異世界転移の錬金生活121 ミツバチ登場
前回はいろいろ自重できてなくてゴメン。
特に、家出少女に話しかけるキモイおっさん臭がやばい。
どこにいたんだ、今まで。
探したんだぞ、おじさんは。
これはやばいなあ。
ミツバチの巣をゲットしてテンションがおかしいのだ。
そもそもミツバチさんはまだ自分を許していない。
周りを飛んで自分を威嚇してくる。
これは早急に新しいお家を用意して差し上げなければ。
ということで、巣箱の作成に嬉々として取り掛かった。
スライド構造を盛り込んで、はちみつと彼らの居住区を微妙に分ける。
非常に心苦しいけど、はちみつはもらう。
許さない、とか言ってくる、怒った家出少女をなだめている感じである。
でも、しょうがない。
甘味をいただく非常に良い人類の知恵なのだ。
ミツバチさんも命までは取られない。
この辺で一つご勘弁願いたいものである。
こういう攻防を繰り広げたが、結局女王の鷹揚な対応により許された。
まあ、新しい巣箱に強引に女王をお連れしただけだが。
そのうちに、威嚇飛行を繰り返していたミツバチさんも鷹揚な態度になった。
どうも、巣箱として合格点をいただいたようである。
あとは、旧ミツバチの巣の中にある所謂ハチノコの扱いである。
ここのあたりは、奪われた時点でどうも潔い感じである。
また産めばいい、とでも思っているのかもしれない。
こまめに旧ミツバチの巣の中を精査しハチノコを取り出した。
はっきり言うが、この素材になじみはない。
実は、これをそのまま生で食べる地域もあると思う。
が、これを湯がいてはちみつ漬けにすれば、さすがに、いろんな意味で相性抜群だとはわかる。
作ってみておいしくいただいた。
非常に悪いことをしている気分にはなった。
こんなわけで、ミツバチさんとは初めての異世界異種族交流を果たした。
レアキャラだけに、今回のみのワンチャンスだっただろう。
よく考えてみると、アイツといいミツバチさんといい、意外と懐こい奴らである。
ティマーの気持ちがわかったかもな。
いかんなあ、どうもいけない。
なんだかミツバチさんがらみは、気持ち悪いテンションになる。
順調な報告をしているだけのつもりなのに。
ウチを世話する代わりに甘いモノをいただく、この関係性がいかんのだ。
正直、これって男女の関係性そのものだからな。
そのうえ、ミツバチの大半は女なのである。
きっと人間だったらまめに働く正義感の強いいい女だろうと思う。
気を取り直して、前回の続きである。
例の捕まえた虫の検分作業である。
この辺は全く色気なしである。
いや、色味は強いよ、間違いなく前世より。
もしくは未開の熱帯雨林ジャングルの動植物とかね。
極彩色という感じではないものの、それに近い。
その辺で警戒色とでもいうべき風情を感じる。
食われたくない、毒あるぞ、という気持ちの表れである。
そういうわけで検分作業は難航した。
毒ありを常識で見切って、それ以外は湯がいてみるか。
湯がいた中で、どれを最初に試す。
結局、全試しと何が違うんだ。
虫に知識なしで挑むのは、無謀なのか。
はっきり言おう。
おっさんは慎重なのだ。
というより、おっさんはビビりなのだ。
長く生きてくると、こわいものが増えるのだ。
不惑とかいうのは、ウソだ。
落ち着いた枯れたオトナを演出しているのも、ある種の恐怖感があるせいだ。
もっというと、オトナなどという生き物は存在しない。
ガキが年を経ると勝手にオトナとかいう生き物になる。
こんなこと、よく考えてみればウソだと分かるだろ。
ガキは、年齢を重ねてビビりになったガキになるのだ。
今のガキにおっさんが言えること。
ガキはそのまま残り、いなくなったりしない。
バカなことをやる自分は、相変わらずそこにいる。
成長なんかまったくしやしないのである。
つまり、若いころバカなことをしている奴は、大人になってもバカのままである。
痛い目にあってビビりになったバカがいるだけだ。
勘違いしないでほしい。
反省してほしくて言っているわけじゃない。
お前の親を見ろ、という話をしているだけだ。
お前の親は立派なオトナに見えるのか。
見えないとしたら、どういう理屈か考えたらわかる。
ああ、熱くなってしまった。
おっさんは立派なオトナじゃないので、こういうことに熱くなってしまうのだ。
実に情けない話である。
結局、おっさんは虫がこわいという事実だけが残る。
というより、虫を口に入れるのがこわい。
現地の人がなまじいて、そこで虫を食っていたとしても。
おっさんは結局、虫を口にできない。
栄養にならないからではない。
単純にこわいからだ。
常識とやらが邪魔するからだ。
考えてみれば、前世の常識なので、今世は関係ない。
しかし、そういうことではない。
一度そういう恐怖感を持ってしまうと、トラウマのようにその人を縛る。
この縛りは本来その人を守るものだ。




