異世界転移の錬金生活124 旧拠点へ
さて、そろそろ、川の上流に向かおう。
大体の物資も潤沢になり、生活にもややゆとりが出てきた。
むしろ、保管に困難が生じて、腐らせる可能性があるぐらいだ。
さて、持ち込みたい物資は以下の通りだ。
はちみつ、塩、酒、ジャム、野草の煮びたしにソードフィッシュの干物。
果物、野菜、あの野草、投げヤリ、木の補助具、オノ、わな。
石材、引きずり板材、運搬カゴ、各種つる草の編み物。
これに、真水や土器類である。
結構な物量で引きずり板材の積載にも、なかなか知恵を絞る必要がある。
とりあえず、ミツバチさんの関係はしばらくどうしようもない。
巣箱を移動するなどという荒行にはとても耐えられそうにない。
しかし、もはや、新拠点ヨシオでの活動は終了である。
この中で、意外と貴重なのがはちみつではないか。
ジャム、野草の煮びたし、ソードフィッシュの干物は、前世基準でおいしい。
果物、野菜は、結局どうしても日持ちしないため、売り物には厳しい。
真水生成、各種つる草の編み物、わな、木の補助具は技術を売るつもりだ。
ポーションについては不確定要素が大きく結局難しい。
ひょっとして、という感覚があるのは、あの野草だ。
いつも日の終わりに生でしがんでいるアレだ。
これについては、ちょっと栽培にも取り組んでみた。
そういうわけで、出発だ。
固定にそうとう手間取ったが、これが甘いとあとがこわい。
壊れやすいものほど、しっかり固定した。
緩衝材はとりあえず大き目の葉をくしゃくしゃに丸めたものである。
この大き目の葉は、食料の包み紙にもよいようだ。
笹の葉とは見た目が違うのだが。
うっ、重い。
ヒイヒイいいながら、引きずり板材を運搬する。
地面の丸太を転がし、終わった丸太を移動し、これが結構大変だ。
しかし、丸太がないともっと大変なわけで、遅々として進まない。
ドロドロの丸太を運ぶのに衣服も汚れた。
あっという間に三日が過ぎた。
そろそろ、拠点を作り出した。
ここでしばらく休んで、また進んだ。
そのあと、三日ごとに拠点を作りながら、進んでいった。
普通に歩いたら一日の距離に、拠点ができていった。
この拠点はいわゆる旧来型の木の屋根の拠点である。
石材は一コも下ろしていない。
石材で作ってみるのは、例の中間地点に作った拠点にたどり着いてからだ。
まだまだ、見えてこない。
自分はこのころ結構頑張ってわき目も振らずに歩いていたな。
でも、このおかげで目安になる中間拠点があるわけだ。
そして、このころ、見た目も変化してきた。
森が深くなってきたのだ。
沼地をそのまま横断したことはなかった。
基本的には森の中を歩いてきたからな。
ただ、中間拠点は、沼地にも出てきて結構活動した。
土器を本格的に作った記憶がある。
粘土を必死で掘り出した場所も結構覚えている。
だから、見た目ですぐわかるはずだ。
正直迷ったか、という感覚になってきたときに、やっと見つけた。
こんなに中間拠点まで遠かったとは。
少なからずうれしく、また泣いてしまった。
歳をとるとこんなことで泣いてしまう。
この中間拠点で、石材を下ろし、屋根を作った。
トイをその場で作り、活性炭を設置した。
水瓶にトイの水を引き込んだ。
かまどは、石で組みなおし、土のヤツは崩して沼地に移した。
この中間拠点に来るのは久しぶりだ。
しかし、水瓶に入っていた真水は腐っていない。
煮沸してその日の料理等に使った。
そこにあった土器類はそのままそこに置いておいた。
持ち運びしづらい形状で持っていけないからだ。
このあと何事もなく、この中間拠点を後にして、自分の旧拠点にたどり着けた。
中間拠点で石材が半分になったため、三日は二日になったためだ。
収穫はやはり、故郷へ帰ってきた感である。
今の目で見るといろいろ厳しい造作物が多い。
本格的にいろいろ手直ししつつ、中間拠点同様の手を加えた。
つまり、石の旧拠点となった。
ここで、石材は尽きてしまった。
先行きを考えると、また、新拠点ヨシオへ戻って石材を持って来たい。
上流はおそらく過酷だろうから、出張拠点は大事だ。
石材を運搬するのは大変だろうけどね。
非常に助かるのは、このあと新拠点ヨシオへ戻るのはすごく楽だ。
一日ごとの簡易宿泊所がある。
あと、沼地を使った引きずり板材運搬法は意外と万能だった。
結局、石材運搬用カゴは、ちょっとした便利でしかなかった。
しかし、この先はそうではないだろう。
この辺で、手薄になってきた野草、野菜、小魚を採りつつ新拠点へ戻った。
この帰還は非常に楽になった道行を確認するものだった。
適当な日程で作ったはずなのに、ちゃんと日ごとに簡易宿泊所がある。
屋根の下で寝られるというだけで相当楽な旅だった。
そこで石材を満載し、また何日もかけて、来た道を戻ってきた。
もちろん、ためこんだはちみつを強奪してやった。
ミツバチさんが威嚇飛行をしたのは言うまでもない。
たまにしか帰らない宿六亭主のようだ。
おっさんには、この連日の肉体労働が非常につらい。




