異世界転移の錬金生活119 輸送手段
泥川の上流への旅を今度やろうとしている。
川幅が踏み越えられるほど狭い、水深もたいしたことはない。
逆に言うと、そのあたりが自由になるかもしれない。
そのかわり、より過酷な土地へ案内もなく、行ってしまう恐れもあるが。
まあ、そのあたりのリスクは、おいおい悩もう。
出くわしてもいないリスクについて、考えるのはもうやめた。
まあ、しばらくは元の道をひたすら戻るだけだろう。
物質的には、行きとはえらい違いが出ている。
まとまった数の石材をなんとか持っていけないか。
今、特に工夫中である。
かまどや屋根材としては、石材は優秀なのだ。
トイをつければ容易に真水も作れる。
正直、新拠点ヨシオは物資が余りがちである。
定員一〇〇名ぐらいの村に、自分ひとりなのだから当然だ。
使っていない石材は周囲に腐るほどある。
これで、荷車や台車の類が欲しい。
もしくは、今すぐ自分が作り始めるべきだ。
ただ、この丸い部材を用意するのは結構骨だ。
しかも、この場合は相当しっかりしたものがいる。
そのうえ中央を穴あけして棒材を通したい。
無理だ、そんな器用なことができるか。
まあ、壺のふたぐらいは、石器でなんとか削って作った。
このレベルの工作は、もはや得意といっていい。
ああ、大工さん、木工職人さん、助けてくれ。
金属の道具でガガっとやれば、なんとかならないかな。
旋盤とか、なんかいろいろあるよね、その手の工具が。
考えてみれば、自分にはノミすらない。
石オノや鉄インゴットで代用しているけどね。
あとは、板材を緩やかに曲げて、オケやタルのような手法で車輪を作るか。
これなら、中央に棒材を差し込んだ状態で成形もできそう。
ああ、いいんだ、わかってる。
板材を曲げた後固定するタガが当然難しい。
こういう場合は鉄材で補強もするが、当然無理だ。
曲げると簡単にいうが、やってみて思った。
曲がらない。
炙って曲げる的なこともやってみたけど曲がらない。
竹材のようなものを見つけるのが先かもしれない。
本当オケとかタルとか、どうやって作っているんだ。
何でもないようにやっているが、すごい技術である。
こうして車輪的なものは難しいと分かった。
後の選択肢は、袋状網状の物を作って、それで石材を少しづつ運ぶ。
原始的に手で一つずつ運ぶ。である。
ただ、機動労働力がおっさん一人である、という前提が重い。
正直、よっぽど上手にいっても二つ背負うぐらいが限界だ。
そしてその間、自分はヤリやオノ、わなを装備できない。
今の現状でそれは、軽く自殺行為であると思う。
森の中という前提がなければ、板材を準備してそれを引きずるやり方がある。
沼地だけを越えていくなら、これもありだと思う。
沼地はしかし沈み込むため、それを考慮しないといけない。
おっさん一人でそういうしんどいことを、どれぐらい継続できるか。
この難しさがまた立ちはだかる。
まあ、うじうじ悩んでいても解決はしない。
行けるところまでは板材輸送で行き、その先は、袋状網状の物で個別輸送。
板材輸送した場所で、再拠点化。
こんなところで、妥協するしかない。
何人か使えるなら、こんなことは、役割分担すれば簡単に行けそうなんだが。
ああ、石材が重いのだ。軽く運ぶノウハウもないし。
丸太をずらりと並べて原始時代のように引っ張るか。
沼地だと、丸太が即どろどろになるけど。
摩擦が減って、力の入れ加減はいい気がする。
さて、こんな調子で着々と準備中である。
まあ、まだ、出発はしないけどね。
当然袋状網状の物を開発しないといけないからだ。
網に関しては、なんとか袋状に編み込めると思う。
正直、他のことよりはこのあたりのほうが、得意である。
それと大事な課題が残っている。
周囲の石材の切り出しである。
持ち運べるサイズに切り出す必要がある。
なんとなくの境目はあるので、そこにクサビでも打てれば。
クサビがあれば。
クサビは石で作ろうかと思ったけど、まあ無理だ。
打ち込んだら、クサビも一緒に壊れてしまう。
鉄のインゴットをクサビ代わりにするしかない。
鉄のインゴットを過熱してちょっと変形してとがらせる。
鉄の加工はこの程度しか無理だ。
しかし、これで、石材が切り出せるようになった。
やはり金属は使いどころが多い。
まあ、鉄のクサビ・大とでも名付けた。
その三日後に例の袋状網状の物が一応の完成を見た。
結局、根性がない自分には一つ背負う袋ものが限界だった。
見た目的には、自転車とかによくつけるカゴ状のアレである。
あと、網を作っていた時も思ったが意外と丈夫である。
うまく石を二つ持つといったな、あれはウソだ。
石を二つ持つ場合、それ以外物が一切持てないからだ。
身を守れないのは、やっぱり怖い。
野生生物や魔物は全く姿を現さないが、それは見逃しているだけ。
この可能性を考えてみたのだ。
重いものを輸送して警戒感が薄れている相手。
武器も所持していない。
この場合、人間を恐れていても襲ってくるよね。
襲いかかってみたら弱いとばれるよね。死ぬよね、簡単に。