あくまでアクマは良魔にこだわる102 気の強い女
自分はどうも気の強い女が好きだ。
三歳年上の乙女姉さんが自分を育ててくれたため、そうなった気がする。
物心ついたころには、キツめの女が周囲にいた。
考えてみれば、うちの家中の女もみんな気が強い。
おかげで家中はかしましい状態である。
自然自分は無口になった。
寝小便が結構いい歳になるまで治らなかったため余計そうなった。
ボーとしているといわれ、薄ノロ扱いされることが多い。
考えていないわけじゃない。
むしろ考えなきゃならんことがヒトより多いと思う。
まず、妙な夢をよく見る。
夢といっても寝ているときだけではない。
唐突に脳裏に映像が浮かび音声付きで放映される。
太陽神バッバ会長が、延々と演説している。
自衛洋神ヤマシ会長が、それをまた延々と拝聴している。
五輪とは何のことだ。五輪書か。
ちなみにちょっと前の時代に五輪書を書いたミヤ元武蔵という人物がいる。
これは、ヤマシ会長であるスサノヲの世をしのぶ仮の姿らしい。
このスサノヲというのは、自分の先祖であるホノヒというドラゴンらしい。
更にいうならバッバ会長というのは、我が国の女神アマテラスだそうだ。
アマテラスというのはホノオというドラゴンらしく、ヤツの姉だそうだ。
どうもこの二匹のドラゴンは今も実在しており、我が一族を見守っているそうだ。
こんな重大なことを周囲の者は誰も知らない。
前回のは脱藩の経緯だったが、今回ちょっと時系列をさかのぼる。
そうそう、名乗るのを忘れていた。
自分はサタ元良魔。
将来海賊王になる男だ。
ワン〇ースとはなんだ、うっ、頭が痛い。
どうも自分は第三の目が開いて時々前世の記憶が見られる。
そこでは非常にいいにくいが、ヨシオというしょぼいおっさんとして生きている。
苦労の絶えないとても厳しい人生だとしかいいようがない。
我が家は、トサ藩の郷士と呼ばれる下級武士。
豪商サイ谷屋が身分を金で買った。
古くはアケ智家の血筋であるらしい。
父は八平、母は幸さん。
母を早くに亡くし旦那を亡くした伊与さんが継母としてカワ島家から嫁いできた。
カワ島家は、猪三郎が当主で廻船業の商人だ。
乙女姉さんとともに、よく遊びにいった。
海や船は楽しい。
実に自由だ、しがらみがないのが実にいい。
船の商売を運送業というらしい。
年の離れた兄がいる。
権平という口うるさいヤツだ。
千鶴さんは長姉で、とっくに嫁いでいる。
春猪さんや直の母だ。
栄さんは次姉で、病弱のため早くに亡くなった。
春猪さんは八歳年下で妹的存在だ。
乙女さんは三姉で、豪傑無双、トランスジェンダー気味だ。
母的存在でなんだか身に覚えがある状況で、頭が全く上がらない。
スパルタ気味の教育方針に耐え続けることができたのは、前世の経験ゆえである。
直は千鶴さんの嫁いだ高マツ家の跡取りで、太郎と名乗っている。
結構若いのにしっかりしたヤツである。
比較されて、それにつけてもお前は、といわれる。
大きなお世話である。
ヒラ井加尾さんは、収二郎の妹だ。
四歳年下の幼なじみで、今思えば初恋だった。
この子も結構キツいし、気が強い。
それでいてやたらと後をついてくる、よくわからんヤツだ。
なんでこんな身上書のようなものを書いてるかって。
これから自分はエドへ旅に出るんだよ。
剣術修行というヤツさ。
気性はともかく、体格には恵まれたといえるだろう。
一応、地元じゃ免状も取った。
ああ、頭は良くない。
どうも勉学は苦手で、いつも泣いて帰っていた。
結局読み書きは乙女姉さんに習った。
スゴイだろう、乙女姉さんは。
自分は、何とか剣術ぐらいは姉さんに勝ちたい。
そう思ってがんばってきたんだよ。
ちなみに、姉さんはもう嫁ぎ先が決まっている。
オカ上樹庵という人だ。
トサ藩の御用格医師というから、自分の苦手なかしこい人だろう。
カワ田篤太郎とかいう偉い先生ともじっこんらしい。
まあ、小龍といった方が通りがいいか。
寂しい気持ちになってしまった。
泣き虫だと、またからかわれてしまう。
どうも自分はいろいろゆるい性分でいけない。
上も下も蛇口が壊れているのかもしれない。
こうなんだかだらだらと書いてきたが、何のためだっけ。
ああ、そうそう。
エドはどんなところだろうな。
楽しみでならない。
キツくない、いい女はいないだろうか。
まあ、自分は好きにはならないんだろうけどな。
自分は背中にたてがみのような毛が生えている。
例の夢によれば、どうも自分は堕天使のようだ。
しかし、あくまでアクマのような自分は、良魔にこだわるのだ。
人様のお役に立つような生きざまがしたいのだ。




