異世界転移の錬金生活520 縄文村のこと
おっさんは今、どうしてよいかわからない。
スクは実にオドオドしているヤツである。背も小さい。
もの〇け姫のような展開なのに、アシ〇カのような猛者は出てこない。
まあ、現実はそんなもんだよな。
この辺の地勢をアシハラというらしい。
ちなみにヤツの住む村は、タケシ村というらしい。
タケシウチノスクネ、こういうことかよ。
アシハラノシコオ、こういうことかよ。
古代にいた人の名前の秘密に気づいたが、多分一番つまらん秘密だな。
ヤツはスクナヒコナともいっていたので、この辺もな。
宇宙人のカグヤさんのインパクトには全く勝てない。
そもそも時代が違う気もするが、この辺も含め今となってはどうでもよい。
前世と今世が同じ歴史である必要もない。
つまりおっさんがそのままオオナムチ認定を受けるかわからない。
ただのキモチワルイシコオで終わる可能性が高い。
国土創成とかいう大それたことが出来そうかといわれると、心もとない。
宇宙空間と同じぐらい心もとない。
あの後もちろん、スクのタケシ村に行ったよ。
オババにめちゃ怒られていたぞ、かわいそうに。
おっさんはシコオ呼ばわりをされ、なにしに来たかしつこく聞かれた。
完全に不審人物に向ける目をしていた。
田舎の村だから、よそ者はすぐわかるし悪さしかしないのだろう。
ホノカちゃんはやっぱり娘とは思ってもらえない。
それどころか、オババは魔物だとすぐに見て取った。
こういう意味では、この人は大したシャーマンなのだろう。
すぐにお祓いのごときことをホノカちゃんにやっていた。
もちろん、ホノカちゃんには効いていない。
しかし総合的に見て、敵対的接触となってしまった。
折角の縄文村で言葉も通じるのに、肝心の言葉は通じない。
敵ではないと訴えるおっさんに、オババは一言こちらが決めるといった。
あんなに拒否り気味だった宇宙へ行ってこんな展開に巻き込まれる。
バカだなと冷静になった今思う。
おっさんとホノカちゃんはそのまま村から追い出された。
スクはペコペコして謝っていた。
ヤツの立場が悪くなった可能性がある。
これ見よがしに、オババは自分の村に結界を張っているような仕草をした。
結果を見れば、敵対的接触にはなったが身体を拘束されなかっただけマシだ。
そのようなことになれば、ホノカちゃんが何をしたかわからない。
オババの攻撃能力はわからないが、おそらく大したことはないだろう。
こういうことが、ヤマタノオロチに襲われた悲劇の村みたいな伝承になるのでは。
ちなみに、あわれなスクはその後村を追い出されてしまった。
仕方がないので、天浮舟で助けたグレゴリーズが温泉宿泊施設に管理人として雇ったそうだ。
今はスクナヒコナとして愛されているようだ。
まあヤツは見ず知らずの他人の背中をさするようないいヤツだからな。
こういうのも、スクナヒコナは常世に帰っていったとかいう伝承の元ではないか。
ちなみに、天浮舟内でヤツはなんかの改造手術を受けたようだ。
発信器をつけられ、寿命も人類としては破格の長さになってしまったようだ。
宇宙人は温泉宿泊施設の管理人として必要な措置を取っただけだと思っている。
タケシウチノスクネは、こうして長い寿命を手に入れたようだ。
本人にはもちろん知らされていない。
なるほど神話というのはこうやって作られていくわけだな。
裏側は大変味気ない、必要に迫られた措置でしかない。
今後のスクの活躍に期待、というわけである。
相方としてオオナムチ候補として、おっさんはヤツを応援している。
いくつかポーション類を渡してやった。
ただ、おっさんはあまりフラフラするな、とグレゴリーズにいわれてしまった。
周辺地勢調査はおっさんに任されたのではないのか。
まあ、これ以上縄文村ともめて、ややこしい事態となるのを避けたいのだろう。
おっさんも避けたい。
そもそも宇宙に飛んで温泉にしけ込むのだって、本当は避けたい。
しかし、おっさんはやっぱり違和感と心もとなさに、今でも苦しんでいる。
だから時々はホノカちゃんと二人で、温泉宿泊施設を利用している。
スクは、いつでもオドオドしている。
縄文村は母系社会で、オトナの権限が相当高いのだそうだ。
おっさんたちにも、そういう意味で適応しやすいようだ。
グレゴリーズやホノカちゃんに、おっさんは従う格好だもんな。
頭が上がらないのは、スクにもすぐわかったようだ。
ほっとけといいたい。
まあ救いは、スクが比較的嬉しそうに働いていることである。
周辺の野山で獲ってきた山菜や自分たちが持ち込む謎の獣肉で料理をしてくれる。
ジビエ料理専門の温泉旅館という風情で、グレゴリーズも喜んでいる。
どうも普段は我々の残した獣肉や山菜をうまくやりくりして生活しているようだ。
そんな食生活だから痩せて小さいのではないか。
そうそう、スクがホノカちゃんを娘と見なかった理由である。
簡単だ。
どうも縄文村の人たちは霊感的なものが現代人より強い。
オババだけでなく、スクもすぐにホノカちゃんは魔物だとわかってしまった。
それもあって、おっさんの背中を必死でさすってくれたようだ。
危ない気づいて、といいたかったが、魔物が怖くていえなかった、といっていた。
味方にしている豪儀な人だとは思わなかった、と尊敬のまなざしでいった。
どうも勘違いされている気がするが、こういう勘違いは歓迎である。
まあ魔物が普通にいる異世界では、当然の感覚なのかもしれない。
現代人ですり切れた感性しかもたないおっさんの方が、異常なのかもしれない。
ホノカちゃんやミユキさんにしろ魔物に性欲を感じるのは異常なのかもしれない。
おっぱいが大きいとか乳首がヤラしいとかいってる場合ではないのかもしれない。
イヤ、ロートル町では魔物のホノカちゃんは子供に人気だ。
やっぱりこれは縄文村の土地柄だろうと思う。




