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異世界転移の錬金生活203 台車

 前回の悩みの続きである。

氷室は、とりあえず泥川上流域での洞窟探しを続行中である。

台車に関しては、とりあえず、模型を作ってみた。

既にできるようになっている技術の応用である。


 まず、壺のふたを二つ準備する。

これの中央に何とか穴をあけ、棒を通す。

棒を通せる留め金を鉄の薄板を曲げて作成。

小さな板材を準備して留め金を小さい鉄釘で固定。


 ふたへの穴あけは、ギザギザがついた千枚通しのような鉄工具を買って使った。

この鉄工具は、見た瞬間買うしかないと思った。

ちなみに初めて購入した鉄素材を扱った工作だった。

特に鉄の薄板で指を切りそうだった。

金ばさみかペンチが欲しい。手袋も欲しい。


 コイツを玩具として道具屋に納入する。

同時になんとかこれの大きいものが作れないか、身振り手振りでお願いしてみる。

玩具としては非常に面白がって高く買ってくれた。

しかしお願いをした瞬間、難しい顔をされた。


「だちゃもおいろしもおりゃこ。ぞぶころよももどこ。」

「そうだろう。これをなんとか大きいものに作り替えられないか。」

「あーー。かけわるべこはでれこをつもに。うーーん。」


 そのまま考え込んでしまったため、これ以上は何も言えなくなった。

また、玩具を納入する約束のみして、別れた。

単なる木工職人と思われてしまったか。

しかし、断られてはいないため、希望をつないでおこう。


 結局調子に乗って何コもこの模型を製作して納入した。

売れているらしく、道具屋も喜んで引き取ってくれた。

まあ、大きいものは、そのうち誰かが作ってくれるのを気長に待とうか。

道具屋も何か考えている気がする。


 結果として正解だった。

道具屋は何か月後かに大きいタイプを売り出した。

アイデアをもらったということで、自分だけは裏に呼ばれ特価で売ってくれた。

引きずり板材をコイツに入れ替えたら、めちゃ便利だった。

まあ、やや小さいかな、という不満はあるんだが。

しかしこれ以上大きいと森の中を押し通れない。


 さあ、残る課題は氷室のみである。

寒冷地のしかも洞窟をわざわざ探す奇矯な人は、自分以外にいない。

冒険者でさえ、わざわざ依頼もないのにそんな危険を冒すとは、といってきた。

洞窟は、それこそ魔物の巣窟となっている危険があるそうだ。

まさに天然ダンジョンである。


 だからこそ、他の冒険者に依頼するなんて危険は冒せない。

冷蔵庫のために死んでくれとは、自分もさすがに言えない。

あと、ちらっといったが、魔物の特殊能力に魔法がある。

洞窟が妙に冷えている場合、そういう魔物がいる可能性があるそうだ。

この手の魔物をミツバチさんのように味方にできないだろうか。

冷蔵庫を隷属レイゾークさせるわけである。


 ゾクッと寒い冗談はさておき、味方にする方法論を探さないといけない。

ウチを準備してそこへ追い込む、という方法しか今は知らない。

どんな魔物かわからない以上、ウチは事前に準備できない。

結構大きなもの、快適なものが必要かもしれない。

そんなものを準備しているうちに、カリカリに凍らされて殺されてしまう。

ああ、ボールが欲しい。科学が進歩してほしい。


 皆さん、言いたいことはよくわかる。

お前、錬金術師じゃなくてティマーじゃねえか、と。

しかし、状況に合わせて行動していたらこうならざるを得ないのだ。

人類は結構過酷な環境で日々暮らしている。

魔法なんぞ使えない。使えるのは魔物のほうだ。

こうなれば、錬金術師としてはティマーにならざるを得ないのだ。


 ただ、この状況だと冷蔵庫を製作して大々的に売り出すことはできそうにない。

作ったはいいが、製品の安全が保証できない。

中から魔物がいつ飛び出てきて悪さするかわからないからだ。

儲けには全然つながりそうにない。

そういうわけで、何卒ご勘弁願いたい。


 あと、ちょっと期待していることがある。

雪女さんや雪ん子ちゃんである。

雪の女王様でもいいが、ここら辺の魔物は容姿端麗設定ですよね。

青白い装束の胸部装甲がけしからん感じで。

お願いしますよ、誰かわかりませんが偉い人。


 間違っても毛モジャの雪男系は勘弁ですよ。

足跡なんかなんぼあっても意味がありません。

凍らされても中身がなにか満たされる感じが欲しいです。

死んでもいいかな、と思うぐらいでお願いします。


 というわけで、久しぶりのキモイおっさんである。

味方になってくれる魔物というのは、ティマー的にアツい。

冷たさを与えて、実は便利に利用させてくれるクール系。

我ながらバカだなとは思うけど、おっさんの好きなタイプである。


 こんな妄想にとり憑かれながら、森の中をさまよい歩く。

我ながら実に幸せそうなヤツである。

森の中は実は迷いやすい。

なめていると、とんでもないことになりやすい。


 おっさんは注意力が散漫だ。

ここはどこだ。

正確にはどこに行けば戻れるんだ。

方位磁石の類もないから、結構致命的である。


 今のところは絶賛休止中である。

ただ、自分はできるような気がしている。

冷蔵庫のデザインだけは何とか考えていこうと思っている。

こういう思考の準備をしておくだけで、その状況になったときできることがある。

まあ、出会った瞬間、カリカリに凍っている可能性が高いけど。

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