異世界転移の錬金生活519 スク登場
おっさんは今、どうしてよいかわからない。
正直いって前回の件は、心に堪えている。
これで、今まで通りの現地地勢調査回なぞ続けてられない。
調べてきたところで、おっさんの知らんとこで楽しまれてしまうだけだ。
イヤ、おっさんは混浴じゃなきゃイヤとか、みんなで雑魚寝じゃないとイヤとか、そういうわがままをいいたいわけじゃない。
そりゃもちろん、混浴、雑魚寝のほうがいいに決まっているよ。
でも、そこはいいのだ。
こだわらないのだ。
連れていくことすら拒否して、おもしろいとこを一切体験させてももらえない。
天浮舟は大容量なのは知っているので、あとおっさん一人載らないはずはない。
選択的におっさんは拒否されたのは間違いない。
オンナ同士で楽しんできて、おっさんは寂しい思いをした。
そうさ、濡れ落ち葉的な思考だよ。
ネガティブで手放したほうがよい思考だよ。
そういわれたからって、手放せないよねこういうの。
ウジウジするより、身体でも動かして運動でもしろってか。
それって気を反らして忘れているだけじゃないの。
ブツブツいうおっさんは客観的に見て相当ウザイ。
今まで人望があったとしても即マイナスポイントが割り振られそうな感じがある。
しかし今までに人望的なものがあれば、そもそも連れて行ってもらえただろう。
自業自得であるとしかいいようがない。
おっさんはしばらくして気持ちを整理した。
普通に身体でも動かして運動して、気を反らして忘れた。
バカなガキ特有のお気楽手放し法である。
できるんだったら、最初からやっとけよ、というヤツである。
オトナはおそらく、こうはいかなくて苦しんでいるのだろうな。
何十年たっても、唐突に思い出して悲しんだり怒ったりしている。
ただ宇宙に出るのは、さすがにもうしばらくかかった。
ホノカちゃんは準備万端である。
さあ行くよ、とでもいいそうな、目力が相変わらずだ。
宇宙に対する恐怖感とかは全然なさそうだ。
温泉露天風呂は彼女の心に相当ササッタみたいである。
おっさんと全裸で遊べるのはいいことだと思ってそうだ。
意外とヤラしいな。
スリスリ、ナデナデするのが好きなだけはある。
でもそれに乗せられて、万難を排するおっさんが一番ヤラしい。
あんなに拒否り気味だった宇宙へ行く決心をとうとうしてしまう。
バカだなと冷静になった今思う。
ここからは順調に例のイベントをこなしていった。
頑張って温泉露天風呂宿泊用のバンガローに出た。
流石にオトナだ。
キレイに片づけられ、発つ鳥跡を濁さず、といった風情である。
バカなガキは、なぜかちょっと残念な気持ちになった。
布団や毛布も匂い一つしない。
お風呂グッズや露天風呂もすごくキレイに浄化されている。
全然おもしろくない。
髪の毛一本落ちていないため、浮気を疑われることすらない。
ワイシャツに口紅がついたりとか、とんでもない話である。
ホノカちゃんはすぐに外へ行った。
おっさんはまたしてももそもそ独りで弁当を食った。
この辺りでちょっと冷静になった気がする。
おっさんはこれから頑張って周辺地勢調査をするのか。
なんのために、誰が喜んでいるのか。
結局、その日は寝る前に温泉入ってそのままホノカちゃんと寝た。
翌日も、昼まで寝て疲れを取って、だらだら過ごした。
気力体力が回復するのに、結局ここまでかかる。
今回は、弁当を多めに持ってきたので大丈夫である。
周辺も前回あらかた調べ終わっているため、それより外を調べる予定だ。
つまり高速ホノカちゃん輸送で一気に飛ぶ。
簡易版拘束具も実は今回モ〇ルポッドに積まれている。
ほら、冷静になると後悔しそうな流れだろう。
ホノカちゃんはテンションが高いぞ。
さあ行くよ、とでもいいそうな、目力が相変わらずだ。
おっさんは本当にしぶしぶ簡易版拘束具を取り出した。
ホノカちゃんはおっさんにこれを装着した。
そのあとはよく覚えていない。
気づくと山を下りていて、おっさんは猛烈な気持ち悪さに苦しんだ。
しばらく戻していたと思う。
気がつくと、誰かが自分の背中をさすってくれていた。
ホノカちゃんだと思ったが、ホノカちゃんはそこにいた。
背中をさする何者かは、きっといい人だろうと思う。
おっさんは背中に、誰か知りませんがご迷惑をかけました、といった。
相手は、オイラはスクね、スクな、スクなヒコな、といった。
言語的には通じているが、正直通じない言葉を話すヤツだった。
スクというのは名前だろうとしかわからん。
とにかく語尾にネやナが多くて、聞き取りづらい。
おっさんは出会った当初のカグヤさんの自己紹介を思い出した。
スクは、おっさんのことをシコオといった。
どうもいい歳の独身でシコシコやってるヤツをそういうらしい。
実に失礼な話ではあるが、確かに今世のおっさんに嫁や妻的な存在はいない。
そばにいるホノカちゃんは、なぜか娘には見えないらしい。
あとオババをひどくおそれていた。
どうも村の長老的な婆さんらしい。
この婆さんはどうも占い的なことをやって、村の方針を決めているらしい。
おお、前世の日本の縄文村っぽい感じだぞ。
村では一番偉い人だとのことなので、挨拶したいとおっさんはいった。
むしろ今まで何をしていたのか叱られるので、言い訳をしろ、といわれた。




