異世界転移の錬金生活103 火事発生
そこで半日ぐらい、立ち尽くしていた。
夜になっていく。今夜は寝られないだろう。
しかし、火のせいで、あたりは明るい。
ただ、木々はそれなりに燃えてしまうことに抵抗している。
ひどく焦げたにおいがする。
このときにふと気づいた。
野草も燃えてしまったのではないか。
今までいやいやながら食べていたけれど、貴重な食糧だった気がする。
先行きがにわかに不安になってくる。
え、燃える。
燃えるということは炭が手に入る。
活性炭という言葉が頭に浮かんで消えた。
待てよ、活性炭は水の浄化に使えるぞ。
贅沢は言えない環境だ。
これは非常にありがたい展開なのではないか。
沼地を掘り返して、底に砂や活性炭を敷き詰める。
それをどうにか抽出さえできれば、真水が手に入る。
野草も大事だが真水はもっと大事だ。
どうにかアイデアを練ろう。
きっとどうにかできる。
あと少しでたどり着くような気がする。
それに炭は火をつけられれば、火種問題も解決できる。
石を打ち合わせて火打石代わりにできれば。
いけるぞ。いける。
あとは、粘土を使って土器でも作るか。
粘土はこのあたりの沼地にないだろうか。
探そう。掘り返してみよう。
火が収まったらかなりやることができたぞ。
順番にゆっくり焦らず、一つ一つやろう。
むしろ火がついている今だからこそ、やっておくべきことはないか。
そもそも自分は火種を欲しがっているんだよな。
たいまつのような形で火を確保できれば、火を起こす必要すらないぞ。
危険は承知でちょっと近づいてみるか。
火のついた枝や草とかをたいまつ代わりにできるかもしれない。
あっぶね。
顔に当たる熱がすごい。あっつい。
枝を折るような余裕なんてない。
火にまかれたら終わりだって、さっき思ったばっかだろうに。
若けりゃここで蛮勇を発揮する。
うりゃあ、とばかりに成果物をゲットする。
そうはいかんのが、運動不足気味のおっさんなのだ。
本当に火の耐性スキルがついたりしないのかね。
ま、ねえわな。
あわてて、また、沼地の奥に逃げてきた。
あと、風が強くなってきた。
なんだろう。すごく嫌な予感がする。
大気がかき回されているのは、急速に火が酸素を使ってしまうからだ。
結果どうなる。
大気が上空に巻き上がり、雲を呼ぶのではないか。
あ、雨が降るか、これ。
やばくないか、いまだ拠点化できていない状況で。
ただ、この森にとってはあらゆる意味で恵みの雨かもしれない。
しかし自分には雨露しのげないぞ。
そのうえ、今自分がいるのは沼地の上。
すごく不安定なうえ、逃げられない。
逆に言えば、おろおろしていることしか自分にはできない。
その間に、状況をしっかり見て、何ができるか必死に考えよう。
沼地を後にする、というのも、できそうなうちに決断しないと。
状況がころころ変わってかなわんな。
おっさんにはきつい。
とりあえず、はだしを靴装備に切り替えた。
ぐちゃぐちゃで、靴下も靴も履きにくいったらない。
しかし、即移動となったとき動き出せないと困るのだ。
よし、荷物も腕に抱えて動けるぞ。
冷静になってみると、ずっと立ちっぱなしである。
めちゃくちゃ足が痛い。
座りたい。動きたくない。
とりあえず、沼地から森側へ移動を開始した。
森についたら、座れるのだ。
それを心の支えに歩き続けている。
見えてきた。あつい。
困ったぞ。
まだ、雨は降る気配がない。
風は強いが、むしろ熱風をこちらに吹き付けてくる。
どうする。
この場で待機か。
足がいい加減痛いので座りたい。
この場で座るのはあり得ない。
それなら、枝を組んでその上に座るか。
うまいこと枝を組んでロープで抑える。
そのロープをもって、その上に腰を下ろす。
固定が甘く、いつつぶれるかわからない。
非常にバランス感覚がいる。
力の入れどころが難しく、結局中腰と変わらない。
まず、こういった場合のイス、これはすぐに作ろう。
沼地にいるとき、とにかく姿勢が固着されるのはつらすぎる。
テーブルもだ。休憩できないのはつらい。
そう心に誓った。




