異世界転移の錬金生活125 上流へ
旧拠点を充実させつつ、ここらでしばらくゆっくりしよう。
特に、土器の類が気になる。
粘土をあつめて土器を作り、石のかまどを試した。
素焼きも非常に素朴でよいが、やっぱり陶器にあこがれる。
なんとなく、石の削り粉、草の灰を水に溶いたものを土器につけてみたり。
釉薬についての知識はない。
だから、うまくいって自分が驚いた。
おお、なんだか表面が滑らかになって色も変わった。
こいつは売り物になるんじゃないか。
あわてて、石の削り粉を壺に詰めて保管した。
しかし正直、陶器は持ち運べる気がしない。
割れたら手間のかかり具合から泣いてしまいそうだ。
割れもの注意、天地無用という張り紙をしたぐらいでは、どうにかならないのだ。
前世は便利だったなあ。
結局数日間はここで過ごし、野草や川魚を捕まえて過ごした。
しかし、状況はこうしていても変わってくれない。
積まれた石材が、行こうぜと恨めしそうにこっちを見てくる。
まあ、上流行きは決定だよな。
引きずり板材はどこまで付き合えるのかわからない。
ダメな時点で、今度はおっさん肉体運送に代わる。
効率も落ち、料金もかかる、荷物の扱いも雑なブラック運送である。
どのあたりが出張拠点になるだろう。
引きずり板材がいけなくなった時点を考えている。
結果として、引きずり板材は結構使えた。
旧拠点と中間拠点の距離分ぐらい、引きずり板材は活躍した。
つまり、このあたりで沼地は消えた。
ここを出張拠点として、石材でしっかり拠点化した。
ここからはひたすら石を背負って輸送だ。
げんなりしながら森の中に入り、一日歩いて石を置き、引き返す。
これをひたすら繰り返して石材を輸送し続けた。
荷物が空になった引きずり板材は出張拠点に放置する。
結果として課題が発生する。
勾配のきつい森の中を、石材を背負い、荷物も満載気味。
引きずり板材がないと、石材だけがきついのではない。
荷物もきついことになる。
つる草である程度は作ったが、袋ものが欲しいのである。
死んだ目をして石材を運び続けた。
川幅が相当狭くなってきている。
川幅が乗り越えられるレベルになってきている。
ここらで決断をすべきだ。
未知の領域への調査は、恐怖感がある。
そのため、しばらく決断できずにいた。
さらに川幅が狭くなり、板材を準備してやればそれを橋にできそうだ。
そのあたりで、再度板材づくりのために拠点を作った。
この拠点は、わかりやすく橋拠点とする。
しっかり残りの石材も使って、橋拠点は立派なものになった。
橋拠点はそのまま、橋脚も兼ねた作りにした。
つまり、板材は天井に張り渡される感じである。
完成すると同時に、対岸に渡り反対側も石材で橋脚を作った。
そう、とうとう対岸に到達したのである。
この達成感は今までとは違った。
解放感は今までにはなかった。
どこへでも行ける全能感がすごかった。
そうそう、言っていないことがあった。
鉄インゴットとガラス質材の話である。
今まで鉄インゴットはクサビ大として登場したのみ、ガラス質材は保管。
持ち運び報告にも記載がない。
なぜかというと、貴重品だからである。
おっさんは貴重品と化したものは、持ち運ばない。
その時大事な拠点に置いてくる。
今は、新拠点ヨシオである。
今、そういう意味でやきもきしているのが、陶器である。
まあ、旧拠点も大事なのでしょうがない。
さて、石材をすべて消費した。
かなり余裕があるはずだったが、橋脚になってしまうとは。
心もとないので、新拠点に戻りたくなる。
しかし、おっさんの肉体が拒否する。
もう嫌だ。あんなブラックバイトみたいな仕事は嫌だ。
本当はもう橋拠点を後にして新天地を見て回りたい。
しかし、おっさんの肉体が拒否する。
休みたい。こんなきつい仕事の後で休みもなしかよ。
結局言い訳しながら、このあたりの整備を行いつつゆっくりした。
しばらくの充電期間も明け、新天地へと繰り出した。
正直、景色はそれほど変わらない。
まあ、結局泥川沿いを下っているので当然だ。
橋拠点は、見る癒しである。
あの橋は便利だなー、誰が作ったんだろー。
なんとなく視界に入れていると安心である。
逆に深い森の景色はちっとも自分には癒しにならない。
野生生物、魔物の類は見当たらないが、いないわけじゃない。
虫の捕獲に取り組んだことで、異世界にいる実感を得てしまった。
そういう意味では、あれは無駄ではなかったと思う。
警戒感を込めてじっと見る感じになる。
石材輸送はとりあえずお役御免となったため、気分は楽である。
投げヤリもオノもあるしね。
わなはいま、背中に背負っている。
わなにかかる小魚は、やはり変化はない。
ソードフィッシュは非常に独占的な魚なのかもしれない。




