異世界転移の錬金生活202 魔法のこと
さて、今おっさんがひそかに考えていることがある。
まずは、台車もしくは大八車である。
というより、車輪と言ったほうがいいかもしれない。
これに穴をあけるなどという荒行は、おっさんにはムリである。
車輪と軸棒を組み合わせたもの、それとそれの留め金。
引きずり板材は既にあるため、これに組み合わせたい。
おそらく現地の人も引っ越し等でこういうものを使うはずである。
そもそも冒険者は、得た獲物をそういうもので運びたいのではないか。
しかし、どうも今のところそういうものを見たことがない。
自分で背負ったり、時間をかけて一つ一つ運んでいる。
山がちの森が広がる辺境のため、この手の文化が育たない。
まあ、その可能性が大である。
しかし、現代日本から来た身としては、非常に不便である。
馬車の類も見たことがない。
あるところには、当たり前にあるんだろうな。
貴族様の多い地域とかな。
次に、氷室である。
単純に生鮮品をそろそろ塩漬けでなんとか保存するのはしんどい。
知らなきゃそれで済んでいくのだ。
現地の人は不思議に思う様子すらない。
でも、現代日本から来た身としては、わかるよね。
冷蔵庫、冷凍庫、氷室などいろいろ文化を持っている。
下手すりゃ、高地や寒冷地から氷を輸送する文化まである。
しかし、現地の人はおそらく貴族でもそういうことに疎いようだ。
つまり、そんなことは考えたことすらない。
現代日本は、貴族しか住んでいない地域である。
おっさんは最近そういうことを思うようになった。
浮浪者や浮浪児、孤児なんかも、あまり見ない。
どうもそういう境遇になったら、遠からず死体になって発見される。
この地は辺境のため、そういうことにみんな鈍感なのだ。
福祉だとか奉仕だとか、そういう貴族っぽいことにあまり興味がない。
マッチ売りの少女は、この地ではリアルである。
そしておっさんもそういう環境に慣れつつある。
自分はそういうかわいそうな人は、ほっておけねえ。
こういうことをいう人を自分はあまり好きじゃない。
なぜならおっさんも気持ちよく、稼いだ金を自分の快楽のみに使っているからだ。
そしてその手の博愛主義者も、結局そうしているはずである。
もっというと、その手のかわいそうな人は本当にかわいそうか、わからない。
言葉もよくわからない自分には、事情もよくわからない。
立ち入れるものなのかそもそもわからない。
無責任にかかわって責任が取れないと分かったら、どうしようもない。
そもそも、おっさんはその日暮らしの状況なのだ。
ポーションがなきゃ、自分のほうがそうなっていた可能性が高い。
人様を救うとか、そんなことをいえる贅沢な状態じゃない。
宿屋だって、あの薬草分の代金がかかるのだ。
あの例のグレゴリも結構苦労しながら生活している。
冒険者だから金銭的に余裕がある、ということでもない。
怪我したら終わりだ、というようなことは言っていた。
自分もそうだが、結構緊張感のある人生である。
保険なんぞありゃしないのである。
だからこそ、例の娼館は大流行りである。
刹那的で空しかろうが、一時のことにバカな金額を払うのだ。
おっさんはそれに比べてまだマシである。
例の新拠点ヨシオ等自分の拠点が外にあるため、ある程度は計画的に金を使う。
余った分をそこに投入しているだけだからだ。
ポーションが高値で売れるからこそ、こういう余裕がある。
さてさて、話を戻したい。
台車か氷室、どちらかをどうにかしたい。
氷室に関しては、泥川上流地域によさそうな洞窟はないか。
台車に関しては、馬車を作ってそうな職人探し、貴族探しである。
どちらも具体的な方法論が見いだせない。
そもそも、この手の洞窟探しは、異世界に来てよりずっとしてきた気がする。
馬車をそもそも見ないのに、職人探しや貴族探しはムリだろう。
この手の話は例のミツバチさんを思い出させる。
必死で探しているうちは、ちっとも出てきてくれない。
おっさんのリアルラックと注意力が、非常にネックである。
あとは、そう魔法である。
生活に便利に魔法を使う。
魔導士や魔法使い、魔女がいる。
彼らがたいてい貴族となっている。
歴史に残る大導師様や賢者様がいらっしゃる。
錬金術師が、便利な道具を作りまくる。
ゴーレムの類が生活の場で肉体労働している。
こんなところだろうか。他にもあるよねいろいろ。
言っておこう。まるでない。
人類は自分も含め魔法とは無縁だ。
魔物の類に、そういう特殊能力を持つものがいるようだ。
そういう種類の魔物は特殊な魔石を持っているようだ。
しかしそれも、人類には確認するすべがない。
鑑定魔法なんていう夢の技術なんてないのだ。
まあ、わかりやすい言い方をするならポ〇モンである。
ただ、科学が進歩してないため人類にはどうするすべもない。
ボールで捕まえて従わせたり、戦わせたりできない。
野放しであり、ひたすらやられっぱなしである。
え、なにそれ。こわい。
例のソードフィッシュやミツバチさんは、こういう魔物である。
自分は気づかずに魔物を従わせるティマー的な動きをしていた。
だから特に抵抗らしい抵抗をせず、はちみつをくれるのである。
そして無害な魔物は少ないそうである。




