になってみると、魚醤はやはり醤油ではなかった。

魚の生臭さはやはり濃い。

ただ、そのおかげで小魚の干物には完全に合うようだ。

刺身の類にも合いそうだ。

ただ、野草の煮びたしに合うかと言ったら微妙である。


 この後、塩の完全な調合を見出すためにいろいろ試した。

味わいの完璧な魚醤にたどり着いて、やっとおやじにレシピを話した。

真っ黒なので驚くな、魚料理なんかに少し使え、と言って魚醤の壺を渡した。

自分の持ってきたそれを受け取りながら、試してみるといっていた。

ちなみに、やっぱりおやじはタルの代金を受け取らなかった。


 大豆はやはり探したいものだ。

魚醤を手にして、ますます醤油や味噌に思いをはせるようになった。

それと豆腐も、できたら挑戦したいものだ。

ワインビネガーのようなものは、実は既に開発成功している。

つまり酢はこれでそろったといえる。

あとはみりんぐらいかな。

ありゃ酒でいい気もするが。

手間のかかり具合から、実は酒を料理に使うのはいまだに気後れする。


 ああ、そういえば生姜。

いまだに見つからない。

というか知識がないため、今までスルーしていると思う。

生姜焼きが食べたいと思うたびに、それを思い出してへこむ。

滋養によさそうであるため、異世界では何かの薬草化している可能性もある。

それなら自分には見分けがつきそうだと思って探している。


 後日談として、魚醤は道具屋で売りに出された。

そのあと、道具屋としては適当でない食品だったため、八百屋や魚屋に卸すように販路が変わった。

自分は知らん顔して、そういうところで以後は魚醤を買っている。

その段階で自分で魚醤を作るのはやめた。

ソードフィッシュは冒険者の成績になるのだ。


 自分が作ったものが、人知れず一般化していくのを見るのは楽しい。

しかし、これに所有権や著作権、商標権のような概念は存在しない。

こういうアイデアに高額の金品を払う習慣自体がない。

そういう意味では、いまいち自分は儲からない。

それこそ社会貢献とか福祉、奉仕の類だと思う。


 おっさんとしては、それよりタルの構造のほうが気になる。

やっぱり固い木の板をどうやってか曲げて金属の輪で押さえている。

ひたすら苦労しただけに、日がな一日このタルを見ていたこともある。

すっかり魚醤の匂いのしみついたタルをずっと持っているのはそのせいだ。

まあ、いつか大豆を手に入れたときのためでもあるが。

もちろん、タルは貴重品なので新拠点ヨシオに今ある。

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― 新着の感想 ―
[一言] ここまでの話錬金関係なくね
2021/03/13 18:54 退会済み
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