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【完結済み】アラフォーのおっさんによる異世界転移の錬金生活  作者: 薙尋
なあ、地球の人類滅亡したってよ1
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なあ、地球の人類滅亡したってよ001 クリエイター

「なあ、地球の人類滅亡したってよ。」

「はあ、なんでよ。なにがあったんだよ。」


 同僚の突然の告白に、俺は思わず叫んでしまった。

いろいろ考えられるが、ピンとくるものはない。


 そもそも地球の人類ホモサピエンスというのは、何度目かの人類である。

あそこは自然環境も過酷だし、魂のレベルもなかなか上昇しない。

端的に言えば頭がよくならない地域である。


 そのうえ、最近は原子力による地上の攻撃手段を手に入れている。

そいつを地上に大量配備してしまっている。

自分たち同士の居住地域の醜い縄張り争いに活用されている。

こういうダメっぷりである。


 それぞれの居住地域同士では、生物兵器、細菌兵器も鋭意開発中である。

これらは蔓延したら自分たちも多大なるダメージを被る。

つまり発展途上であり、いつ誤作動するか誤蔓延するか、わからない。


 そのうえ、妙な新興宗教を信じ込んでいる。

創造神を勝手に一柱と設定し、それ以外は排除する。

こういう独善的な思想を無自覚に他地域に押し付け合っている。


 もちろん、彼らにそれらの正しさを確認するすべはない。

そういう意味でも不毛である。


 こうしてつらつら書き連ねていくだけで、問題の芽はさまざまである。

何が原因でそうなっても、まったく不思議はない。

どうやって原因を確認するか、頭が痛いわけである。


「なにがあったか、わからないと困るだろ。」

「困るなあ。いずれにせよ調査しないと。」

「ふっふっふっ。そこはぬかりないのだ。」

「調べたのか。まあ、そりゃそうか。で。」

「ひとり捕まえた。カネで自殺を選んだヤツだ。輪廻の輪に入る前に阻止した。」

「へっ。そんなこと、できたんだ。」

「まあな。滅亡する直前だから、いろいろ融通はきくさ。」


 とんでもないことを聞いた。

どうも、同僚には問題が多い気がする。

地球の人類担当にされて腐っていたが、今はイキイキしている。


「どうすんだ。その…、なんという人だっけ。」

「ヨシオ。」

「いや、そうじゃなくて。このまま、どこに置いておくつもりだ。」

「まあ、急遽異世界を設定して、蘇生してそこに放り込んどいた。」

「まじか。届けも出さずに勝手な真似を。」

「届けは、何とかうまいことやって出しといてよ。頼むよ。」

「嫌だよ。なんで俺が。」


 ひでえことを押し付けられた。

コイツはやっぱりこんなことばかりやっている奴なのだ。

ただ、世界創造のセンスと才能はあるんだそうだ。

世の中、ままならないものである。


「とりあえず困らないようには、しといたんだ。」

「その割に、ヨシオ、ピンチに陥ってるな。」

「よくわからないが、死ぬようなヤツだから死にやすいのかもな。」

「調査はどうなってるんだ。」

「正直に言って、この人重要な人じゃないんだよ、多分。」

「よくわかりませんでした。という話か。」


 ダメだ。終わってる。

届けを出すには、あまりにも状況が悪すぎる。

届けが出ないと、当然他の同僚に話が伝わっていかない。

いろいろ必要なものが、異世界にそろわないままだ。

例えば、ヨシオのような人類の他者とかね。

動植物も特殊なものは一切いない、プレーンな設定のみになってしまう。

それで乗り切れるほど、ヨシオは優秀なヤツじゃないのだろう。


「とりあえず、薬草の類を設定しよう。」

「ヨシオの脳みそにわかる感覚を入れとくよ。」

「しょうがない。…滅亡因子の重要人物を保護。そのための異世界を設定。」

「おお、そう来なくちゃね。」

「本日、薬草知識のインストール完了。これで生活する錬金術師に認定。」

「報告が済んだら、教えてね。」

「おい、逃げるな。お前の詫び状はいるぞ。」

「どうも、ヨシオはなにか知ってる気がするんだ。」


 都合が悪くなると、唐突に違う話を差し込む。

コイツは、こうやって今までにも散々迷惑をかけてきたのだ。

ひどいヤツであるが、人と違って絶対にいなくなったりしない。

いつもそばにいるのだ。

付き合っていかざるを得ない。


「なにかってなあ、なんだ。」

「嫌そうだなあ。まあ、無理もないか。」

「地球の人類はそもそも出来が悪い。そう言っていたのはお前だ。」

「まあ、聞こえてないヤツは多いしね。なにかで壊れてる場合も多い。」

「魔法の類もからっきしだろう。剣術もそこまでじゃない。」

「成長や進化も全く縁がない感じだしね。」

「じゃあ、現状でヨシオを重要だとする根拠はなんだ。」

「怒らないで聞いてくれるかな。」


 コイツはまったく、めんどくさい。

イライラする。俺はもともと温厚なたちだ。

それなのに我慢ができない。

言いたいことがあるなら早く言え。


「特にないよ。ヨシオは重要な人じゃない、多分。」


 くっ。最高にムカつく。

もういい。

こんな世界は、ヨシオごと閉じてなかったことに。

たった今報告を入れてしまったが、これこそなかったことにできる。

さっきの報告は手違いですみません、で終わりだ。

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