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異世界転移の錬金生活518 温泉始まらない

 おっさんは置いていかれた。

例の温泉露天風呂のことである。

報告をした数日後に、前触れもなく天浮舟が来た。

あっという間に、グレゴリーズが乗り込んで大空へ消えた。

気がつくとホノカちゃんもいない。


 え、なに何なの。

天浮舟はいつもいつもおっさんに恨みでもあんの。

ああ、そうか。

天から見ればグレゴリーズを不当に拘束している悪魔のようなオトコか。

何でもするから月にカグヤさんを返して、とか思われているんだろうか。

月面都市フォン・ブ〇ウン市は大丈夫なんだろうな。


 よくよく考えると、選択肢はコレしかないことに気づく。

グレゴリーズを宇宙経由でまとめて運ぶ必要がある。

周辺地勢調査は済み、危険な状況はない。

温泉露天風呂には男女の区別はなく混浴である。

バンガロー風の温泉宿泊施設は完成している。

現地の案内等は、地点登録済みのホノカナビが優秀である。

おっさんはエッチなオトコである。


 完璧だ、コレしかない。

温泉宿泊施設の休憩室で寝ていて、何かの間違いが起こればいいと思うおっさん。

混浴である温泉露天風呂で、何かの間違いが起こればいいと思うおっさん。

現地の案内等で、何かの間違いが起こればいいと思うおっさん。

当たり前のように、不純なおっさんは置いていかれた。


 久しぶりにガランとした新拠点ヨシオで、孤独感に耐えつつせいぜいヤセ我慢をするしかない。

もともと独りだったんだ。

いいさ、久しぶりに自慰三昧の日々を過ごしてやるぜ。

すきま風が冷たいぜ。

心まで冷え切ってしまいそうだ。


 おっさんは重大な事実に気づいてしまった。

所謂ズリネタというのか色っぽい感じというかオンナの匂い的なものが何もない。

今まで当たり前に存在していた、ソレが何もない。

当たり前に存在していたため、こういう際の備えも何もない。

自慰が意外とハードルが高い苦行と化してしまった。

妄想といってもいい歳をしたバカなガキには限界がある。


 その手の動画や画像を見放題な前世が実に懐かしい。

ウェブ上にいくらでも転がっていたよな。

ビジュアル的な補助がないと、意外とバカなガキの自慰はうまくいかない。

なんだか空しくなったのと、孤独感が胸に迫ってやめた。

そもそも独りだったおっさんも弱くなったものである。


 気分転換がしたくなって外に出た。

ホノカちゃんがいないため、移動も相当おっくうである。

足腰が弱っていることにいよいよ気づかされて憂鬱になった。

外は寒い。

すぐにおっさんは耐えきれずに戻った。


 あっ、ロートル町にもワカ町にも気軽には行けなくなった。

行動半径がいつにもまして狭い感じになってしまった。

当然、両娼館にも行けるはずがない。

あれ、暇つぶしがなんもできないぞ。


 その後おっさんは、所謂濡れ落ち葉というのはどういう状態かを体感した。

相当な濡れっぷりだった。

色っぽい意味じゃなく。

そう、まったくもって色っぽい状況になんかならなかった。

ひたすら落ち着きなくウロウロしていただけだった。

最後は性欲や食欲もなくなった。


 ああ、オレさまかわいそう。

いらん子なオレさま、超かわいそう。

べっとりウエットな感じの思考が、頭にこびりついて離れない。

濡れ落ち葉というのは、こういうことをいうのだろう。


 だから、ほくほくした感じのみなさんがお帰りになったときは、抱き着きたくなるレベルの嬉しさがあった。

え、キモーい。

捨て犬みたいなキモイ目つきで迫ってこないで。

どうせまた、部屋が臭くなってるんだろう。

さっさと掃除をしなさいよ、汚らしい。


 ひどいことをいわれているのに、なんだかうれしい。

今なら目の前で自慰行為ができそうである。

なんで自慰なのかとか、聞いてはいけない。

あんなに性欲や食欲が減退したのに、今はちゃんとたまっている。

おっさんの身体は、本当に始末が悪い。


 みなさんから、いつにもましていい匂いがするのだ。

渇望していたいい匂いが。

おっさんからは、いつにもましてカレー臭がするのだ。

いつも以上に部屋が臭くなっていじめられるのだ。

いじめられても、いい匂いなら許す、許すぞ自分は。


 いい匂いのするホノカちゃんから頭をナデナデされた。

おっさんはちょっと泣いてしまった。

イヤ号泣した。

また皆さんから汚らしいとのお言葉をいただいた。

しかし反発する気すら起こらなかった。


 ちなみにおっさんの部屋は、数日間封鎖された。

バイオハザードが発生していたようである。

Tウ〇ルスが蔓延して、前世のような状況になると困る。

みんなには負担をかけるが、やむを得ない。

数日間でおっさんの部屋も、みんなみたいにいい匂いになった。


 問題はこの文章である。

さんざん温泉回だ水着回だと煽っているのに。

おっさん目線では、このような仕儀と相なった。

許されよ、やむを得まいて。

エロ展開を想像してアツくなっていた諸氏には誠申し訳なく。

血の涙でも流して、悔しがるとよいぞ。

苦しゅうない、苦しゅうないぞ。

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